【5.2】「フェンタネスト(フェンタニール)」
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【5.2】:1
 フェンタニルの持続静注・持続皮下注
 フェンタニルの持続皮下注を行う場合には1時間に1mL以上の投与は困難であり、フェンタニルでは1.2mg/dayが限界になる。この量はフェンタニルパッチでは5mgのサイズのパッチを貼付しているときとほぼ同じと考えられる。増量や減量は時間単位で行うことが可能であり、フェンタニル注を経てフェンタニルパッチヘの変更という手順も可能である。調節時以外、皮下注を選択する利点はない。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,92

#1
【5.2】:2
 フェンタニルの持続静注・持続皮下注
(1)フェンタニルの注射薬は癌疼痛に保険適応がない。
(2)モルヒネの皮下注に比べて薬価は高い。フェンタニルパッチのほうがはるかに廉価になる。
(3)持続皮下注と持続静注の効果には差がない。しかし持続皮下注では投与量に限界(1mL/hr)があり、1.2mg/dayである。
(4)オピオイドがはじめての患者で、フェンタニルの持続静注や持続皮下注を開始する場合、開始量は0.1mg/day程度が目安である。
(5)モルヒネの静注10mgの患者では、同等の鎮痛を得るのにO.2mgのフェンタニルが必要である(換算比はほぼ50倍)。
(6)レスキューもフェンタニルで行うことができる。フェンタニル1日量の1/12を1時間程度かけて点滴静注するか、1/24を早送りする。
(7)フェンタニルパッチでもフェンタニル注でレスキューは可能である。その場合のフェンタニルの1日量はパッチからの放出・吸収速度が基準。
(8)フェンタニルの配合変化については十分な検討がされていないため、高カロリー輸液内に混注する場合には薬剤師などの意見を求め、効果にも注意する。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,92

 
【5.2】:3
 フェンタネストはモルヒネと同等の鎮痛作用を持ち(鎮痛作用に有効限界はない)、モルヒネに比較すると便秘、吐き気、めまいなどの副作用が少ないといわれている。現在は、副作用が強くモルヒネでうまく除痛が得られない症例にしか使われていない。印象としてモルヒネより副作用は少ないが、鎮静が強いように思われる。臨床上はフェンタネストはモルヒネの65倍くらいの力価と考えられているので、アンプル数にしてモルヒネの1.5倍のフェンタネストを目安にしている。通常、モルヒネの持続皮下注は20mgで開始しているが、フェンタネストで開始する場合には300μg/日となる。
,がん患者の痛みの治療(1994),,,71

 
【5.2】:4
 モルヒネで副作用がコントロール困難な場合にフェンタネストが有効である。ただし、モルヒネに比して若干鎮痛効果が弱く、またモルヒネの鎮痛以外の付加的な作用としての呼吸困難、腹満感などの治療効果はモルヒネに比して弱い印象がある。フェンタネストで一時的に副作用が回避できた場合、再びモルヒネに変更することもある。また、レペタンの副作用のコントロールが困難な場合に変更するとの報告もある。
,がんの症状マネジメント(1997),,,90

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【5.2】:5
 フェンタニールはペチジン同様フェニルピペリジン系の合成麻薬である。主としてμアゴニストであり、鎮痛作用はモルヒネの50〜200倍の強さを持つとされる。薬理作用はモルヒネとほぼ同様だが、催眠効果は少なく、ヒスタミンの遊離作用もほとんどない。内分泌機能および代謝を亢進する作用もない。また心抑制がなく、血圧を低下させないため循環動態がきわめて安定しており、心臓外科手術における麻酔によく用いられる。麻酔量(50〜100μg/kg)のフェンタニールは著明な筋硬縮を起こすが、これは線条体におけるドパミン神経伝達に及ぼすオピオイドの効果の結果として起こるらしく、ナロキソンによって拮抗される。
 フェンタニールの呼吸抑制作用は、モルヒネ同様呼吸数の減少が主でありCO2に対する感受性も低下するが、回復はペチジンより早い。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,69

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【5.2】:6
 フェンタニールの鎮痛力価はモルヒネの100倍程度といわれているが、同程度の鎮痛が得られることを基準にモルヒネからフェンタニールヘの変更を行ったところ、筆者の臨床経験では50〜60倍(たとえば、モルヒネ120 mg/日の持続静注であれば、フェンタニール2.0〜2.4 mg/日の持続静注)で同等の鎮痛効果が得られた。
 モルヒネ不耐症や副作用コントロール困難な場合にモルヒネから他のオピオイドヘの変更以外に手段がないことがある。とくに、腎機能が低下した症例ではモルヒネ代謝産物であるmorphine -6- glucuronide (M 6 G)が蓄積し、傾眠傾向などの副作用の頻度が著しく高くなる。フェンタニールは代謝物に活性がないと考えられており、その際にモルヒネの代替薬として有用なオピオイドである。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,84

*5
【5.2】:7
 麻酔におけるフェンタニールの利点は強力な鎮痛作用と循環非抑制作用、短時間作用性である。他の麻薬との違いとして副作用に鉛管現象(躯幹の筋肉の緊張状態)をみることがある。迷走神経刺激による徐脈作用も特徴といえる。本剤は肝臓で代謝され、尿中に排泄される。代謝物に薬理学的活性はない。分子量は小さく、脂溶性が大きいという特徴から貼付剤として利用可能である。
,ターミナルケア(1998),8,2,125

*5
【5.2】:8
 モルヒネによって痛みの取れない患者でもフェンタニールに変更することによって痛みが軽減することがある。呼吸抑制は癌疼痛患者においてはモルヒネと同様に問題となることは少ない。便秘は経口モルヒネより軽度。他の副作用はモルヒネと比べて差がない。ただし、傾眠傾向はモルヒネより軽度。腎機能低下患者ではモルヒネ代謝物による傾眠の傾向が心配となるが、本剤はその心配が少なく有利である。
,ターミナルケア(1998),8,2,125

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【5.2】:9
 モルヒネによる傾眠はフェンタニールへの変更によって著しい改善が見られることが多く、QOLの改善に貢献できる可能性が高い薬剤である。フェンタニールの使用による副作用は、過去100例以上の臨床応用によっても、重篤な呼吸抑制が見られた症例はなかった。フェンタニールは麻酔導入時などに大量投与によって筋硬直や換気困難が生じることが知られているが、癌疼痛治療のためにフェンタニールの持続静注や持続皮下注を行った結果からは、これらの副作用も認められていない。
,オピオイドの基礎と臨床(2000),,,21

 
【5.2】:10
 モルヒネやレペタンの副作用対策が困難な45例にフェンタネストの持続皮下注を行ったところ56%の症例で副作用の改善が得られ、鎮痛効果は有効率で65%であった。フェンタネストの副作用は少なく、特に、嘔気、嘔吐や混乱の出現はごくわずかであった。
,ターミナルケア(1995),7,1,46

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【5.2】:11
 フェンタニルの代謝
 フェンタ二ルは肝代謝依存であり、CYP3A4が代謝に関与している。 CYP3A4の阻害薬であるノービア(HIV感染症治療薬)との併用でフェンタ二ルの代謝が阻害されたとの報告がある。
 また、低血圧によって肝血流の低下が持続すると、血中濃度が3倍以上に上昇する可能性がある【Team KANWAデータ】。癌疼痛を伴う腎機能低下や透析患者において、フェンタ二ルによる傾眠が問題になることはほとんどない。これらの患者で傾眠が生じた場合には、別の原因を優先して検討したほうがよい。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,81

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【5.2】:12
 モルヒネと同様に、フェンタニールの副作用として、吐き気・嘔吐や便秘、眠気、呼吸抑制および混乱などが現れる可能性がある。一方、モルヒネと異なる副作用として、迷走神経剌激による徐脈が現れること、筋硬直がみられること、ヒスタミンの遊離が認められないことが挙げられる。
 フェンタニルで下剤の使用量が明らかに少なかったこと、モルヒネ皮下注に比ベフェンタニル皮下注で便秘が明らかに少なかったことから、便秘の程度は弱いと考えられる。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,257

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【5.2】:13
 フェンタニールの副作用
 フェンタニールはμ2受容体への親和性が低いため、モルヒネに比べて便秘を生じにくい。したがって、モルヒネからフェンタニルヘの変更時に、緩下剤の調節を行わないと下痢を生じることが多い(モルヒネからの変更時に、動悸、発汗異常、激しい下痢などを伴う退薬現象を生じたとする報告もある)。したがって、モルヒネによる便秘が重症化し、食欲低下や嘔気・嘔吐、あるいは麻痺性イレウスなどを生じるような場合には、フェンタニルは効果的な代替薬の候補になる。
 フェンタニルのおもな代謝物はノルフェンタニルであり、代謝物はほとんど薬理学的な活性を持たない。したがって、癌疼痛を伴う腎機能低下や透析患者において、フェンタニルの代謝物が蓄積しても、モルヒネの代謝物のような傾眠が問題になることはほとんどない。モルヒネからフェンタニルの持続皮下注への変更例では、57例中46例で眠気や傾眠の改善が認められた。モルヒネが原因と考えられたせん妄患者19例のうち、15例でもせん妄の改善を認めた。
,ターミナルケア(2003),13,1,11

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【5.2】:14
 フェンタニールの過量投与と治療
 (1)モルヒネやフェンタニルなどのオピオイドの過量状態では、意識低下や傾眠を伴う呼吸数の低下が見られ、ゆっくりで大きな呼吸になる。
 (2)意識低下が著しくても、呼吸数が低下していなければオピオイド以外の原因を考える。
 (3)オピオイドの呼吸抑制は、呼吸苦がなく呼吸数が減少する。呼吸したくてもできないように抑制されているのではない。
 (4)オピオイド投与中の患者で、睡眠中には呼吸数が10回/min未満になることはよくある現象。治療は不要のことが多い。
 (5)オピオイドの呼吸抑制にはナロキソンを少量ずつ投与する。ナロキソンは呼吸抑制→鎮静→鎮痛の順に用量依存に拮抗する。
 (6)激痛や退薬現象を生じないように、呼吸数の回復を基準に行う。
 (7)ナロキソンの半減期を過ぎて呼吸数が再度減少しなくなるまで十分に観察する。
 (8)オピオイドの再開は意識レベルが十分になった時点以降に、少なめの量で開始しレスキューを併用するが、痛みが生じるまで待つ必要はない。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,93

 
【5.2】:15
 癌性疼痛に対するフェンタネストの持続静注【適応外】
フェンタネストは0.0125〜0.025mgを急速注入したのち、0.06〜0.12mg/日から開始。モルヒネからの変更は、モルヒネ1A=フェンタネスト1Aで換算する。増量法は0.12-0.18-0.24-0.36-0.48-0.72-0.96mg/日である。疼痛時は0.0125mgを注入している。有効限界はないと考える。
,がんの症状マネジメント(1997),,,92

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【5.2】:16
 フェンタニールの鎮痛力価はモルヒネの100倍前後と考えているが、癌疼痛治療でモルヒネからフェンタニールへの変更を行った臨床調査結果からは50倍程度でモルヒネと同等のVASを維持することが可能であり、通常考えられている力価の半分である。
,オピオイドの基礎と臨床(2000),,,21

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【5.2】:17
 急激な癌疼痛に対してはフェンタニールの口腔粘膜への投与も有用であり、フェンタニールパッチとの併用でより良好なペインコントロールが可能となる。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,85

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【5.2】:18
 フェンタネスト注射液を希釈して経口できる。開始量0.2mg4時間毎分6または分5(眠前2回分)。理論上は6〜8時間毎の投与でも良い。緩和ケア病棟以外では請求にあたっては症状(使用の理由)併記が必要。
,今月の治療(2000),8,3,76

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【5.2】:19
 経口投与では大部分が初回通過効果を受け効果は低下する。フェンタニル0.05mg/mLの舌下投与では、10分後に50%が吸収されるという報告がある。舌下より吸収されたフェンタニルは初回通過効果を受けることなく分布するため、速やかで効率の良い作用を期待できる。直腸内投与でのデータはない。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,81
   
 

 

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