【2.3】「特別な状態を有する患者に対するモルヒネ投与の注意」
  【2.3.1】「腎障害患者に対するモルヒネ投与の注意」
   

#1
【2.3.1】:1
 モルヒネは痛みの程度により投与量を設定する薬物であり、高齢者や腎機能あるいは肝機能障害のある患者においても初回投与量は同様である。重要なポイントは反復投与後、蓄積による副作用発現を見逃さないことである。
 腎機能あるいは肝機能の程度と痛みの程度から初回に5mg程度を投与する。ただし、高齢者や腎・肝機能障害の患者における投与初期には速効性製剤を利用するのが望ましいと考えている。これを定時投与する場合、その後の除痛効果と副作用発現から、モルヒネが蓄積傾向にあるか否かを判断しなければならない。蓄積傾向にあれば副作用として傾眠傾向が出現する。ゆすっても覚醒せず、つねるなどの刺激が必要な場合には半昏睡の状態であり減量しなければならない。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,223

#1
【2.3.1】:2
 慢性腎不全の患者では、モルヒネ代謝物が蓄積し、意識障害などの副作用が出現しやすく、鎮痛補助薬も通常通りには使用できない。このため、癌性疼痛によって透析治療が円滑に行えなくなった場合は、神経ブロック療法の適応となる。特に、早急に疼痛管理が必要となった時は、硬膜外およびくも膜下鎮痛法が、第一選択となる。
,オピオイド治療(2000),,,56

#1
【2.3.1】:3
 腎機能低下が原因で生物学的生理活性をもつモルヒネ代謝産物(M-6-G)が蓄積し、急激な意識低下などの副作用が出現することがあるため、腎機能はできれば開始前から評価を行う必要がある。また、継続して腎機能低下がないかを確認していくことも大切である。明らかな機能低下が認められる場合にはフェンタニール(デュロテップ)、ブプレノルフィンなど腎機能に影響されない薬剤の使用を検討する。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,50

      参照−【5.3】「デュロテップパッチ」

#1
【2.3.1】:4
 透析患者にもモルヒネは使用できる薬剤である。しかし、透析患者では、腎機能が低下しているため、血清モルヒネ濃度が高値でなくとも、肝での代謝産物の一つで麻酔作用のあるモルヒネ−6-グルクロナイド(M6G)が蓄積することで、20mg/日のMSコンチンでも昏睡例が少数であるが報告されている。代謝産物であるM6GとM3Gは、モルヒネに比べ、透析により除去されにくいとされている。したがって、微調節が可能なモルヒネ末の使用も考慮すべきである。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,36

     
  【2.3.2】「肝機能障害患者に対するモルヒネ投与の注意」
    #1
【2.3.2】:1
 肝障害患者ヘモルヒネを投与する場合には、消失半減期が延長するため、患者の状態に注意して投与するよう指示されているが、投与法に関する具体的な指標は記載されていない。肝機能が低下している場合、血漿中からのモルヒネ消失率が低下し、経口投与では生物学的利用能が上昇する。すなわち、血漿中モルヒネ濃度が保たれるため、少量で強い効果が現れることになる。また、モルヒネの代謝が低下し、半減期が延長するため、効果持続時間が延長するとともに、反復投与により蓄積し、副作用が出現しやすくなる可能性がある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,138

 
【2.3.2】:2
 重症の肝不全ではモルヒネの代謝の影響があるが中等度の肝不全では影響がみられない。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,197

 
【2.3.2】:3
 肝機能障害によってモルヒネの副作用が助長される可能性がある。症状は、嘔気、眠気、混乱、かゆみがある。また、高アンモニア血症の状態で肝性昏睡に移行しつつあるときは、高率に混乱が出現する。痛みを感じていなければモルヒネを減量するが、痛みがある場合はセレネースの併用や時にはドルミカムによる鎮静も必要になる。
,ターミナルケア(1995),7,1,6
     
  【2.3.3】「甲状腺機能障害患者に対するモルヒネ投与の注意」
   
 
 モルヒネは甲状腺機能低下状態では代謝が低下して中毒を生じやすい。
,臨床と薬物治療(1994),13,7,13
 
     
  【2.3.4】「妊婦に対するモルヒネ投与の注意」
    #1
 薬物の催奇形性に関しては、各薬剤の危険度とともに服用時期を考慮することが最も重要である。服用時期については、形態的異常の発現率の高い絶対過敏期と胎児毒性が問題となる絶対過敏期以降の2つの時期に分けて検討する必要がある。疼痛目的で絶対過敏期にモルヒネを使用した症例は検索できなかったが、麻薬中毒患者の場合は先天的奇形による死亡、鼠径ヘルニア、1年間にもわたる両眼の水平眼振などの報告がなされている。
 一方、形態的異常の発現率が低いとされる絶対過敏期以降の妊婦に対して疼痛目的で使用する場合は、モルヒネを躊躇することなく使用することで疼痛コントロールを行い、分娩時期をできるだけ正常な時期にまで延長させることが1つの方法であると思われる。ただし、高用量のモルヒネが必要である場合は、胎児毒性を増大させる危険性があるため、最小用量で期待する鎮痛効果が得られる硬膜外投与やくも膜下投与に投与方法を変更することが望ましいと考えられる。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,287
     
  【2.3.5】「高齢者に対するモルヒネ投与の注意」
    #1
 高齢患者の安全なモルヒネ初回投与量は、通常成人投与量の50%ぐらいから始める。高齢者の薬剤に対する反応をオピオイド系鎮痛薬でみていくが、初回はかなり低投与量から始めることが多い。それから増量する場合も、ふつう成人よりはゆっくり増やすようにする。とくに高齢患者は薬剤の作用時間が長くなるため、投与間隔を普通よりも長くしてもよい場合が高齢患者には多い。このことに関する研究がいろいろ行われているが、高齢者は代謝速度がゆっくりしているため投与回数の方が、1回の投与量よりも大きな影響を与えるということが分かる。すなわちあまり頻繁に投与しすぎないように注意をすることの方が、1回の投与量が多すぎるということより大切だと思われる。モルヒネ水薬の場合、効果持続時間が、ふつうは4時間と言われているが、75歳では6時間に延びる。
,ホスピスケアのデザインPART2 疼痛と告知(1993),,,98
     
  【2.3.6】「小児患者における鎮痛薬物療法」
     小児においては、疼痛原因以外に代謝の面からも、鎮痛薬の必要量の個人差が大きい。1歳以下の乳幼児では血液脳関門が未発達であることから、鎮痛薬、特にモルヒネの呼吸抑制のような副作用が多く発現するとされているが、それ以上の年齢では体重あたりの必要投与量がむしろ成人より多いこともある。
,今月の治療(1996),4,4,28
   
 

 

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