| 【5.7】「リン酸コデイン」 | |
| 【5.7】:1 現在、癌における疼痛治療にモルヒネは不可欠となってきたが、麻薬投与に対する抵抗感、麻薬中毒に対する不必要なおそれと不安が、患者側はもとより医療者側にも根強く残存していることも事実である。 このような観点からWHOの3段階癌疼痛治療指針を見直すと、その第2段階である弱い作用のオピオイドであるコデインによる治療の適応となる症例は実際より多いと推察される。 (処方の実際) WHOでは、リン酸コデイン1回30〜130mgを1日4〜6回服用(必ず非オピオイド系鎮痛薬を加える)としている。 (例1) (第1回目の処方) リン酸コデイン 30mg(高齢者では20mg) ピリナジン 500mg 以上1回分。1日4回(食後と就寝前) 投与開始後12〜24時間以内に患者の反応を問診する。維持量が決まるまでは1〜3日分の処方とし、その患者の痛みが十分除かれるまで増量する。 リン酸コデインの増量の方法は、1回30(20)→40→50→60→80→100mgとする。併用するアスピリンなどは一定としておいたほうが、リン酸コデインの鎮痛効果が判定しやすい。 1日量80〜300mgでコントロールされる例がほとんどである。鎮痛効果の有効限界は1日量で500〜600mgであるが、経験上300mgを超える頃よりモルヒネ製剤への転換を考慮するとよいようである。本段階に固執するあまり、鎮痛が不十分のままの状態におかぬよう注意も必要である。 なお、経口投与においては、リン酸コデイン30mgはアスピリン650mgとほぼ同等の鎮痛効果を有する。 (副作用) リン酸コデインはモルヒネと同じオピオイド系鎮痛薬であるので、出現する副作用の種類もモルヒネ使用時と同様である。しかし、その発生頻度はモルヒネ使用時より少ないと思われる。その処置はモルヒネ使用時と同様である。 (治療効果) 報告では、この段階で治療された例の約30%は本法のみで完全に除痛され、約14%は不完全ながら十分満足のゆく鎮痛が得られていた。残りの約6割の症例では、一度良好な鎮痛を得たものの再び増強したり、リン酸コデインを増量しても満足のゆく鎮痛が得られず、WHO方式の第3段階に移行した。 (モルヒネへの移行) リン酸コデインの鎮痛効果はモルヒネの約1/6〜1/12程度であるので、本剤からモルヒネ製剤への移行時にはこの値を考慮するが、リン酸コデイン300mg/日以下の状態でモルヒネ製剤に移行する場合には、モルヒネ製剤60mg/日からはじめて良好な鎮痛を維持している。 ,臨床と薬物治療(1990),,58,89 #1 【5.7】:2 リン酸コデインは、原末、10および100倍数、20mg錠に加え、桜皮エキスを含有する液剤(10mg/mL)も人手可能で、鎮痛目的に使用する場合は1回量として30mg以上の投与を必要とし、ceiling effectは130mg/回ほどである。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,222 【5.7】:3 リン酸コデインで十分な除痛が得られている場合でも、4時間ごとの投与を繁雑と感じる場合がある。この場合はMSコンチンへの移行を考えた方がよい。この場合でも、いったんモルヒネの水溶液の4時間ごとの投与を経てからMSコンチンへ移行した方が安全である。なぜなら除痛力価を等しくした量のリン酸コデインとモルヒネにも除痛効果や副作用に相違がみられるためである。 ,がん患者の痛みの治療(1994),,,57 #1 【5.7】:4 わが国において、WHOによる3段階疼痛治療法は医療従事者に対してかなり普及したが、一般市民への普及は十分ではない。麻薬に対する不安や恐怖心は依然として強く、「モルヒネは安全な優れた鎮痛薬です」との説明を受け入れない患者も多い。激しい痛みに苦しみながらもモルヒネを強く拒否する患者に対しては、リン酸コデインの服用を勧めている。 「薬局でも市販されている咳止め薬です。何年も服用している結核の方もいますが、中毒になることはありません。」 また、痛みが若干でも緩和されれば次のように説明している。「薬局の咳止め薬に含まれているものですが、病院では麻薬として取り扱います。」 「リン酸コデインは痛みも取りますが、咳を止める作用が強い薬です。一方、モルヒネは咳も止めますが、痛みを止める作用が強い薬です」「リン酸コデインは体の中で一部がモルヒネになることも研究からわかってきました。○○さんの痛みにあった痛み止めを試してみませんか? 痛みはずっと楽になると思います。」具体的な説明方法の1例を記述したが、コデインはあくまでも麻薬に対する不安を払拭し、スムーズにモルヒネヘ移行するためのステップと考えている。 ,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,250 |
|
![]()
Copyright 1997-2003 Akira Dobashi, Department of Pharmaceutical Information
Science (formerly, Department of Structural Organic Chemistry).All rights
reserved. |