| 【2.4】「モルヒネに関する疑問」 | ||
| 【2.4.1】「モルヒネを早期に使うと、後で選択薬に困るか」 | ||
この懸念は不要である。多くの癌患者が長期にわたり増量無しにモルヒネの経口投与を受け続けている。もし効果が減じたら、少量の増量で対応できる。モルヒネには有効限界がないので、増量すれば再び同じ効果が得られる。したがって耐性の発生は、臨床的な問題にならなくてすむ。 |
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| 【2.4.2】「モルヒネを使用していると、その鎮痛効果は落ちるか」 | ||
| 非ステロイド系鎮痛薬は癌の場合、進行するに従って効果は落ちる。ソセゴン等も末期になると効果が落ちるが、モルヒネはどの病期でも一定の鎮痛効果をもたらす。 ,臨床と薬物治療(1990),,58,20 癌性疼痛の場合、非ステロイド鎮痛薬では常用量の2〜3倍の増量が限度であり、それ以上増量しても効果はない。しかし、モルヒネの量をひかえたい場合の併用には効果がある。 ,臨床と薬物治療(1990),,58,76 |
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| 【2.4.3】「モルヒネの投与期間が長くなると投与量も増加するか」 | ||
| モルヒネの投与期間と投与量との関係において一定の関係は見られない。つまり、モルヒネの投与期間が長くなるほど耐性が出来て投与量が増えるということはない。 ,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,71 |
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| 【2.4.4】「モルヒネにより薬物依存症になるのではないか」 | ||
| 【2.4.4】:1 基本原則を守った投与を行う限り、薬物依存症が発生することは皆無に等しい。身体的依存において、経口的長期反復投与が突然中止されたとき、退薬症状を呈することがありうるが、漸減しながら中止する方法を利用すれば退薬症状が現れることはない。精神的依存においては、癌患者の痛みに対する長期投与に対する発生はまれである。しかし、投与法に適切さを欠けば問題化する事は、心得ておかなければならない。 【2.4.4】:2 モルヒネを使用中の患者でも、モルヒネに対する誤解や偏見を最初から表現する人はいいが、なかには黙っている人もいる。納得してモルヒネを飲んでいると思っても、痛みが増強したときモルヒネの増量に抵抗して痛みを我慢している人もいる。モルヒネの増量を、病状の悪化と感じているわけである。このような偏見をなくすことも重要である。 ,医療麻薬の利用と管理’95(1995),,,16 #1 【2.4.4】:3 WHOによるaddictionの定義 ●精神的依存: 薬の特定の薬理作用を体験するために、薬を摂取することに強い欲求を持った状態、あるいは欲求のために薬を探し求め、入手しては使用し、効果を体験することを特徴とした状態である。この状態を起こす薬の特性を精神的依存性と呼ぶ。 ●身体的依存: 反復投与によって薬が長い間にわたり作用し続けることにより、生体が薬の存在に適応して身体機能を営むようになった結果、突然の投与中止や拮抗薬の投与などにより薬の効果が急に弱まったり消失したりすると、機能のバランスかくずれて退薬症候(禁断症状)が出現する状態である。この状態を起こす薬の特性を身体的依存性と呼ぶ。 ●耐性: 反復投与を続けるうちに薬の効果が弱まり、効果を維持するのに増量が必要となる現象である。また、このような現象を起こす薬の特性も耐性と呼ぶ。 精神的依存、身体的依存、耐性の3者は、それぞれ異なった状態であり、それぞれが独立して発生することも、合併して発生することもある。このように定義が変化していくなか、現在の定義が正しく記載されている出版物は少ない。依存性に対する正しい理解と、正確な用語の浸透が急務である。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,55 (注:精神的依存とは、薬物を使用したことによって快楽を得てしまい、その快楽を味わうために薬物を欲しがることです。これに対し身体的依存とは薬物を使っていることが体にとって自然な状態となり、薬物を急に中止すると体調を崩してしまうもので、例えるなら便秘薬を長期間服用している人が急に薬をやめたとき便通がなくなってしまうような状態を言います。 モルヒネの場合、快楽を得る精神的依存は医療用に使う限り、ほとんど報告がありません。しかし、身体的依存は、長期間モルヒネを使用している患者のほとんどで発生しますが、一般的に特に問題にはなりません。なぜなら癌疼痛にモルヒネを使う場合は、一定の血中濃度を常に維持する形で使われるため、薬が切れることによる体の変調は来さないからです。また、モルヒネが必要でなくなった場合、徐々に減らしていけば身体的依存は問題なく解消します。) |
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| 【2.4.5】「モルヒネにより気分高揚が起こり、患者がそれを楽しむようになるか」 | ||
| 【2.4.5】:1 痛みが長期に持続している患者は、しばしば鬱状態となっている。痛みが消失すると、患者の表情は明るくなり、日常生活が活発さを取り戻すことが多い。これは薬の直接作用による気分高揚ではなく、痛みが消失して精神状態がもとの状態に近づいたのである。痛みが再発すると、患者が薬を要求することがあるが、時刻を決めた規則正しい投与では薬を要求することはない。 ,臨床と薬物治療(1990),,58,38 【2.4.5】:2 モルヒネを鎮痛目的に使用している限りは依存症(注:この場合は精神的依存)にはならない。モルヒネの鎮痛以外の酩酊感、多幸感を求めたとき、それによる精神的依存が起こると考えられている。 ,医療麻薬の利用と管理’95(1995),,,12 |
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| 【2.4.6】「モルヒネの耐性はすべての作用にみられるか」 | ||
| モルヒネの耐性は鎮痛、鎮静、呼吸抑制などの抑制作用に対してはみられるが、縮瞳、便秘、痙攣などの興奮性の作用に対しては形成されない。一般に耐性は、投与量および投与回数が多く、投与期間が長いほど強度になるとされている。鎮痛作用に対する耐性は他の麻薬性鎮痛薬の効果との間に交差耐性が見られるほか、アルコールやバルビツレートとも一部交差する。 ,癌性疼痛のコントロール(1993),,,61 |
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| 【2.4.7】「モルヒネを使用すると患者の命が短くなるか」 | ||
| モルヒネを使用すると患者の命が短くなると考えている医療従事者がまだいる。しかし、モルヒネを原則に従って適切に使用する限り、決して命を縮めることはない。むしろ、痛みがコントロールされ、不眠や全身状態が改善され、延命効果すらあると思われる多くの症例を経験している。 ,がんの症状マネジメント(1997),,,41 |
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| 【2.4.8】「痛くなったら、そのつどモルヒネを処方するのか」 | ||
【2.4.8】:1 定期的なモルヒネの投与なしに、いわゆる「頓用」だけを処方する、「痛くなったら使う」式の治療は誤りである。また、痛みが十分軽減していないのに、いつまでも同じ量のまま「もう少し様子を見てから」という姿勢も誤りである。患者に我慢を強いることなく、出来るだけ速やかな鎮痛を追求すべきである。 ,緩和医療学(1997),,,49 【2.4.8】:2 「なるべくなら薬は飲みたくないので、痛みを我慢できないときだけにしたい」と考える患者も少なくない。また定時服用の意義に理解が得られず、ノンコンプライアンスの患者もいる。説明しても定時服用してもらえない場合にはMSコンチンではなく痛いときに服用できる速効性製剤に変更することも考慮する。薬を強要するのではなく、患者に薬を合わせる柔軟な対応も必要である。 ,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,37 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,36 |
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| 【2.4.9】「癌疼痛の患者にモルヒネを筋注で投与してよいか」 | ||
| #1 モルヒネの筋肉内投与は痛みを伴うこと、注射部位からのモルヒネの吸収が筋肉内の血流状態に左右されること、さらに最大効果発現までに30分以上を要することから、癌疼痛治療にモルヒネの筋注は適さない。 ,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,59 |
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【2.4.10】「モルヒネの2倍量投与は危険ではないか」 |
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| モルヒネにより疼痛がコントロールされている患者においてはモルヒネの2倍量投与は多くの患者にとって危険なことではない。 ,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,,208 |
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| 【2.4.11】「ブロンプトンカクテルを使用してよいか」 | ||
| ブロンプトンカクテル(モルヒネ+コカイン)はモルヒネ単独の水溶液に優る効果がないばかりか、増量時に不必要な成分も増量され眠気や他の副作用を増加させるので使用しない。 | ||
| 【2.4.12】「モルヒネ内服中の患者が手術を受ける時、どうすればよいか」 | ||
| モルヒネ内服中の患者が手術を受けるときは、内服量の1/3の量のモルヒネを点滴で投与すると、退薬症状は出現しないし、麻酔の覚醒も遅延しない。 ,緩和医療学(1997),,,64 |
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| 【2.4.13】「モルヒネを投与すると呼吸抑制がおこる?」 | ||
| *5 痛みはオピオイドに拮抗するように作用する。つまり、モルヒネの鎮静作用や呼吸抑制を弱める。痛みの強さに対するモルヒネの投与量が適切であれば、呼吸抑制はほとんど問題とならない。すなわち、痛みがコントロールされていない時は、安心してモルヒネの投与を増量できる。 ,ターミナル・ケアの症状緩和マニュアル(1998),,,37 |
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