| 【5.3】「デュロテップパッチ」 | |
| #1 【5.3】:1 フェンタニルパッチは1回の貼付で72時間(3日間)の鎮痛効果が維持できる長時間作用型の貼付型経皮吸収剤である。フェンタニルパッチからは、0.6mg/day/10cm2の速度でフェンタニルが放出される。したがっておおよその投与量は、2.5mg、5mg、7.5mg、10mgの各サイズによって0.6、1.2、1.8、2.4mg/24時間になる。製剤に表示されている2.5mg、5mg、7.5mg、10mgはパッチ内のフェンタニルの総量を示しており、投与速度や投与量とは関係ない。初回貼付時には皮下組織のフェンタニル濃度が上昇するのに時間がかかり、効果発現までに半日程度を要する。 モルヒネからフェンタニルヘの変更では、嘔気・嘔吐、便秘、眠気の改善が期待できる。特に腎機能障害(24時間クレアチニン・クリアランス<30mL/min以下)の患者でも傾眠を生じることはきわめて少ない。フェンタニルパッチの使用開始は、保険上モルヒネ製剤からの変更のみである。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,82 #1 【5.3】:2 フェンタニールパッチの最大の特徴は、効果が72時間持続することである。作用発現は緩徐(1〜2時間を要する)で、最大効果発現までには17〜48時間を要し、24〜72時間で定常状態になる。フェンタニールパッチの吸収率は皮膚温や末梢血流の影響は受けにくいが、皮膚温40°C以上では吸収率が30%程度増加する。このため、入浴などの際には貼付部を温めないように注意する。 ,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,85 #1 【5.3】:3 Payneらは、フェンタニルパッチの適応に関するガイドラインを発表している。フェンタニルを選択する基準としては、オピオイドが有効である痛み、突然起こる痛みが少ない患者が適応であるとしている。癌の痛みには持続的な痛みと間欠的な痛み、そして予測がつかないときに突然、出現するbreakthrough painと言われる痛みがある。長時間作用性のオピオイドは安定した痛みには非常に有効であるが、概して効果発現時間は遅く、逆に短時間作用性の薬剤は効果時間が短い反面、服用後に即効性があり痛みの調整性としてはよい。長時間作用性の鎮痛薬は、鎮痛効果持続作用は強いが、痛みの調節性に関しては悪いと現状では考えてよい。 ,緩和医療学(2002),4,2,108 #1 【5.3】:4 デュロテップパッチ 経皮吸収型製剤の利点としては、(1)静脈内投与のように侵襲を伴わない、(2)一過性に高い血中濃度のピークを形成せず副作用の発現が少ない、(3)経口投与のような肝臓による初回通過効果の影響を受けない、(4)薬物の効果時間の持続性から投与回数を減らすことができる、等が挙げられる。 フェンタニルパッチの貼付によって過度の鎮静や呼吸抑制が起こり、薬物の投与の中止を目的にすぐにパッチをはがしたとしても12〜24時間(半減期17時間)は効果が持続することにも注意する必要がある。 ,ペインクリニック(2002),23,12,1660 #1 【5.3】:5 フェンタニルパッチは、海外では強オピオイド鎮痛薬の開始薬としても使用されているが、わが国では使用経験も浅く、モルヒネからの切り換えに限定されている。 モルヒネ製剤からフェンタニルパッチヘの換算表(変換表)は、変換時に鎮痛効果を維持できることを保証したものではなく、実際には半数の患者で疼痛の増強が認められる【Team KANWAデータ】。 換算表は、フェンタニルパッチの開始用量を示したものであり、変換後はレスキューを使いながら十分な鎮痛が維持できるまでパッチサイズを上げるか、貼付枚数を増やしていく。フェンタニルパッチの貼付後から吸収開始までは2時間程度、鎮痛効果が十分になるまでは12時間から24時間を要する。したがって、初回貼付時にはモルヒネ製剤の効果が切れないように、フェンタニルパッチとモルヒネ製剤を同時に使用する。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,85 #1 【5.3】:6 フェンタニルパッチは長時間作用性であり、服薬コンプライアンスはこれまでの徐放性オピオイドにくらべて著しく高い。しかし、長時間作用性の薬物の使用上のコツを知ったうえで使用することが望ましい。一般的に、長時間作用するオピオイドを使用するにあたってのコツは、その薬物動態を考えて投与することである。長時間作用する薬物は、効果が出るまでに時間がかかることを知っていなければならない。フェンタニルパッチでは、効果が出るまでに約12〜18時間かかるとされている。したがって、そのあいだは短時間作用性の効果がすぐに現れる薬剤を併用していく必要がある。短時間作用性オピオイドとしてはモルヒネ水のレスキューが代表である。モルヒネの徐放錠をフェンタニルパッチに変更するときにはモルヒネの血中濃度の低下とフェンタニルパッチから吸収され血中に移行したフェンタニル量の増加がオバーラップし、痛みが出現しないように貼付開始と同時にモルヒネ徐放錠の1回分を併用するなどし、フェンタニルの血中濃度上昇までの期間の鎮痛効果を補う必要がある。その後、短時間作用性モルヒネ(モルヒネ水のレスキュー)を適宜使用することが重要である。 ,緩和医療学(2002),4,2,107 #1 【5.3】:7 フェンタニールは、脂溶性が高いので、脂肪の多い患者の腹部などは避ける。また、パッチはその貼付部に密着していないと薬剤放出が安定しないので、痩せた患者の肋骨部なども避け、通常は前胸部に貼るとよい。平均生体利用率は92%である。パッチを剥がしたあとは緩徐にフェンタニールの血中濃度が低下し、その半減期は13〜25時間と比較的長い。副作用には、嘔気・嘔吐、眠気・傾眠、便秘を認めるが、モルヒネに比べて軽度である。貼付部に皮膚のかぶれ、かゆみなどがみられることがある。 ,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,85 #1 【5.3】:8 フェンタニル貼付薬のような長時間作用型オピオイドは、鎮痛のベースをつくる薬剤であり、痛みの急性増悪(incident pain、 あるいはbreakthrough pain)が生じたときは、別途処方して携帯させる速効性モルヒネ製剤(塩酸モルヒネ散、塩酸モルヒネ水)を躊躇せずに服用するようあらかじめ十分に患者指導を行う必要がある。これをレスキュー(rescue)といい、レスキューの実践は本剤のような長時間作用型オピオイドでは死活的に重要となる。 ,臨床と薬物治療(2002),21,2,60 #1 【5.3】:9 デュロテップパッチで治療中においても疼痛の一時的増強が起こることがある。その際には本剤使用前に用いていたモルヒネ製剤、あるいは即効性モルヒネ製剤による治療が必要である。そのような場合には原則として、1回レスキュー投与量として、前治療が経口剤もしくは坐剤の場合は1日量の1/6量を、注射剤の場合は1 /12量を目安に投与する。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,125 #1 【5.3】:10 フェンタニルパッチは3日に1回の貼り替えですみ、使用方法も簡便でかつ副作用も少ないことから、とくに在宅患者にとって非常に有用な疼痛緩和手段であると考えられる。ただし欠点としてはレスキューをモルヒネでおこなわざるを得ないこと、微量の調節がむずかしいことがあげられる ,緩和医療学(2002),4,2,135 #1 【5.3】:11 デュロテップパッチを貼るのに適した場所は胸、腹、上腕、太ももなど平らな面が好ましいとされている。血流を考えて、腰よりも上に貼ることを推奨している報告もある。体毛がある場所に貼る場合は体毛を処理する必要がある。その際に注意する点は、皮膚ぎりぎりに体毛をはさみなどで切ることであり、決してかみそりなどで毛をそってはいけない。また、貼付部位には傷のある場所、過敏になった場所(炎症部位など)を選択しないことが重要である。 ,緩和医療学(2002),4,2,107 #1 【5.3】:12 フェンタニルパッチからのフェンタニル吸収量は、体中または体外からの熱によって増加することが知られている。40℃で1/3量増加すると報告されている。熱の上昇時には投与量の調節、副作用のモニターが重要である。したがって、長時間の入浴、暖かいウォーターベッドでの睡眠、パッチの上への過熱などは吸収されるフェンタニルの吸収量を増加させるので避ける必要がある。同様に、皮膚上の傷からの吸収も高まるため注意が必要である。 ,緩和医療学(2002),4,2,109 #1 【5.3】:13 発熱している患者でのデュロテップパッチ過量投与の報告はないが、過鎮静や呼吸抑制などの副作用が出現する可能性があることを念頭に置く必要がある。 ,ターミナルケア(2003),13,1,20 #1 【5.3】:14 もし、貼っているデュロテップパッチがはがれた場合には一度はがれると粘着力が低下するため、すべて剥がし新しいものを貼付しなおす必要がある。周囲だけがめくれている場合には周囲を次回までテープで補強しておくのもよい。一度貼付するとその後に皮膚の炎症を残す場合があるため、貼付部位はそのたびごとに変更していく必要がある。 ,緩和医療学(2002),4,2,107 #1 【5.3】:15 経口モルヒネからデュロテップパッチヘの切替え方法 (1)朝に切替える(貼付後12時間は血中濃度が安定しないため呼吸抑制などの重篤な副作用が出現する可能性があるので念のため)。 (2)貼付後6時間までは今までと同じ方法でモルヒネ製剤を投与する。具体的には、モルヒネ水:朝のモルヒネ水内服と同時に貼付開始。その4時間後に今までと同量のモルヒネ水を投与。MSコンチン:朝のMSコンテンの内服と同時に貼付開始。アンペック坐剤:朝のアンペックの挿肛と同時に貼付開始。モルヒネ皮下注射or持続静脈注射:貼付開始後6時間までは持続投与を継続する。※カディアン:カディアンだけは例外的で、通常のカディアン内服の12時間後に貼付開始する。 (3)必ず疼痛時臨時内服量(レスキュードーズ)を指示する。フェンタニルパッチのレスキューには今のところモルヒネを使用することになっているため、レスキュードーズには先行モルヒネ投与量の6分の1(注射の際は1時間量)のモルヒネを投与することとする。 (4)貼り替えは3日に1回。必ず貼付時に開始日時と交換日時をパッチに油性ペンで記載。 ,緩和医療学(2002),4,2,139 #1 【5.3】:16 経口モルヒネからデュロテップパッチヘ換算 36・45の法則(筆者はサブロー予後の法則と覚えている) フェンタニルパッチの規格は2.5mg、5mg、7.5mg、10mgである(フェンタニルの時間あたり放出量はそれぞれ25μg/hr、50μg/hr、75μg/hr、100μg/hr)。それぞれに対応する経口モルヒネの量は、「フェンタニルパッチの規格(mg)」×36±45mg=「1日経口モルヒネ量」で簡便に算出できる。ちなみにわが国では10mg製剤のモルヒネからの切り替え治験がおこなわれておらず、初回の投与量は7.5mg(経口モルヒネにして270±45)までしか対応がむずかしい。また、同様に1日のモルヒネ量が45mg以下の患者に対しても治験がおこなわれておらず、1日経口モルヒネ量が45mg以下の患者に対しては使用が推奨されていない。換算表は、安全にフェンタニルパッチに変更するための初回用量を示しているものであり、2回目貼付以降は、鎮痛効果が得られるまで各患者ごとに用量の調節をおこなう。 ,緩和医療学(2002),4,2,139 #1 【5.3】:17 モルヒネ製剤からフェンタニルパッチに移行する場合 硫酸モルヒネ徐放錠を使用していた場合は、貼付開始と同時に硫酸モルヒネ徐放錠の1回量を投与する。塩酸モルヒネ坐剤を使用していた場合は、貼付開始と同時に塩酸モルヒネ坐剤の1回量を投与する。塩酸モルヒネ水・末・錠を使用していた場合は、貼付開始と同時および4時間後に塩酸モルヒネ水・末・錠の1回量を投与する。塩酸モルヒネ注射を使用していた場合、貼付開始後6時間まで、継続して持続点滴する。硫酸モルヒネ徐放顆粒を使用していた場合、硫酸モルヒネ徐放顆粒を投与した12時間後に貼付を開始する。 ,臨床と薬物治療(2002),21,2,61 #1 【5.3】:18 モルヒネからデュロテップパッチへの変更 (1)硫酸モルヒネ徐放錠からパッチヘの変更の注意点として、モルヒネ徐放錠60mg/日を朝9時30mg、夜9時30mgで、1日2回定期的に服用している場合には、フェンタニルパッテ2.5mgパッチを翌朝9時に貼付開始、それと同時にモルヒネ徐放錠30mgを併用しておく。もちろんモルヒネ水をレスキューとしておく。 (2)塩酸モルヒネ注射薬を60mg/日で持続投与されている患者では、フェンタニルパッチを5mgパッチを翌朝9時に貼付、持続点滴は貼付後6時間後まで持続投与しておく。 (3)硫酸モルヒネ徐放製剤60mg/日投与中の患者では、前日の夜9時に徐放製剤を投与し、翌朝9時に2.5mgパッチを貼付する。 (4)塩酸モルヒネ(水、錠、末)60mg/日で投与されている患者は、翌朝6時にパッチを貼付し、6時とその後の10時に塩酸モルヒネ(水、錠、末)を投与する。 (5)塩酸モルヒネ坐剤を60mg/日で1日3回投与している患者は、翌朝の6時にパッチを貼付、同時に塩酸モルヒネ坐剤を投与しておく。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,150 #1 【5.3】:19 モルヒネ1日使用量に基づくフェンタニルパッチ剤の推奨貼付用量換算表 フエンタニル 2.5mg 5.Omg 7.5mg 貼付用量 (25μg/時×72時間)(50μg/時×72時間) (75μg/時×72時間) モルヒネ 経口剤 45〜134 135〜224 225〜314 (mg/日) 坐 剤 30〜69 70〜112 113〜157 (mg/日) 注射剤 15〜44 45〜74 75〜104 (mg/日),臨床と薬物治療(2002),21,2,60 #1 【5.3】:20 モルヒネ-フェンタニル貼付剤換算表で、まず目をひくのは、フェンタニル貼付薬各製剤に対応するモルヒネ製剤の1日使用量の幅が非常に大きいことである。この理由は、ひとえにフェンタニル微量持続与薬法の副作用の少なさにある。モルヒネ製剤では、増量とともに鎮痛効果は増大するが、同時に三大副作用(嘔気・嘔吐、便秘、眠気)もパラレルに増強する。一方、フェンタニル貼付薬では、増量とともに鎮痛効果は確実に増大するが、三大副作用の増強はほとんどみられないか軽微である。塩酸モルヒネ散を1日量で90mg増量すると、三大副作用は相当に増強する。フェンタニル貼付薬は、「72時間貼付して4日目に前日のレスキュー使用量がモルヒネ経口剤換算で45mg以上のとき、2.5mg増量して貼り替えていく」という方法で使用する。モルヒネ製剤と異なり、72時間ごとに2.5mg(換算表によればモルヒネ経口剤90mg増量に相当)増加しても、鎮痛作用は確実に強まるが、通常副作用の増強はないか軽微である。 ,臨床と薬物治療(2002),21,2,60 #1 【5.3】:21 フェンタニルパッチの初回貼付量はモルヒネからの換算表(変換表)にしたがって行うが、初回貼付量では約半数の患者で疼痛の増強が認められる フェンタニルパッチの増量は1日に3回以上レスキューが必要か、それに相当するような疼痛の場合に行う。体位などで一時的に強い痛みが出現し、レスキューを用意する間に痛みが軽減してしまう場合も増量の適応に含まれる。 増量はパッチの貼り替え時に行うことが原則であるか、頻回にレスキューが必要な場合には3日間の貼付を、維持やモルヒネのレスキュー投与にこだわるべきではない。最大効果が期待できる時期(貼付2日目)になっても強い疼痛を訴える場合には、その時点での増量(貼り替え)を検討する。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,84 #1 【5.3】:22 デュロテップパッチのレスキューと増量 (1)フェンタニルパッチを用いて鎮痛を行う場合、レスキューを処方せずに使用するべきではない。 (2)フェンタニルパッチを増量した場合、モルヒネによるレスキューの1回量は効果を見ながら調節することが必要である。 (3)フェンタニルパッチの増量後のレスキューの量については、スタンダードな方法が確立していない。 (4)レスキューとして使用可能な製剤はモルヒネ末(散)、モルヒネ水、アンペック坐剤、モルヒネ注、フェンタニル注(保険適応外)、パビナール注である。 (5)フェンタニルパッチの増量は、1日のレスキューが3回以上必要な場合か、それと同等以上の疼痛の場合に行う。 (6)レスキューを使用していても鎮痛が不十分で疼痛が著しい場合には、貼付2日目にフェンタニルパッチの増量を検討する。 (7)フェンタニルの鎮痛効果には有効限界がないため、疼痛が残存していれば増量を繰り返すべきである。 (8)増量の幅は2.5mgずつとされているが、1回の貼付量の合計が15mg以上で疼痛が強い場合には、5mg単位の増量を考慮する。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,88 #1 【5.3】:23 フェンタニルパッチ使用時のレスキュー1回量早見表通常は、いずれの剤形も基本量をレスキューの1回量で開始。 効果が不十分な場合には1回量を増量。 ハイリスク患者とは、腎機能障害患者、高齢者、長期間モルヒネの投与がなかった患者、眠気を訴えている患者。 持続静注/皮下注でのレスキューは30分から1時間かけての投与量。カッコ内は早送りを行う場合の投与量を示す。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,88 #1 【5.3】:24 フェンタニルパッチからモルヒネに変更(”戻し”)する時、フェンタニルパッチヘ変更後に増量していない場合は、変更前のモルヒネ量で開始する。フェンタニルパッチヘ変更後増量している場合、換算表に基づいてモルヒネヘ変換すると過量投与となる可能性があるため、1ランク下のモルヒネ量から開始し、レスキュードーズを併用して増量するのが安全である。 ,ターミナルケア(2003),13,1,22 #1 【5.3】:25 フェンタニルパッチからモルヒネヘの変更 (1)フェンタニルパッチからモルヒネ製剤へは、換算表を用いて逆換算してはならない。 (2)換算表でモルヒネからフェンタニルパッチに変更すると、痛みの出現頻度が高い。つまり足りない。その逆換算では痛みは出ないが、過剰になる可能性が高い! (3)ただちに元に戻していいのは、開始量のフェンタニルパッチから変換前のモルヒネ製剤の同じ量にするときだけである。 (4)この場合でも、長期間(1週間以上)フェンタニルパッチだけで維持されていた症例では、変更後にモルヒネが過剰でないか注意が必要。 (5)フェンタニルパッチの増量を繰り返している場合には、「少なめ」の原則でモルヒネに変更するべきである。 (6)「少なめ」とは、換算表で1段階下のモルヒネの量に設定するということであり、1段階下のモルヒネ量の中央値程度を目安にする。 (7)少なすぎると痛みが増強してしまう。痛みがあるときはモルヒネ製剤でのレスキューの投与方法を参考にして鎮痛を行う。 (8)フェンタニルで維持していた症例でモルヒネに再変更した場合、鎮痛レベルは同じであっても、眠気や傾眠は強くなる可能性が高い。傾眠が強い患者では慎重に! (9)モルヒネの量が多いかどうか心配な場合には、長時間の作用が持続する徐放製剤ではなく、投与量の調節が短時間で行いやすい持続静注か持続皮下注または4時間ごとの即効性モルヒネの投与を行って効果や副作用を確認する。 (10)モルヒネ製剤再開のタイミングをいつにするかは不明。フェンタニルパッチは、剥がした後の血中濃度半減期が17時間程度とされているので、その時間帯にモルヒネ製剤の吸収が始まるように再開するのがよいと思われる。 (11)フェンタニルパッチからモルヒネヘの変更の理由が、鎮痛効果が悪いという場合には、まずフェンタニルパッチの増量が本当に十分かを再度検討する。 (12)モルヒネでは、増量で傾眠が生じて「眠っていると痛くない」ということがあるが、フェンタニルパッチでは、眠気が少なく「眠っていないから痛い!」ということもある。 (13)フェンタニルもモルヒネと同様に、効きにくい痛みで増量すると眠気が強くなる。眠気もなく痛みが続いているようなら、地道に増量していくことも必要である。 (14)Team KANWAでの自験例では、120mg/dayの経ロモルヒネからフェンタニルパッチヘの変更で、2.5mg→5mg→7.5mg→10mgと増量が必要であった症例が複数経験されている。鎮痛効果が十分になるまでに10日以上が必要であった。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,90 (注:フェンタニルパッチからモルヒネに変更(”戻し”)をすることは、換算量の幅が広すぎて、通常は危険である) #1 【5.3】:26 フェンタニルパッチの副作用 嘔気・嘔吐の頻度はモルヒネより少なく、10%前後の患者で嘔気・嘔吐が出現したという報告がある。しかし、フェンタニルパッチを急激に増量する場合や、レスキュードーズのモルヒネを使用する場合には、嘔気・嘔吐が生じやすいと考えられるため、制吐剤を併用する。嘔気・嘔吐がなければ、2週間前後で制吐剤を漸減する。 鎮痛量での便秘の発現はモルヒネより少なく、下剤が必要な患者は約50%になり、必要量も減少するという報告もある。癌患者は長期臥床、栄養障害、薬剤の影響など、便秘になりやすい要因を持っていることが多いため、薬物治療が必要な場合が多い。 眠気の発生頻度は少なく、約4%という報告もある。モルヒネで強い眠気を訴えた患者でフェンタニルに変更したところ、眠気の改善が認められ、患者のQOLの改善に有用であると考えられる。 フェンタニルパッチによる呼吸抑制は、頻度は少ないが、常に念頭に置き、その対応を熟知しておくべき副作用である。フェンタニルパッチでは、フェンタニルの血中濃度が上昇するまでに時間がかかるため、呼吸抑制は遅発性であることが多い。パッチを外した後も皮下に貯留したフェンタニルが徐々に吸収されるため、遷延しやすい。特にフェンタニルパッチ開始後や、急激な増量中は注意が必要である。フェンタニルの作用は「鎮痛→鎮静→呼吸抑制」の順でみられ、傾眠が強くなったり、呂律が回らない、表情がうつろになるなどの症状が経時的に増強する場合には、これらの症状に続いて呼吸抑制が出現する可能性があるため、フェンタニルパッチをはがして経過観察する。 フェンタニルによる呼吸抑制はμ1受容体を介して起こると考えられているため、覚醒時の呼吸が8回/分未満の場合には、麻薬拮抗薬のナロキソンを使用する。通常量のナロキソン投与で激痛や退薬現象が生じる可能性があるため、1回10〜20μg (1/20〜1/10 A)ずつ、呼吸回数が10回/分以上になるまで投与する。ナロキソンの作用時間は30〜60分と短く、呼吸回数が一度回復しても再度減少するようであれば、繰り返し投与する。フェンタニルの作用は、呼吸抑制→鎮静→鎮痛の順に拮抗されるため、呼吸回数が回復し、かつ鎮痛作用を拮抗しない状態を維持するように投与する。貼付剤除去後12時間は厳重に監視を行い、傾眠などがみられなくなった時点でフェンタニルパッチの投与を再開する。 ,ターミナルケア(2003),13,1,19 #1 【5.3】:27 フェンタニルパッチの過量投与と治療法(参照−【5.2】「フェンタネスト(フェンタニール)」) フェンタニルパッチによる呼吸抑制が問題になった場合には、フェンタニルパッチを直ちに剥がす。皮下にフェンタニルが蓄積しているため、パッチの貼付されていた部位の加温や清拭は状態が改善するまで行わない。入浴など体温が上昇する可能性があることもしてはならない。フェンタニルパッチを剥がしてから、血中のフェンタニルが半減するまでは17時間を要するとされている。 薬剤の再開は痛みの出現を待つべきではない。投与再開は、患者の呼吸抑制が改善し意識レベルが回復した時点である。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,94 #1 【5.3】:28 神経障害性疼痛に対しては、これまでオピオイドの有効性は低いとされている。しかし、フェンタニルパッチの投与によって、悪性でない神経障害性疼痛に対して58%の改善がみられたとする報告もある。この点に関しては今後も検討していく必要がある。 ,鎮痛・オピオイド研究最前線(2002),,,151 #1 【5.3】:29 フェンタニルパッチの貼付によって過度の鎮静や呼吸抑制などが起こり、投与を中止する必要がある場合に注意する点は、パッチをはがしただけではすまないことである。皮下にフェンタニルが残存しているため、フェンタニルをはがした後も血中に移行しつづけていくため副作用が継続していくからである。実際にフェンタニルの血中濃度が50%低下するためには17時間もかかるといわれている。したがって、緊急でナロキソンによって拮抗する必要がある場合には、しばらくのあいだ、ナロキソンを持続投与によって継続していく必要がある。 ,緩和医療学(2002),4,2,109 #1 【5.3】:30 通常のオピオイド投与の場合にはオピオイドを突然に中止することは禁忌であるが、本薬剤に関しては後述するが皮下に残存するフェンタニルが投与後にも血中へ移行するため、フェンタニルパッチをはがしても突然に退薬症状が起こるまでには通常のオピオイド徐放薬にくらべてかなり時間がかかる。しかし、時間がかかっても一定以上のフェンタニル濃度の低下によって退薬症状は出現する可能性が十分にあるため、処方枚数および残薬の枚数などに関してつねにチェックをするなど、説明が必要である。 ,緩和医療学(2002),4,2,108 #1 【5.3】:31 フェンタニールパッチの減量・中止 神経ブロックによる急激な疼痛の改善によって、フェンタニルパッチの投与を中止する場合、退薬現象の出現を予防するため1/4〜1/2ずつ減量する。 ,ターミナルケア(2003),13,1,21 #1 【5.3】:32 フェンタニールパッチは、麻薬扱いなので、使用後のパッチは麻薬の空アンプルと同様に、薬剤部で回収され、確認後に破棄される。また、破損して薬剤貯蔵層からフェンタニールが漏れ出した場合には、漏れた薬剤を拭き取ったものといっしょにして、パッチを薬剤部に返却する。 ,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,85 #1 【5.3】:33 パッチに傷がついて、介護者または患者がパッチ内のゲルに触れた場合には、まず大量の水で流すことが大切である。その際、石鹸、アルコールなどを使用すると薬剤の吸収を高めてしまうため、使用すべきではない。 ,緩和医療学(2002),4,2,109 #1 【5.3】:34 フェンタニルパッチは、使用後であっても3〜4割程度のフェンタニルが残存している。小児がいる家庭では、パッチを噛んだり舐めたりしないように保存、廃棄に十分注意する。直接薬液を舐めた場合には致死的である。 ,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,83 |
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