【4.6】「モルヒネの副作用としての混乱、幻覚、せん妄」
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【4.6】:1
 痛みの強い進行・末期癌患者がモルヒネの増量や三環系抗鬱薬の開始に伴って精神変調をきたした場合、まずはせん妄の可能性を疑う必要がある。幻覚や妄想が特に夜間に明らかで、意味不明な会話が目立ち疎通も不良な場合には、せん妄の診断は容易である。しかし軽度のせん妄の場合、幻覚や妄想が目立たず、疎通も良好で一見したところ意識清明のようにみえることがある。そのためせん妄が見逃され、「痛みのためではないか?」「死への不安や恐怖のためではないか?」と、あたかも心因・反応性の疾患ではないかと誤解されることがある。
 筆者の経験では、モルヒネを主因としたせん妄の特徴は、(1)神経因性疼痛などの緩和困難な痛みがある患者で、(2)モルヒネの増量とともに精神変調が出現し、(3)精神変調に先行してモルヒネが原因と思われる昼間の眠気があった、などである。このような患者に対しては、「現在の季節や日付はいつか?」、「今いる場所がどこか」、「100引く7は? その答えからもう一度7を引くと?」などといった単純な質問をしてみるとよい。疎通が良好で意識清明のようにみえても、これらの質問に間違った答えをするようであれば、せん妄の可能性が高い。
 モルヒネや三環系抗鬱薬が原因と考えられる場合、神経ブロックや放射線療法など他の鎮痛法を積極的に併用し、両薬剤の減量や中止を試みる必要がある。せん妄の薬物療法としては、心血管系への影響、呼吸抑制、抗コリン作用などが少ないことからハロペリドールが推奨されており、終末期においては多くの場合5mg/day以下の低用量で効果が認められる。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,154

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【4.6】:2
 老人性痴呆が潜在的にある患者の場合には、モルヒネの服用で、夜間せん妄などが誘発されることがある。このような症状がみられたらモルヒネの使用の有無に関係なく、ハロペリドール(セレネース)【適応外】を使用する。この薬は1錠0.75 mgで、0.75、1.5、2.25と徐々に増量していく。セレネースの使用後、2〜3日しても混乱状態がおさまらないような場合には、代替オピオイドを使う。
,ホスピスケアの実際(2000),,,14

 
【4.6】:3
 モルヒネによる混乱、幻覚は、非常にまれであり1〜2%と報告されている。末期癌患者には混乱が比較的発生しやすく、モルヒネ由来のものか、他に原因があるのか鑑別することが重要である。とくに高カルシウム血症による混乱が見逃されることがあるので注意する。
 対策としては、痛みのない場合は、まず減量する。減量は1回量を3〜5割減にしてみる。混乱が強い場合はモルヒネを中止するが、漸減することを忘れない。中止後は、レペタンなどの他のオピオイドに変更する。
 混乱の治療としては、セレネースが第一選択である。内服可能であれば、セレネース液【適応外】が使用しやすい。1回0.5mgを1日4回から開始して状態を見ながら増減するとよい。
,臨床と薬物治療(1990),,58,47

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【4.6】:4
 モルヒネの副作用としての混乱に対し、内服困難な場合は、セレネースの5〜30mg/日の持続皮下注入または持続点滴静注を行う。セレネースの注射液は、内服薬と投与量が全く異なるので注意する。(注射薬を内服薬として使用してはならない)
,最新緩和医療学(1999),,,55

 
【4.6】:5
 モルヒネ投与中の患者で、混乱などが出現してきたら、肝・腎機能と共に高カルシウム血症をチェックする必要がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,6

 
【4.6】:6
 末期癌の患者には高カルシウム血症が出現することがよくある。モルヒネ使用中に混乱が出現した場合は、高カルシウム血症を除外することや、そういうものがあることを念頭に置いて見ていくことが大事である。まず、他の薬物(例えばH2ブロッカーでも混乱は出現する)、またはモルヒネも含めて薬物による混乱を疑い、最小必要限に薬物を減らし、場合によっては中止することが大切である。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,76

 
【4.6】:7
 モルヒネに対する誤解として「頭がおかしくなる」がある。確かにモルヒネによる混乱はあるが、わずか数%である。仮に混乱が出現しても、適切に対応すれば臨床上問題となることはほとんどない。
,がんの症状マネジメント(1997),,,41

 
【4.6】:8
 モルヒネによる混乱錯乱は全体の約2%ぐらいに現れる。高齢者と肝機能障害患者に時々起こることがある。この場合、セレネースを1日2mg投与すると治まる。
,ターミナルケアとコミュニケーション(1992),,29

 
【4.6】:9
 まれではあるがモルヒネによる錯乱は高齢者に起こりやすい。このため増量は時間をかけてゆっくり行う。あらかじめ患者によく説明し理解を求めることも重要である。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,198

【4.6】:10
 モルヒネによる錯乱、めまい、不安感は高齢者で数日にわたってみられる事がある。あらかじめ、本人や家族に説明して眠気の場合と同じように対処すると数日で消える。
,がんの「いたみ」克服の知恵(1998),,70

 
【4.6】:11
 モルヒネによる錯乱、幻覚は比較的少なく、投与初期に見られ数日で改善することが多い。衰弱、腫瘍の脳転移、肝不全、尿毒症、電解質異常が原因であるので十分に鑑別する。鎮痛後2〜3日しても改善がなければ、投与量を30〜50%減量してみる。鎮痛が不十分であればNSAIDsを併用、改善がなければセレネースを併用するか、モルヒネを徐々に減量、中止した後にレペタンに切り替える。
,痛み治療マニュアル(1993),,,55

 
【4.6】:12
 モルヒネの副作用としての錯乱、不安定感、めまい感の対策。モルヒネの投与量を増量せずに投与を続けると数日で消失する。高度な場合には減量する。
,終末期医療(1991),,0,29

 
【4.6】:13
 ターミナル後期においては薬剤性の混乱に十分注意する。薬剤性混乱は原因薬剤の減量・中止で改善する。淀川キリスト教病院のホスピスの調査では、モルヒネと抗コリン薬(ハイスコ)によるものが多かった。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,10
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,26

*5
【4.6】:14
 パーキンソン症候群はフェノチアジン系薬物投与患者の約15%に生じる。進行癌患者での頻度は高い。高齢者に最も多く、その頻度は50%に近い。女性は男性の2倍の頻度。通常、原因薬物投与開始後5〜30日後に生じる。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,236

 
【4.6】:15
 モルヒネによる錯乱・せん妄がみられた場合、モルヒネの減量やフェンタネストなどへの変更、またはセレネース(1回0.75〜1.5mg、2〜4回/日経口投与。緊急時には2.5〜5mg筋注・静注も可能)の投与も検討する。
,ターミナルケア(1995),7,1,32

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【4.6】:16
 淀川キリスト教病院ホスピスの臨床経験では、モルヒネによって嘔気・嘔吐が出現した場合、ブプレノルフィンに変更しても同様の副作用が出現する可能性が高いが、フェンタニールでは出現しにくいと考えられた。せん妄の場合も同様の傾向が認められた。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,73

 
      参照−【7.4】「緩和医療における向精神薬の使用上の注意」
   
 

 

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