| 【4.10】「モルヒネの副作用としての掻痒感」 | |
| *5 【4.10】:1 掻痒症はオピオイド非経口投与の一般的な副作用であり、経口投与ではまれである。くも膜下や硬膜外オピオイドを受けた患者の大多数や、静脈内、筋肉内オピオイドにより治療された患者ではしばしば認められる。掻痒症には耐性が生じるため、通常、オピオイド療法期間中に軽減する。通常は顔面に限局するが、ときに会陰部や全身に広がる場合もある。 ,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,372 #1 【4.10】:2 鎮痛量のモルヒネを静脈内注射すると、皮膚血管を拡張し、顔や首、胸上部の皮膚に紅潮を生じ、ときに痒みを伴う。また、モルヒネの注射部位には、蕁麻疹が生じる。モルヒネは、ヒトの皮膚のマスト細胞に作用すると脱顆粒を惹起しヒスタミンを遊離する。このヒスタミンがモルヒネによるこれらの反応にかかわると考えられている。これらの反応は、オピオイド受容体を介さず、オピオイド拮抗薬で抑制されない。一方、除痛の目的でモルヒネを硬膜外、あるいは脊髄くも膜下腔内投与した際の主な副作用として痒みがある。この反応は、モルヒネがオビオイド受容体を介して神経に作用した結果であると考えられている。 ,疼痛治療の現状と展望(2000),,,152 #1 【4.10】:3 オピオイドによるかゆみと診断するためには、かゆみを起こす可能性のある他の全身疾患を除外していかねばならない。以下に各疾患の特徴と対応策を示す。緩和医療において遭遇するかゆみは、老人性掻痒症、胆汁欝滞、カビなどによる皮膚症状、リンパの欝滞、薬物(全身または脊椎・硬膜外オピオイド)、その他の薬物(フロセミド)、尿毒症、精神的なものなどが挙げられる。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,84 #1 【4.10】:4 モルヒネによるかゆみに対する耐性は多くの場合数日で生じることを患者に説明する。 ,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,88 #1 【4.10】:5 モルヒネによる掻痒感の発生頻度は数%程度であるが、硬膜外投与に限ると15〜80%と高率に認められる。 ,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,75 【4.10】:6 副作用としての掻痒感は、モルヒネの硬膜外腔投与例で多くみられる。ほとんどが抗ヒスタミン薬の投与で対処できるが、重症例にはステロイドを投与する。 ,がん患者の痛みの治療(1994),,,95 #1 【4.10】:7 モルヒネ硬膜外投与の10分後にヒドロキシジン50mgまたは生理食塩液を筋注したところ、ヒドロキシジン投与群で重度の掻痒感の発現率が低いことを報告している。ただし、軽度〜中等度の発現率には有意差はない。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123 #1 【4.10】:8 モルヒネによる掻痒感に対し強カネオミノファーゲンC【適応外】(5〜20mL/日)を投与する方法も報告されている。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124 【4.10】:9 モルヒネによる掻痒感にナロキソン【適応外】を試みた報告もあり、有効であった症例もあるが、ナロキソンの至適投与量について不明な点が多く、ナロキソン投与はモルヒネの良好な除痛効果を損なう可能性が高いため、患者の状態を十分モニターしながら投与しなければならない。 ,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,117 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123 #1 【4.10】:10 脊椎内オピオイド投与では、掻痒が最も多く生じることが示されている。鎮痛作用を低下させることなく少量(5μg/kg/時)のナロキソンに反応する。 ,疼痛管理シークレット(2001),,,285 #1 【4.10】:11 モルヒネの硬膜外あるいは脊髄くも膜下腔内投与による痒みがオピオイド拮抗薬で抑制されるのに対して、モルヒネの末梢作用による痒みはオピオイド拮抗薬で抑制されないことを考慮すると、末梢作用の可能性は低いと考えられる。前述のように、モルヒネの全身性投与により末梢性に生じる痒みは、一般にオピオイド受容体を介さない。 ,疼痛治療の現状と展望(2000),,,154 #1 【4.10】:12 適応外使用であるが、モルヒネの硬膜外投与による掻痒感に対して、安全かつ有効な治療法として、就眠量以下のプロポフォール【適応外】を投与し良好な結果が得られたとの報告がある。Borgeatらは、モルヒネを硬膜外投与あるいはくも膜下投与された術後患者を対象に、プロポフォール10mg(1mL)をone shot静注し、その後掻痒感の強い患者に対して、さらにプロポフォールlOmgを追加投与し効果を判定した結果、プロポフォール群ではコントロール群(イントラリピッド)と比較して掻痒感が有意に軽減した(p<0.05)と報告している。また、長沼らも10〜20mgのプロポフォール静脈内投与により、くも膜下腔モルヒネ投与後の掻痒感が軽減したと報告している。しかしながら、Warwickらはイントラリピッドをコントロールに用いた二重盲検試験により、プロポフォールの鎮痒作用を否定しており確立した投与法とはいいがたい。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124 #1 【4.10】:13 Boreeatらは、掻痒感を5段階にスコア化し、モルヒネを硬膜外投与あるいはくも膜下投与された術後患者で、掻痒感の強い(スコア4〜5) 50名を対象として、モルヒネにより惹起された掻痒感に対するプロポフォールの効果を検討した。プロポフォール1Omg(1mL)あるいはイントラリピッド1mLをone shot静注、その5分後に効果を判定した。掻痒感の強い(スコア3以上)患者に対して、さらにプロポフォール1Omgあるいはイントラリピッド1mLを追加投与し、その5分後に効果を判定した。その後もなお、掻痒感の強い(スコア3以上)患者に対しては、試験をオープンにしてプロポフォール1Omgを投与し、症状が改善されない場合にはナロキソン0.08mgを投与した。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,277 #1 【4.10】:14 最近では、くも膜下腔投与や硬膜外投与でしばしばみられる掻痒感にプロポフォール(ディプリバン注)やオンダンセトロン(ゾフラン注)の投与が安全かつ有効な治療法であるという報告も散見される。(1)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、掻痒感が強い場合にはさらにプロポフォールlOmgを静注。(2)プロポフォール(ディプリバン注)10mg(200mg/20mL)を静注し、その後30mg(3mL) /24hrで持続静注。(3)オンダンセトロン(ゾフラン)8mg(2A)を生理食塩液100mLに溶解して静注投与。(4)オンダンセトロン(ゾフラン) 4mgを経口もしくは静注投与。 ただし、これらの薬剤についても投与方法は確立されていないこと、オンダンセトロン、プロポフォールともに高価な薬剤であること、適応外使用であることを考慮し投与に際しては慎重であるべきである。 ,オピオイドのすべて(1999),,,98 *5 【4.10】:15 オピオイドの副作用としての掻痒症の対策としてオピオイドの変更が有効である。ナロキソンの静脈内投与も有効。抗ヒスタミン薬はくも膜下オピオイドによる掻痒症を除いて有効である。最近、少量のディプリバン(10mg静注)がくも膜下オピオイドによる掻痒症を有効にコントロールすることが明らかになった。本剤は鎮痛に影響を与えず、この程度の低投与量では副作用もわずかである。 ,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,372 #1 【4.10】:16 オンダンセトロン(ゾフラン)の投与。適応外使用であるが、オンダンセトロンの投与により重篤な副作用を認めることなく掻痒感の軽減が図れたとの報告があるので以下に示す。Crightonらは、モルヒネの脊椎投与後に出現した掻痒感に対し、オンダンセトロン4mgを経口投与した1例と、オンダンセトロン4mgを静脈内投与した1例を報告している。どちらもオンダンセトロンの投与により1時間以内に掻痒感の軽減が図れている。Lariianiらは、モルヒネの硬膜外投与による掻痒感に対し、オンダンセトロン4mgもしくは8mgを静脈内投与した4例を報告している。この4例では、数分以内に掻痒感の軽減が図れている。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,278 #1 【4.10】:17 モルヒネのくも膜下あるいは硬膜外投与後に掻痒感を訴えた患者を対象に、オンダンセトロン【適応外】8mgを点滴静注し効果を判定した結果、オンダンセトロン投与群で掻痒感が有意に軽減した(p<0.05)との報告もある。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,124 #1 【4.10】:18 オンダンセトロン(ゾフラン)は5-HT3受容体拮抗薬である。回腸の求心性迷走神経末端および最後野のCTZの5-HT3受容体を遮断することにより、嘔吐を抑制すると考えられている。鎮痒においても5-HT3受容体拮抗作用であると考えられているが、作用部位はよくわかっていない。 Borgeatらは硬膜外モルヒネの掻痒感にオンダンセトロンが有効であると報告しており、Charuluxanananらは悪心、嘔吐だけでなく掻痒感にも効果が高いと報告している。現在のところ抗悪性腫瘍薬投与に伴う悪心、嘔吐にしか保険適応がない。モルヒネの便秘傾向を増悪させるという問題点がある。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,78 #1 【4.10】:19 リファンピシン【適応外】は黄疸に伴う掻痒感に有効であるとする報告が多い。黄疸に伴う掻痒感も内因性のオピオイドが関与するといわれており、実際ナロキソンでかゆみが抑制されるので、モルヒネによるかゆみとの類似性が高い。 Mercadanteらはリファンピシン300mgを1日2回投与することでモルヒネによる掻痒感が軽減することを報告した。リファンピシンがかゆみを抑えるメカニズムとして、ミクロゾーム酵素の誘導によりかゆみ物質の代謝を促進することが推測されている。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,78 #1 【4.10】:20 硬膜外投与したモルヒネによって生じる掻痒感に対して竹炭酸の塗布が有効であるという報告や、頑固な全身掻痒に対してヨモギローションが有効であるという報告がある。フェンタニールはモルヒネよりヒスタミン遊離が少ないため、症状が改善せず患者にとって苦痛である場合にはフェンタニールに変更するという方法もある。 ,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,68 #1 【4.10】:21 中枢性の痒みには、オピオイド受容体拮抗薬以外に有効な治療薬はなく、抗ヒスタミン薬が無効の場合は、モルヒネの減量や他のオピオイド鎮痛薬(フェンタニル)による治療を考慮する。 ,オピオイドのすべて(1999),,,63 【4.10】:22 モルヒネによる掻痒感が抗ヒスタミン薬で解決せず、患者が不快である場合はレペタン、スタドールに変更する。これらはモルヒネに比べ鎮痛効果が劣るものの掻痒感の発生頻度が少ないので十分な鎮痛効果が得られるならば変更することは可能である。 ,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,118 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,123 #1 【4.10】:23 国立がんセンター中央病院の痒みの症例 モルヒネによるかゆみの緩和で依頼を受けた症例は2年間で8例のみである。モルヒネによるかゆみは全身的であるが、そのなかでもかゆみは体幹に集中していた。また、もう一つの特徴として、かゆみはオピオイドの投与開始直後から数日の経過のなかで発症することが多く、経過観察のみで3〜4日で消失したものもあった。そのうち、VAS50/100以上の重症例は2例のみであった。これらに対してはすでに抗ヒスタミン薬が投与されていたが、当科においてプロメサジンに変更しかゆみは軽減した。しかし、完全に消失させることはできなかった。その他のVAS50/100未満の症例に対しては、抗ヒスタミン薬が投与されていない症例に対してハイドロキシジン50mgを就眠前に投与し対応した。モルヒネによるかゆみは、重症例はあまり少ないと考えられるが、かゆみ自体が適切に評価されず当科にコンサルトされなかった可能性、当科がかゆみの治療まで行っていることを知らなかった可能性も考えられ、今後、かゆみの治療に開してもアピールしていく必要があると考えている。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,84 |
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