【6.2】「鎮痛補助薬」
  #1
【6.2】:1
 日本緩和医療学会の作成したEvidence-Based medicineに則ったがん疼痛治療ガイドラインでは鎮痛補助薬を、鎮痛目的で使用する第1種鎮痛補助薬と、それ以外の緩下薬や制叶薬などの第2種鎮痛補助薬に分類している。このうち第1種鎮痛補助薬は「オピオイドよリ鎮痛作用の確実性が劣り、副作用があるため、オピオイドを至適投与量まで増量しても鎮痛効果が得られないときに使用を考慮する」とされ、その使用開始の目安は「モルヒネ経口投与で120mg/日を越えたとき」である。WHO編「がんの痛みからの解放」第2版で鎮痛補助薬の使用が明言される以前は、鎮痛が得られるまで増量することでモルヒネ投与量が1000mg/日を超える症例も少なからず経験した。しかし、鎮痛補助薬に関する知見が蓄積されるにつれ、鎮痛の主体であるモルヒネなどのオピオイド投与量はむしろ減少傾向にある。前述の目安量も今後、鎮痛薬に関する基礎的研究が進み、癌性疼痛治療の選択肢が広がるにつれ変更はありうるであろう。
,ペインクリニック(2002),23,12,1641

#1
【6.2】:2
 癌性疼痛への鎮痛補助薬使用の原則
 (1)必ず鎮痛薬と併用する。慢性疼痛と異なり、癌性疼痛への単独使用はない。
 (2)鎮痛補助薬開始後も鎮痛薬を中止してはならない。ただし鎮痛効果増強による結果的な減量はある。
 (3)鎮痛補助薬の選択は疼痛機序を推測して行う。
 (4)多剤併用を避け、単剤に対し効果判定と副作用の監視を繰り返し行う。
 鎮痛補助薬と併用される鎮痛薬は基本的にはオピオイドだが、痛みの性質によってはWHO鎮痛ラダーのすべての段階が適応される。癌性疼痛への薬物治療は多剤併用に陥りやすく、効果判定なしでは患者の苦痛と薬物治療への不信につながる。鎮痛補助薬も同時に多剤を開始せず、単剤を効果の得られるまで増量する。増量後の効果判定には血中濃度安定までの十分な期間(薬物半減期の4〜5倍以上)をとリ、有効性が確認できないか副作用が強ければ投与を中止する。抗痙攣薬や抗不整脈薬では至適投与量の推測と副作用予防に血中濃度測定が一助となる。鎮痛補助薬が有効な場合でも、併用する化学療法や放射線治療、外科的治療が奏効すれば、鎮痛薬同様に減量、中止が可能である。
 鎮痛補助薬の投与の継続は、常に患者のQOLに寄与するかどうかの相対的な評価で決定される。これまでに報告された鎮痛補助薬の有効率は薬物選択が適切としても8割を超えない。効果に過大な期待をしてはならず、漫然と投与すべきではない。しかし、治療者の選択肢に鎮痛補助薬があるかないかで、癌性疼痛冶療の質は大きく異なる。
,ペインクリニック(2002),23,12,1642

#1
【6.2】:3
 鎮痛補助薬は効果を得るための投与量がある程度示されている。少ない量で長期間維持したり多剤併用をしても効果的ではない。効果がない場合には中止して薬剤を変更するのが原則である。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,100
     
  【6.2.1】「鎮痛補助薬選択法」
   

#1
【6.2.1】:1
 鎮痛補助薬の選択。淀川キリスト教病院ホスピスの経験では、オピオイドが投与されている末期癌患者では、副作用である眠気が出現しにくい抗不整脈薬を第一選択としている。それが不十分なときには、ケタミン、抗痙攣薬、抗鬱薬を用いる。また、予後との関係をみてコルチコステロイドを併用する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,59

#1
【6.2.1】:2
 ニューロパシックペインに対する鎮痛補助剤の考え方。痛みの性質で間欠的な痛みに対しては抗痙攣薬、持続的な不快な痛みには抗鬱薬を投与するという考え方が一般的であるが、鎮痛効果発現期間も考えると、即効性が期待できる抗痙攣薬をまず投与することが有効である。モルヒネの鎮痛効果の増強も期待することができる。それでも効果が薄い場合には、モルヒネに抗痙攣薬、抗鬱薬を併用する。ニューロパシックペインは治療が困難であることが多く、鎮痛補助薬の一種類だけ併用するのみでは不十分であることが多い。このほかに抗不整脈薬、NMDA受容体拮抗薬を重ねていくことも必要であることがある。そして、それでも不十分なとき、局所に限定されている場合には神経ブロック療法を組み合わせていくべきである。ポイントとしては、同じ作用機序を持つもの、同じ受容体に働く薬剤は併用しないことも重要である。
,ターミナルケア(2002),12,6,452

     
  【6.2.2】「ドラッグチャレンジテスト」
    【6.2.2】:1
 モルヒネが効く痛みかどうかはモルヒネの1mgテスト静注がよい。30分〜1時間後に痛みの変化を聞いてみて、痛みが軽減、消失するならモルヒネに反応する痛みであるので、通常の手順でモルヒネを投与してゆけばよい。1mgでは重篤な副作用が起きる事は皆無である。
,平賀先生(国立がんセンター病院)講演より

 
【6.2.2】:2
 モルヒネが効果のある痛みであるかどうかの判定はモルヒネの1mg静注テストがよい。このとき、仮に1時間の除痛が得られたとすると、単純計算では1日24mgの静注モルヒネ量でよいことになり、経口に要するモルヒネ量は約60mgとなる。だいたいの場合、これで正解である。
,Cancer Pain Symposium in Tokyo(1994) より

#1
【6.2.2】:3
 強い痛みの際の対処法としては、ドラッグチャレンジテストでモルヒネ量を決定するやり方がある。 塩酸モルヒネ20mg+生理食塩水18m1溶液を作製し、2 mg/mlずつ静注し、 VASが3以下になるまで、5分ごとに繰り返す。嘔気、呼吸抑制(10回以下/分)がみられたらその時点で中止する。要したモルヒネ総量の4倍を1日あたりに注入する量として、持続注入(静注、皮下注)を開始する。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,12

 
【6.2.2】:4
 現在の痛みがモルヒネが効く痛みかどうか判定するには、モルヒネの内服治療が行われている場合、1日のモルヒネ量の1/6のモルヒネ水を追加で内服させるか、1/30〜1/20量のモルヒネを注射して、痛みの推移を観察する方法がよい。モルヒネ持続注射を行っている場合は、1/24〜1/12のモルヒネ量を単回注射して、痛みが軽減するか否かを観察する。
,がんの症状マネジメント(1997),,,111

*5
【6.2.2】:5
 癌の痛みはモルヒネの有効な侵害性疼痛やモルヒネに抵抗性のニューロパシックペインがある。その疼痛発生機序や、疼痛維持の機序が鑑別診断されればそれに見合った治療法も選択的に適応できると考えられる。このような場合、鎮痛に関する薬物を少量ずつ静脈内に投与し、疼痛の消長を観察することによりその疼痛の機序を推察し、治療法に応用しようとする薬理学的検査がドラッグチャレンジテストである。モルヒネに抵抗を示す痛みの治療方針を決定する際に補助となる診断法である。

・(ドラッグチャレンジテストの意義)
 用いられる薬物には、フェントラミン、バルビツレート、ケタミン、リドカイン、モルヒネがある。これらの薬物を用いる意義を簡単に述べる。

(1)フェントラミン:αアドレナージック受容体拮抗薬であるので、痛みに交感神経や循環しているカテコラミンが関与しているかどうかの判定に用いる。

(2)バルビツレート:痛みに中枢性または心因性機序があるかどうかの判定に用いる。

(3)ケタミン:NMDA受容体が痛みの発生、維持に関与しているか、または中枢性機序があるかどうか調べる。

(4)リドカイン:損傷された神経繊維や、その神経細胞における異所性異常活動を調べる。

(5)モルヒネ:痛みが侵害性疼痛かどうかを調べる。

・(方法)
a.手順
(1)適当な輸液剤で静脈を確保する。テストは1日1薬物とする。

(2)各薬物投与前にプラセボ効果を見るため生理食塩水を薬物と同量2回静脈内投与し、生理食塩水投与1分後、5分後に痛みの程度を10段階で記録する。

(3)その直後にテスト薬物を5分間隔で追加投与し、投与1分後、5分後のVAS(視覚的アナログ評価尺度)を記録する。

(4)痛みが0にならない場合は追加投与。

 薬剤の投与量はフェントラミンは1回5mg、チアミラールナトリウム(バルビツレート)は1回50mg、モルヒネは1回3mg、ケタミンは1回5mgをそれぞれ3回まで用いる。

・リドカインテスト
 リドカインテストは生理食塩水を2回投与した後、まず1mg/kgを単回静脈内投与し、引き続いて1mg/kgの量のリドカインを30分かけて点滴静注しつつ、多の薬物と同様な時間間隔で痛みの程度を調べる。

・モルヒネテスト
 モルヒネテストに反応した例では最終判定の5分後にナロキソン0.2mgの静注を行い痛みが再発することを確認する。

b.判定
 テストの結果の判定は、鎮痛効果を薬剤投与開始の痛みを10としたペインスコアで表し、それが0〜2になったものを++、3〜6になったものを+、7から9になったものを±とする。

c.結果とその後の治療法の選択
 これらのテストの主な目的は、テストの結果を治療に反映させることであり、各テストの陽性例に対する治療法、適応薬物は以下の通りである。

フェントラミンテスト:交感神経節ブロック、局所静脈内交感神経遮断法
チアミラールテスト :ラボナの内服、脊髄・脳電気刺激療法
ケタミンテスト   :ケタミン持続点滴療法、デキストロメトルファンの内服、脊髄・脳電気刺激療法
リドカインテスト  :リドカイン点滴療法、メキシチール内服
モルヒネテスト   :オピオイドの内服、知覚神経ブロック、消炎鎮痛薬の内服
,緩和医療(1999),1,2,42(,疼痛治療の現状と展望(2000),,,32の内容により一部改変)

*5(注:ここでは、デキストロメトルファンの内服を勧めているが、この薬剤による鎮痛効果はあまり高くなく、鎮痛効果を現す量を服用すると、副作用が現れてしまうという報告や、ケタミンの内服により鎮痛効果が得られたとする報告もある)

#1
【6.2.2】:6
 ドラッグチャレンジテストのうちモルヒネテストにおいて、以前は最後にナロキソンを使用して、痛みが再び増強することを確認していたが、モルヒネ投与後、時間をおいてさらに疼痛軽減の得られる症例の多いことから、最近ではナロキソンを投与していない。
,オピオイドの基礎と臨床(2000),,,50
     
  【6.2.3】「国立がんセンター中央病院鎮痛補助剤選択法(4段階ラダー)」
    #1
 国立がんセンター中央病院では鎮痛補助薬を必要とする痛みの治療に、病院独自のガイドラインを作成することで対応している。鎮痛補助薬の選択基準を、WHOの提示する癌疼痛治療法の3段階ラダーにならい下記の4段階としている。さらに、各段階での薬剤を固定することで鎮痛補助薬の使用を積極的に行えるようにしている。
  第1段階 クロナゼパム【適応外】
  第2段階 アモキサピン【適応外】またはノルトリプチリン【適応外】
  第3段階 メキシレチン【適応外】またはリドカイン【適応外】
  第4段階 ケタミン【適応外】
 第1段階として、他の薬剤に比べ使用制限の少ないクロナゼパムを使用する。クロナゼパムは血液障害などの重篤な副作用が少なく、また、心疾患や緑内障、排尿障害などを意識せずに使用できる。投与初期は夜間の睡眠障害にも有効で、除痛効果の発現も早い。クロナゼパムが有効な症例では、投与初日から痛み、しびれの軽減がみられることが多い。当院では、1回0.5mg(就寝前)を初回量とし、症状の改善を観察しながら徐々に増量し1回0.25〜1mgを1日3〜4回まで増量している。特に日中の服用においては、1回0.25mg位の増量にするとめまい、ふらつき、運動失調などの副作用が少ない。
 クロナゼパム単独で十分な効果が得られない場合、第2段階としてアモキサピンまたはノルトリプチリンを単独またはクロナゼパムとの併用で投与する。アモキサピンは三環系抗鬱薬の中では抗コリン作用が軽度で、作用発現も投与後2〜3日と早い。 50mg/分2/日から投与を開始し、通常50〜75mg/分2〜3/日で効果が得られるが、必要により150mg/分3/日まで増量できる。アモキサピンが使用できない場合にはノルトリプチリンを使用する。ノルトリプチリンはアミトリプチリンに比べ鎮静作用や抗コリン作用、心毒性が少ない。投与法・投与量については前述の抗鬱薬に準ずる。当院の経験では、開胸後痛症例のほぼ80%に、第2段階までの薬剤投与により患者からの満足を得ている。
 第3段階の薬剤はメキシレチンまたはリドカインを使用している。メキシレチンは抗不整服薬のなかで比較的安全に使用できる薬剤であり、2000年7月に「糖尿病性神経障害に伴う自覚症状(自発痛、しびれ感)の改善]の適応が追加されている。眠気、便秘の副作用がなくモルヒネとの併用には好都合であるが、効果発現に高用量を必要とすることも多いため第3段階で使用している。当院での投与量は、150mg/分3/日から投与を開始し、必要により600mg/分3/日まで増量している。
 メキシレチンの投与でもコントロールできない場合、第4段階としてNMDA受容体格抗薬であるケタミンを患者の状況により持続静脈投与、持続皮下投与または経口投与で使用している。鎮痛補助薬としての投与量は麻酔量の1/5程度で、持続静注での投与量は0.1〜0.2mg/kg/hrである。経口投与では200mg/分4/日が効果的である。副作用として注射では眠気、ふらつき、めまい、悪夢、混乱などが、経口では吐き気、ふらつき、浮遊感、非現実感などがみられることがある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,161
     
  【6.2.4】「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」
    #1
【6.2.4】:1
 癌緩和医療におけるNSAIDsの意義
 癌疼痛は、侵害受容性疼痛・神経因性疼痛・交感神経の関与する痛みなど、さまざまな発痛メカニズムの集合体であるが、その主軸は末梢の侵害受容器が化学的(炎症)あるいは物理的(圧迫)に刺激されて生ずる侵害受容性疼痛である。この侵害受容性疼痛は、NSAIDsの末梢性鎮痛とオピオイドの中枢性鎮痛の“ダブルブロック”により効果的に鎮痛を得ることができ、これがWHO方式の基本的な戦略でもある。
 したがって、癌緩和医療におけるNSAIDsの第一の意義は、末梢性発痛メカニズムが関与している侵害受容性の癌疼痛の緩和におけるNSAIDsの有用性にある。これは海外での大規模臨床試験でほぼ実証されている。固形癌は必ず炎症と炎症性浮腫を随伴しており、これが侵害受容器に炎症性の化学刺激と圧迫刺激を与えていると思われるが、とくに骨転移巣では炎症が強く、骨転移痛に対してNSAIDsは、適切なオピオイド療法と併用することで効果的な鎮痛がもたらされるという報告が多い。
 NSAIDsを癌疼痛治療に用いる意義として、オピオイドの減量効果(とそれによるオピオイドの副作用の軽減)は以前より報告されており、その意義を認めるにやぶさかではない。しかし、オピオイドの副作用対策は長足の進歩を遂げており、筆者は、癌疼痛治療におけるNSAIDsは、オピオイドと併用して鎮痛効果を強化するとともに“鎮痛の質(quality of analgesia)の向上”をもたらす薬物としてこそ大きな意義があると考えている。
 オピオイド単独療法では「痛みは楽にはなったが、今ひとつジクジクした鈍い不快感があってすっきりしない」(患者さんの言葉)という状態が、NSAIDsを併用することで「すっきりと切れ味よく痛みが軽くなった」(患者さんの言葉)という患者さん自身の評価を数多く得ている。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,56

#1
【6.2.4】:2
 癌緩和医療に用いるNSAIDsの条件
 癌終末期では、全身状態が日々緩やかに(ときには急速に)悪化していくことから、癌緩和医療に用いるNSAIDsの条件としては、全身状態の悪い人にも安全に用いることができ、消化器あるいは腎臓に対する副作用が少ないことがあげられる。癌緩和医療領域におけるNSAIDs選択に際しては、各NSAIDsの鎮痛・抗炎症・解熱の三作用のバランスに注目する必要がある。全身状態の悪い人や高齢者で、解熱作用の強力なNSAIDsを多めに用いたとき、循環系が非常に不安定になったり、ときにはショック状態(低体温性ショック)に陥ることは臨床現場ではよく知られていることである。したがって、鎮痛・抗炎症には効果的だが、解熱作用についてはむしろ強すぎないか弱いものが、癌緩和医療において使いやすいNSAIDsの重要な要件である。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,56

#1
【6.2.4】:3
 NSAIDsを使用する場合は胃腸障害の少ないレリフェンまたはハイペンのいずれかをベースとして、疼痛増強時ボルタレン25 mg坐剤を適宜併用する。いずれを処方する場合でも、NSAIDsを使用する際には、必ずNSAIDsによる胃粘膜障害の予防薬として、サイトテック(ミソプロストール1錠200μg)3錠分3(毎食後)あるいは4錠分4(毎食後と寝る前)を併用する(サイトテックはPG製剤であり、子宮収縮作用により流産することがあることと、下痢をきたしやすいという副作用がある。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,62

#1
【6.2.4】:4
 非オピオイド(NSAIDs)使用上の注意事項
(1)軽度から中等度の癌性疼痛に対しては非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)かアセトアミノフェンを使用する。
(2)NSAIDsには有効限界(ceiling effect)があるため、最大投与量以上に増量したり、複数のNSAIDsを併用すべきではない。
(3)NSAIDsは、炎症を伴う疼痛、皮膚転移痛、骨転移痛などに有効で、オピオイドとの併用により相加的効果以上の鎮痛効果が得られる。
(4)経済的で簡単な経口投与を基本とし、それが困難な場合には坐薬や注射投与も考える。
(5)NSAIDsの投与に際しては、胃腸粘膜障害、血液凝固抑制、肝障害などの副作用に充分注意する。消化性潰瘍などの粘膜障害に対する予防としては、H2阻害剤、プロトンポンプ阻害剤、misoprostolが有用である。
,緩和ケアテキスト(2002),,,43

 
【6.2.4】:5
 非ステロイド性鎮痛薬の坐薬をアンペックと同時に使う場合は、油脂性基剤のものを選ばないとアンペックの効果が落ちる。(ボルタレン坐は油脂性だからよいが、インダシン坐薬は水溶性のためモルヒネの吸収が落ちる)
平賀先生(国立がんセンター病院)講演より

 
【6.2.4】:6
 非ステロイド性消炎鎮痛薬には天井効果(増量しても鎮痛効果は増加せず、副作用のみ増加すること)があるので、臨床的にはアスピリンで1日4gまで、ボルタレンでは1日100mgまでとする。
,今月の治療(1996),4,4,14

*5
【6.2.4】:7
 癌患者に骨転移痛があるときの緊急な痛みのコントロール法として、アスピリン 300〜900mgを4〜5時間毎(1日最大4gまで)、またはナイキサン500mgを1日2回、またはメナミンの徐放錠200mgを1日2回使用する。
,緩和ケア実践マニュアル(1996),,,32

*5
【6.2.4】:8
 NSAIDsの選択基準として、経済性からブルフェン、強さからナイキサン、インダシン、消化管障害はレリフェン、オステラック。腎障害にはレリフェン、クリノリル、皮膚障害(発疹以外)が現れたらフェルデン、アスピリンを選択する。
,ターミナル・ケアの症状緩和マニュアル(1998),,,35

#1
【6.2.4】:9
 NSAIDsは、炎症を伴う疼痛、皮膚転移痛、関節痛、骨転移痛には特に有効であると考えられているが、最近内臓痛にも効果があることが報告されている。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,41

*5
【6.2.4】:10
 複数のNSAIDsを組み合わせることで、一種類あたりの投与量を減らし、副作用を軽減することはできない。NSAIDs同士の多剤併用はかえって鎮痛効果を減弱させると考えられ、副作用発現率も高くなる可能性が高い。仮に頓用であっても、経口投与に坐剤や注射剤のNSAIDsを併用することも同様であり避けるべきである。
,ターミナルケア(1996),6,1,8

*5
【6.2.4】:11
 骨転移の痛みでは、特定のNSAIDsがより有効であることが証明されていない。しかし、さまざまな薬剤を組み合わせても十分な鎮痛が得られない場合、NSAIDsの種類の変更が有効な可能性はある。
,ターミナルケア(1996),6,1,8

 
 

【6.2.4.a】「レリフェン」


#1
【6.2.4.a】:1
 リウマチ学や整形外科学領域でのevidenceを援用して、ナブメトン(レリフェン)が、癌緩和医療においては適当ではないかと結論づけた。その理由は、まず、副作用が非常に少ない。特に胃腸障害に関して少なくて、他の従来型のNSAIDsに比べれば1/10から1/30程度で、コキシブ(COX-2 specific inhibitor)の胃腸障害の程度に相当するという豊富なevidenceが出ている。また、2番目には腎に対する副作用も少ない。
 それから、3番目としては、従来型のNSAIDsは通常dose dependent に胃腸障害や腎障害が増えるが、ナブメトンに関しては、この点でのdose dependencyがない。それは、多施設のメ夕アナリシスのデー夕からも、ラットとかマウスを使った動物実験でもハイレベルのevidenceが出ている。
 それともう1つは、全身状態のよくない癌患者では、鎮痛と抗炎症作用というのはきちんと出してほしいが、解熱作用はあまりほしくない。ナブメトンの鎮痛・抗炎症・解熱のバランスをみると、解熱作用が非常に弱い。これは、癌患者にかかわらず、全身状態のわるい人にとってはとても大切なポイントで、たとえばジクロフェナクのような、非常に強力な鎮痛作用をもちながら、同時に非常に強い解熱作用をもっている薬を使うと、循環動態ががたがたになってしまったり、あるいは低温性ショックといわれている状態になる。
 そういう意味で、鎮痛・抗炎症・解熱のバランスがとても大切で、ともかく鎮痛と抗炎症はそこそこに、しかし解熱は少なく、なおかつ長期間副作用なく安心して用いることができる、そういうNSAIDsの選択を進めたところ、ナブメトンが第一選択で、エトドラクが第二選択になるかというのが現在の考えである。
,非ステロイド性抗炎症薬の選択と適正使用 改訂第3版(2002),,,13

#1
【6.2.4.a】:2
 レリフェン(ナブメトン)は、リウマチ治療領域においてではあるが、連用しても胃腸障害が非常に少なく(セレブレックスと同程度)、増量しても他のNSAIDsのように用量依存性に副作用の頻度が増加することなく、かつ高齢者にも安全性が高いという点においてハイレベルのエビデンスを有する唯一のNSAIDsであり、従来、そして今日も欧米で高く評価されている。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,62

#1
【6.2.4.a】:3
 癌緩和医療におけるNSAIDsの条件(消化器、腎に副作用が少なく鎮痛・抗炎症に比し解熱が弱い)をナブメトン(レリフェン)についてみてみると、ナブメトンは鎮痛作用を1とすると、抗炎症作用はその4.48倍と高く、解熱作用は0.84倍と弱いことを示す報告がある。穿孔、潰瘍、出血といった重大な胃腸障害の発現率については、従来型のNSAIDsと比較して有意に低いことが報告されている。また、ナブメトンはプロドラッグで、製剤自体は非酸性である。さらに、腸肝循環がほとんどないため消化管粘膜に直接障害がないという特徴を有する。消失半減期が20時間程度であるため1日1回ないし2回の内服で安定した効果を期待できるので、服薬コンプライアンスがよい。これらの製剤学上の特徴に、先に述べたエビデンスを合わせ考えると、全身状態に不安のある癌終末期の人に対しても、内服可能な限り安心して長期にわたり連用可能なNSAIDsであると筆者は評価している。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,56

#1
【6.2.4.a】:4
 箕面市立病院・緩和ケアセンターでは、ナブメトンの有する特徴ならびに最近4年間の使用経験に基づき、癌緩和医療におけるNSAIDsの処方として、内服可能な人には「適切なオピオイド療法に加え、ナブメトン1600mg/日を朝夕2回に分けて与薬し、この際、NSAIDsによる胃腸障害の既往のある人にはミソプロストール(サイトテック)を併用する。ナブメトンの代替薬としては、エトドラク(ハイペン、オステラック)400mg/日を朝夕2回分服」というプログラムを実施している。また、オピオイド療法のレスキューと同様の考えから、痛みの増強時には速効性で短時間作用性のジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)をレスキューとして別途頓用で処方している。ジクロフェナクナトリウムはNSAIDsのなかでは最強の鎮痛作用を有し、かつ速効性ではあるが、解熱作用も非常に強力であるので、全身状態に応じて少なめに処方している(25mgまたは12.5mg坐剤、あるいは25mg錠)。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,57

#1
【6.2.4.a】:5
 平均的日本人成人に対して、教科書通りのハイペン(200mg)2錠、レリフェン(400mg)2錠/日、分2は絶対的に量が不十分である。最初から3錠分3または、眠前2錠+朝食後1〜2錠の分2にすることを勧める。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,22

 
 

【6.2.4.b】「ロピオン」


#1
【6.2.4.b】:1
 ロピオンはNSAIDsのうち唯一の注射剤である。脂肪乳剤化製剤であるため投与法には注意が必要である。脂質に包まれた構造単位が、炎症組織に効率よく薬剤を炎症層に供給するように設計されている。
 投与回数の設定はないが、定期的な投与によって鎮痛を維持する場合には、半減期(5.8時間)を考慮しても1日2〜3回以上の投与が必要である。
 脂肪乳剤化製剤であるため持続点滴は困難と考えられがちであるが、術後痛に対してロピオン100mgを生理食塩水30mlで希釈後24時間の持続静注を行い、鎮痛効果に問題がなかったとする報告がある。また、維持輸液との混合では配合変化は認められないと考えられている。脂肪乳剤化製剤は、主に2価のイオン(特にカルシウムイオン)が多いと乳化破壊を起こしやすい。
 在宅ではロピオンの使用は避けられてきたが、維持輸液に混合し24時間以内に使用すれば問題はない。
 高カロリー輸液との混合では、脂肪乳剤化製剤(イントラリポスなど)は3〜6時間で凝集や分離を認めたとする報告と、24時間で若干の変化が見られたとの報告があり、結論は出ていない。ロピオンでの報告はない。
 ロピオンの基本単位の直径は平均で0.2μmであるため、通常のフィルターではサイズ的な問題はないが、フィルターヘの吸着によって含量の低下や目詰まりを生じる可能性がある。現在のところは1.2μmの脂肪乳剤用のフィルター以外での使用は避けるべきである。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,23

 
【6.2.4.b】:2
 骨転移の痛みに対してはロピオンの注射が非常によく効く。ヴェノピリンと同等か、もう少し効果があると思われる。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,87

 
【6.2.4.b】:3
 小児・老人などのプアリスク患者に対する処方として、ロピオン(50mg)2Aを生理食塩水100mLで希釈し25mLずつ1日4回に分けて点滴静注するという方法がある。
,今月の治療(1996),4,4,29

 
【6.2.4.b】:4
 NSAIDsが効く疼痛であるかどうかの判断にはロピオンのワンショット静注がいい。
,今月の治療(1996),4,4,74

 
【6.2.4.b】:5
 ロピオンは従来の注射剤に比べて、血圧低下は少ないとされている。静注時、特有の臭いや味を訴える場合があり、そのようなときには生食20〜50mLに溶解して投与すると良い。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,26
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,38

*5
【6.2.4.b】:6
 ロピオンによる嘔気・悪寒などの発現は、投与速度よることが大きい。また、アルブミン製剤と凝集を起こすので、同一カテーテルを介して注入する場合も注意を要する。
,ターミナルケア(1996),6,1,20

*5
【6.2.4.b】:7
 脂肪乳剤にロピオンを3〜4アンプル混入させたものをIVHの側管から24時間かけて点滴投与する方法も、発汗が少なく鎮痛効果が安定しているので、患者に好評である。
,ターミナルケア(1996),6,1,37

#1
【6.2.4.b】:8
 フロベンとロピオンは同成分である。しかし、ロピオンは注射剤で、かつプロドラッグであり副作用が少ないとされているが、フロベンは経口薬であり、副作用の点で同等性は期待できない。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,22
     
  【6.2.5】「アセトアミノフェン」
    【6.2.5】:1
 非オピオイド鎮痛薬にはNSAIDsとは別にアセトアミノフェンもあげられている。この薬剤には解熱鎮痛作用はあるが、抗炎症作用はほとんどない。また、胃への障害は生じないが、用量依存的に肝機能障害を生じるため注意が必要。日本バプテスト病院ホスピスでは1500〜2000mg/日を標準投与量としている。本剤は鎮痛効果がある程度投与量に依存するため、投与量の増量が可能である。
,がんの症状マネジメント(1997),,,37

#1
【6.2.5】:2
 アセトアミノフェン
 わが国で示されている常用量は海外と比べて極端に少なく、癌疼痛治療では有効な鎮痛が得られない。Team KANWAでは1回700〜900mgを1回量、投与間隔6〜8時間、1日投与量2700〜3600mg、1回最大投与量1000mg、1日最大投与量4000mgの基準にしている。
 イギリスでは4時間ごとに1000mg( =1日、6000mg)までとされ、米国厚生省では650mgを4時間ごと、または975mgを6時間ごとの投与とし、1日量3900mgまでを基準投与量としている。
 肝機能障害は1回投与量で250mg/kg(60kgの患者で15000mg)以上とされているが、国内資料では1回7500mgまたは150mg/kg (60kgの患者で9000mg)と大きな開きがある。もっとも少ない致死量の報告は本邦では2400mg(1例)であるが、それ以上の量での生存報告も多い。通常の使用ではきわめて安全性の高い薬剤である。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,29

#1
【6.2.5】:3
 アセトアミノフェンは1回投与量300mgに比べて500〜600mgの方が明らかに鎮痛効果が強まるが、1000mg以上では必ずしも効果は増強しない。
,今月の治療(2000),8,3,36

*5
【6.2.5】:4
 アセトアミノフェンの有効作用時間は4〜6時間であり、適切な鎮痛には4〜6回、4〜6時間毎の投与が必要である。
,ターミナルケア(1996),6,1,21

#1
【6.2.5】:5
 NSAIDsは血小板減少症や止血機能異常のある患者には投与すべきではない。アセトアミノフェンには、この作用はないため代替薬として使用できる。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,40

#1
【6.2.5】:6
 アセトアミノフェンは内服4時間後の血中濃度が200μg/mL以上の時に、重篤な肝障害を引き起こすことがある。本剤は腎障害を引き起こすことは極めて希である。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,42

 
【6.2.5】:7
 アセトアミノフェンは末梢性鎮痛作用と解熱作用に関してはアスピリンに匹敵するが、胃腸障害を起こさないので使用しやすい。非ステロイド系消炎鎮痛薬とは異なり抗炎症作用はない。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,79

 
【6.2.5】:8
 特別な場合として、ナプロキセンで安静時の痛みがほとんど消失したが、体動時の痛みがごくわずかに残る程度の痛みの場合に、アセトアミノフェンを追加投与することがある。
,がんの症状マネジメント(1997),,,38

*5
【6.2.5】:8
 他のNSAIDsと比較した場合のピリナジンの長所は、血小板に対する影響がないことで、血小板減少症の患者にも使いやすい。また、相対的に安価である。
,癌性疼痛治療のガイドライン(米公式)(1998),,,42

*5
【6.2.5】:10
 ピリナジンでは消化性潰瘍を生じない。アスピリンのような出血時間の延長はなく、尿酸の排泄に影響しない。アスピリン喘息患者に対する交差反応は少ない。鎮痛作用機序は不明であるが、炎症部位ではなく中枢レベルでの作用が考えられている。
,ターミナルケア(1996),6,1,21
     
  【6.2.6】「高カルシウム血症治療薬」
    #1
 以前より、エルカトニンの骨転移痛の除痛効果は種々報告され、臨床的にも応用されてきたが、最近は、ビスホスホン酸塩の除痛効果が注目され、臨床応用され始めている。エルカトニンも、パミドロン酸ニナトリウム、インカドロン酸ニナトリウムも特段の副作用がなく、状態のよくない人にも安心して使用できる。
 破骨細胞抑制薬に反応する人では、安静時痛と同時に体動時痛も緩和するのが特徴的である。その鎮痛メカニズムは今のところ不明であるが、筆者は、破骨細胞を抑制することで破骨細胞が誘導するさまざまなケミカルメデイエータの産生を抑制することと、骨の不安定性を改善することによると想像している。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,68

 

【6.2.6.a】「アレディア(パミドロン酸ニナトリウム)」


 
【6.2.6.a】:1
 アレディア【適応外】は、ホルモン療法、化学療法ないし放射線療法などの抗腫瘍治療と異なり、腫瘍細胞に直接作用するのではなく、骨病巣部における腫瘍細胞の増殖環境に影響を与えて、疼痛抑制効果及び抗腫瘍効果を発揮するという特性を有する。本療法は副作用も少なく、全身状態不良な末期癌患者にもまったく問題なく施行可能な治療法である。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,5

#1
【6.2.6.a】:2
 骨転移痛、中でも乳癌、多発性骨髄腫での骨破壊性骨転移痛に対してはアレディアで有用性が認められている。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,80

#1
【6.2.6.a】:3
 米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)の乳癌に対するビスホスホネート療法のガイドラインは、画像検査上骨破壊像が証明され、同時に限局性の痛みがあればパミドロネート90 mgを3〜4週ごとに静注することを推奨し、ビスホスホネートの鎮痛補助薬としての位置づけを明確にした。これによると、一度開始したビスホスホネート投与は全身状態(performance status)の明らかな低下をきたさないかぎり継続してよく、骨転移症状の改善や増悪は投与期間を規定する因子ではない。
,ターミナルケア(2001),11,6,436

#1
【6.2.6.a】:4
 パミドロン酸ニナトリウム【適応外】は、1週間ごとに30mgを100mLの生理食塩液に混入して30分間で点滴静注するか、2週間ごとに45mgを45分間で点滴静注している(点滴速度は1mg/分)。インカドロン酸ニナトリウム(ビスフォナール)は、2週間ごとに10mgを100mLの生理食塩液に混入して30分間で点滴静注している。パミドロン酸ニナトリウム、インカドロン酸ニナトリウムともに1ヵ月目くらいから除痛効果が現れるようである。欧米からもわが国の施設からも多数の奏効例の報告があり、とくにパミドロン酸ニナトリウムに関しては、乳癌の骨転移に伴う骨合併症の予防効果とともに、除痛効果についても有意に効果的であるとするハイレベルのエビデンスを有する研究報告が出ているが、今のところ筆者らは、ビスホスホン酸塩についてある程度の除痛効果は確認しているが、奏効したと思える事例は少数にとどまっている。現在、30例程度試行しているが、副作用は今のところ経験していない。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,68

 
【6.2.6.a】:5
 報告によると、4例の骨転移痛のため麻薬の投与を受けながらも寝たきり状態の患者にアレディア45mgを2週間に1回、効果発現後は1ヶ月に1回投与を行った。疼痛改善までの期間は1〜3ヶ月であった。中にはオピオイドの投与を必要としないほど、疼痛の改善が見られた症例が含まれており、モルヒネでコントロールできない場合に期待できる薬物療法と思われる。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,236
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,265

 
【6.2.6.a】:6
 アレディアの初回投与は30mg/bodyないし、45mg/bodyが適当である。基本的には、15〜45mg/body/weekが骨転移ないし骨浸潤による癌性疼痛に対し疼痛軽減効果が期待できる至適投与量である。欧米では90mg/bodyの1ヶ月毎投与が標準的となりつつある。投与速度は、7.5〜15mg/hourが基本とされていたが、現在は1mg/分の投与速度が頻用されている。アレディアは500mlの生食に溶解して点滴静注するのを基本とするとよい。しかし、末期癌患者で500mlの容量負荷が多すぎると思われる症例や短時間での投与を望む症例には、100ml程度の生食に溶解して投与してもかまわない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,33

 
【6.2.6.a】:7
 アレディアは溶骨性病変のみならず、造骨性病変を主体とする骨関連病巣に対しても有効である可能性が高い。とくに造骨性病変を好発する前立腺癌では、その有効性が広く認められている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,55

 
【6.2.6.a】:8
 高カルシウム血症の有無によるアレディアの疼痛軽減効果には差は見られない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,61

 
【6.2.6.a】:9
 末期癌患者において病的骨折が発生した場合、QOLの低下は著しい。このため、下肢長管骨に溶骨性病変が存在する場合には、疼痛が存在しない場合(頻度は少ない)やモルヒネ剤で疼痛制御が良好に得られている場合でもアレディアを使用する意義は大きい。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,76

 
【6.2.6.a】:10
 アレディアは代謝を受けずに腎を唯一の排泄経路とする。しかし、本剤の投与によって明らかな腎機能障害が発生したとの報告はこれまでない。さらに高カルシウム血症に対しての臨床治験データでは、高カルシウム血症の改善と相俟って血清クレアチニン値が低下し、逆に腎機能が改善したとの結果が得られている。それゆえ、腎機能障害患者では、初回投与時のみ若干投与速度を遅く(4時間程度)して注意を払う必要はあると思われるが、腎機能障害の存在そのものが本療法の適応の是非を判断する因子とはなり得ない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,43

 
【6.2.6.a】:11
 アレディアを長期に継続しても、カルシウムホメオスターシスには影響が生じないことが判明している。また、ダイドロネルで指摘されていた石灰化阻害(骨軟化症の発生)は、アレディアの場合、骨吸収抑制作用を発揮する投与量と石灰化抑制作用を発揮する投与量が近接していないため、危惧する必要はない。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,44

 
【6.2.6.a】:12
 アレディアの副作用としては、発熱、無症候性低カルシウム血症が最も一般的である。発熱の頻度は約10〜20%とされている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,41

#1
【6.2.6.a】:13
 ビスホスホネート投与における低Ca血症の発症率は、本邦の治験ではpamidronate 30 mg、45mgにてそれぞれ7.3% (3/41)、14.0% (8/57)であったが、PTHによる代償機構が働くため、ほとんどが無症候性であり問題とならない。血中Ca濃度が正常な骨転移例などへの投与においても、多くの場合、血清Ca濃度は正常下限以内にとどまり、著明な低Ca血症の発症はまれである。
,ターミナルケア(2001),11,6,445

 
【6.2.6.a】:14
 アレディアの主な副作用としては、軽度の発熱(投与後24〜36時間以内に出現し、約20%の患者で2日程度持続する)、悪心、嘔吐、低リン血症、低マグネシウム血症などの電解質異常、不整脈(短時間の投与で起こりやすい)などが報告されている。
,ターミナルケア(1997),7,2,126

 
【6.2.6.a】:15
 アレディアには肝機能障害の副作用が存在するため、肝硬変を合併する患者や肝臓転移を併発している患者にアレディアを投与する場合には、若干の注意を払うべきであるが、実際にはほとんど問題となることはないと思われる。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,17

 
【6.2.6.a】:16
 アレディアの最も問題となる副作用としては、非常に頻度は少ないものの、耳鼻科的障害があげられる。本剤を投与された耳硬化症患者に不可逆的な難聴、耳鳴りが一例ずつ報告されている。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,45

 
【6.2.6.a】:17
 アレディアとエルシトニンを比較した場合、エルシトニンにはエスケープ現象が必発であり、また疼痛軽減の効果持続時間が短い。エルシトニンには抗体産生の可能性があり、臨床的にもショックの発現が認められているが、アレディアにショックの報告はない。高カルシウム血症是正の効果発現の時間はエルシトニンの方が短い。
,癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法(1997),,,99

#1
【6.2.6.a】:18
 多発性骨髄腫の痛みにアレディアを点滴静注するとよい結果が得られることがある。高カルシウム血症の治療と言うより骨髄腫の予後の改善ということで注目している。
,今月の治療(2001),9,3,11

 
 

【6.2.6.b】「ダイドロネル」


 
 報告によると、9例の骨転移痛の患者にダイドロネル【適応外】を経口投与した。9例中5例は5mg/kg/日から投与を開始し、約3週間で良好な除痛が得られ、骨転移痛はすべての患者で緩和された。中にはオピオイドの投与を必要としないほど、疼痛の改善が見られた症例が含まれており、モルヒネでコントロールできない場合に期待できる薬物療法と思われる。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,236
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,264

 
 

【6.2.6.c】「エルシトニン」


 
【6.2.6.c】:1
 エルシトニン【適応外】は悪性腫瘍の骨転移による痛みの軽減に使われる。疼痛に対し50〜60%の改善率を示し、放射線、鎮痛薬投与によりコントロールできなかった症例にも70%の有効率がある。
,癌の疼痛治療(1989),,,52

 
【6.2.6.c】:2
 エルシトニンは、機序不明ながら癌の骨転移痛に著効を示すことがあり、これといった副作用がないこともあり、最近よく用いられている。40〜80単位を連日筋注あるいは点滴静注する。1週間連用して効果がなければ、中止する。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,112

#1
【6.2.6.c】:3
 エルカトニンは、80単位/日を午前と午後の2回に分け、各40単位を50〜100ml生理食塩液ピギーバッグに入れて30分同程度で連日点滴静注する。効果があるときは2〜3日目から、遅くとも10日目くらいで痛みが軽減することが多い。とりあえず10日間連用し、効果があればときおり休薬期間をおきながら続行、効果がなければ中止する。筆者らは奏効したと思われる症例を10数例観察している。副作用としては、ときに微熱をみるくらいである。
,臨床と薬物治療(2002),21,2,68
     
  【6.2.7】「ホルモン療法」
    【6.2.7】:1
 乳癌のホルモン療法は抗腫瘍効果とは別に、骨転移に対する除痛作用(3〜4割の奏効率)もあり、副作用も少ない。具体的には閉経前の患者では卵巣摘出が一般的に行われている。閉経後患者ではノルバデックス(20mg/日)が第一選択である。卵巣摘出あるいはノルバデックスが無効となれば、次には、ヒスロンH(800〜1200mg/日)を第2選択のホルモン療法として用いる。ヒスロンHが無効となれば、次は化学療法へと移行していく。
 ホルモン療法としてノルバデックスを投与すると初期(1〜2週間)に痛みが悪化する場合があるが、このまま継続すると癌の退縮がみられる。良い兆候なのでやめてはならない。ヒスロンHも同じ。
,癌の痛みハンドブック(1992),,197

*5
【6.2.7】:2
 乳癌ではヒスロンHが骨転移による痛みに長期の緩和をもたらす。反応する患者は、1〜2週以内に改善が認められ、1ヶ月以内に最大となる。腫瘍拡張の時期には、他の手段による充分な鎮痛を与えるべきである。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,13

*5
【6.2.7】:3
 骨転移痛のホルモン療法は、特に前立腺癌や乳癌などに有効な場合がある。ホルモン療法に対し過去に良好な反応を示した乳癌患者は、2回目にも良好な反応を示しやすい。ホルモン療法は、結果を得るために数週間を要し、その間、鎮痛薬のカバーが必要である。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,254

*5
【6.2.7】:4
 広範な骨転移を示す乳癌に対するホルモン療法の開始後2週間以内に、一過性の高カルシウム血症を示す場合がある。ホルモン療法の開始後数日以内に血清Ca値の上昇と骨痛の増強を認める場合がある。通常、ホルモン療法に対する患者の良好な反応を示唆する。高カルシウム血症が是正されるまで、ホルモン療法を一時的に中止する。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,262
     
  【6.2.8】「抗鬱薬」
    #1
【6.2.8】:1
 神経因性疼痛に対する抗鬱薬の使用
 代表的な抗鬱薬としてアミトリプチリン(トリプタノール)【適応外】がある。開始量は10mg/日で、漸増法で75mg/日までが目安。就寝前1回投与が原則。就寝前1回投与でかなり有効であれば、昼間でも投与することができる。またはアキキサピン(アモキサン)【適応外】を50 mg/ 日、2回投与で開始し、150 mg/日を目安に使用する。
,ホスピスケアの実際(2000),,,117

#1
【6.2.8】:2
 神経因性疼痛に対する三環系抗鬱薬【適応外】の開始量は低用量が適切とされており、高齢者(65歳以上)で就寝前10mg/日、成人で25mg/日の投与が提唱されている。その後、効果が認められず、かつ、副作用がなければ開始量と同量を数日ごとに増量し、症状が改善した時点で以後の増量は中止する。通常の治療量(50〜150mg/日)まで増量可能であるが、この量まで増量した後は、1週間ほど症状を慎重に観察する。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,159

#1
【6.2.8】:3
 抗鬱薬は非癌性の神経障害性疼痛には一定の効果が認められているが、癌疼痛に関する研究は少ない。持続性神経障害性疼痛のときに使用を考慮する第一選択薬とされ、三環系抗鬱薬のアミトリプチリンは多く評価されている。鎮痛機序は不明。アジア系人種はコーカソイド系人種に比し、クリアランスが1/2とされ、欧米の文献の投与量は過量である可能性がある。
,緩和ケアテキスト(2002),,,55

 
【6.2.8】:4
 求心路遮断性疼痛(Deafferentation pain)
 痛覚伝導路遮断による痛みで癌による神経浸潤、ビンクリスチン、シスプラチン神経症の痛みがこれに含まれる。治療困難で長期にわたって患者を苦しめる。この痛みにモルヒネは効果がない。比較的トリプタノール【適応外】が有効なことが多いが副作用も多く使いにくい。トフラニールでは、1回10mgを1日3回投与から開始する。トリプタノールでは1回10mgを就寝前に投与する。効果と眠気や抗コリン作用などの副作用を見ながら数日ごとに増減していく。25mgぐらいでは効果はないが100mg以上の投与を必要とする事は少ない。また、異常感覚痛にはトリプタノールが有効といわれる。
,癌の疼痛治療(1989),,20
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,34
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,213

 
【6.2.8】:5
 トリプタノール、トフラニール、アナフラニールのいずれも力価は等しい。三環系抗鬱薬の鎮痛効果は鬱病の治療量より少量で認められ、効果も早く現れる。また患者の気分の変化を伴わずに鎮痛効果があり、抗鬱作用と鎮痛作用は必ずしも関連しない。したがって、抗鬱薬が有効であったからといって、精神的な痛みであったと考えることは短絡的である。
,がんの症状マネジメント(1997),,,122

 
【6.2.8】:6
 抗鬱薬が鎮痛補助薬として有効なのは合併している抑鬱状態の改善によるものではない。通常、鬱病の治療よりも少ない量で鎮痛効果はみられ、その発現も4〜7日とより早い。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,53
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,63

#1
【6.2.8】:7
 ニューロパチックペインへの対応 
 抗鬱薬は持続性の正座の後のしびれ感のようなものによく効くが、動作でしびれ感が変わるような状況のものにはあまり効きにくい。抗鬱薬は十分な投与量でないと効いてこない。少量を長く投与していても効くことはないと思う。
,今月の治療(2000),8,3,19

#1
【6.2.8】:8
 神経因性疼痛に対して抗鬱薬は量が多いと効果が出るかもしれないが、年寄りの男性などでは排尿障害、あるいは口渇などの副作用を経験する。それを考えるとアモキサンはそのような副作用が少ないと思われる。たとえば1日50mg分2という量では一日中眠ってしまうという副作用は少ないようなので、安全域であると思っている。
,今月の治療(2000),8,3,20

 
【6.2.8】:9
 神経因性疼痛に対して三環系抗鬱薬では60mg以上投与しても、痛みの性質、強さとも変化がない場合にはそれ以上増量しても効果がないことが多い。
,がんの症状マネジメント(1997),,,123

*5
【6.2.8】:10
 三環系抗鬱薬の有効性の高い疼痛は”焼けるよう””しめつけられる””つっぱる””しびれる”と表現される持続性の疼痛である。一方、疼痛が間欠的であったり、体位や動作によって誘発されたり、短期間に増強しているような場合には無効である場合が多い。
,緩和医療(1999),1,2,59

 
【6.2.8】:11
 抗不整脈が不整脈を誘発することがあり得るので、フレカイニドないし、メキシチールを三環系抗鬱薬と併用することは推奨されていない。
,がんの痛みからの解放 第2版(1996),,,35

#1
【6.2.8】:12
 近年、抗鬱薬として、三環系抗鬱薬以外にSSRIsが導入されてきている。三環系抗鬱薬に比べ、SSRIsは口渇感や便秘などの副作用が少ないため、神経因性疼痛治療に対して応用されるようになってきている。しかしながら、SSRIの神経因性疼痛に対する有効性は、三環系抗鬱薬とのcrossover trialによると、diabetic neuralgia ・ 帯状疱疹後神経痛のいずれの疾患でも三環系抗鬱薬より劣っていた。また、randomized control trialでは、SSRIsはプラセボ程度の効果しか示さなかった。
,オピオイド治療(2000),,,180

#1
【6.2.8】:13
 抗鬱薬の副作用として、口渇、排尿困難、便秘、視調節障害が認められることがある。口渇は頻度が高くほぼ全例に認められ、増量により増強する。白虎加人参湯の投与が口渇の軽減に有効な場合がある。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,103

 
 

【6.2.8.a】「トリプタノール」


#1
【6.2.8.a】:1
 神経因性疼痛に対してトリプタノール【適応外】は、25mg錠1錠眠前より開始し、効果をみながら、25mg錠2錠分2(朝食後と眠前)、25mg錠3錠分2(朝食後1錠、眠前2錠)という具合に漸増する。トリプタノールは、抗コリン作用が強<、□渇と便秘がときに非常に強く現れ患者を悩ませる。あらかじめ説明しておくことは必須である。抗コリン作用が強すぎて連用困難なときは、他の三環系抗鬱薬に変更してみる。例えば、weakトリプタノールとも称されるプロチアデン(ドスレピン)などである。この場合、用量は同様である。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,77

 
【6.2.8.a】:2
 トリプタノールは鎮痛補助薬としての抗鬱薬としては、最も強力であるといわれている。不安・焦燥の強い抑鬱状態もそのよい適応である。眠気が強く出現することがあり、就寝前に投与するのがよい。トリプタノールは欧米の成書には1日25〜75mgを初期投与量とされているが、末期癌患者では副作用のため増量は難しいことが多い。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,54
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,63

 
【6.2.8.a】:3
 神経因性疼痛に対してトリプタノールでは効果発現量は約40mg、最大効果は約60mg程度であった。効果発現は投与開始から5日以内、最大効果は10日以内に認められる。有効率は疼痛の性質により異なるが、持続的な症状での有効率が高く、突発的な痛み、体動に伴う痛みには無効であった。
,がんの症状マネジメント(1997),,,123

#1
【6.2.8.a】:4
 調査によると、神経因性疼痛に対するトリプタノールの効果発現量(「少し楽になった」)は40mg。かなり楽になったという維持量は平均60mg。量を増やした翌日には患者さんが自覚できる効果が出てくるので、少しずつ量を増やす必要がある。
,今月の治療(2000),8,3,19

 
【6.2.8.a】:5
 疼痛に対するトリプタノールの初期投与量は経口で10〜25mg就寝前、高齢者は10mg。その後、1〜4週間で約50〜125mgまで増量。鬱状態に対応するために150〜300mgまで増量する必要もある。十分な鎮痛効果に達するまで1〜4週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて(1996),,,168

*5
【6.2.8.a】:6
 トリプタノールは三環系抗鬱薬の中では最も効果が強いと考えられている。鎮痛のために100mg以上必要なことはまれで、効果がないまま同じ投与量を長時間維持していても効果は期待できない。また、60mg以上増量しても効果のない症例では無効である可能性が高い。
,緩和医療(1999),1,2,59

*5
【6.2.8.a】:7
 トリプタノールは全身状態が著しく低下している患者において、眠気のために増量が困難であることがある。口渇はほぼ全例に認められ、増量により増強する。白虎加人参湯の有効な場合がある。緑内障患者では禁忌とする意見もあるが、ピロカルピンの点眼の併用で投与可とする意見もある。心疾患のある患者では血圧の変動や不整脈の出現に十分な観察を行う必要がある。
,緩和医療(1999),1,2,59

 
 

【6.2.8.b】「パートフラン」


 
 しびれ感などの異常感覚が主の場合はパートフラン【適応外】(25mg)2〜3錠、分2〜3がある。三環系抗鬱薬の中で鎮静作用が少ない。
,今月の治療(1996),4,4,35

 

【6.2.8.c】「ノリトレン」


#1
 ノル卜リプチリン(ノリトレン)【適応外】
 錠剤:1回25mg 1日2〜3回。アミトリプチリンの代謝物であり、比較的眠気が少なく使用しやすい。緑内障、心筋梗塞の回復初期、尿閉のある患者では禁忌である。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,64
     
  【6.2.9】「抗痙攣薬」
    *5
【6.2.9】:1
 抗痙攣薬は神経細胞の異常な興奮を抑制するもの(テグレトール)と、発作の広がりを抑えるもの(フェニトイン)、GABA受容体に作用し、脳内抑制系を賦活するもの(デパケン、ランドセン)などに分けられる。一つの薬剤が無効であっても、ほかの薬剤への変更が有効である場合もある。
,緩和医療(1999),1,2,60

*5
【6.2.9】:2
 抗痙攣薬は、安静時に発作的に繰り返されるような疼痛が適応である。患者の訴えとしては”電気が走る””痛みが走る””鋭い痛み””指すような痛み”などが”突然来る”と表現される性質の疼痛に有効である。しかし、特定の体位や体動によって誘発される疼痛では、同じような性質の疼痛であっても効果が期待しにくい。鎮痛に必要な投与量は抗痙攣作用を期待する場合と差がないと考えられている。
,緩和医療(1999),1,2,60

 
 

【6.2.9.a】「ランドセン」


 
【6.2.9.a】:1
 神経系の痛みに対しランドセン【適応外】は通常、1日に2回、0.5mgの投与から開始する、その後徐々に増量し、1日に4回1mgまで増やす。十分な効果に達するまで数週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて(1996),,,173

#1
【6.2.9.a】:2
 神経因性疼痛に対する抗痙攣薬の使用
 最近は、リボトリール(ランドセン)をよく使う。 0.5mg/日から始め、2.0 mg/日までが目安。ただ、めまいや眠気などの副作用を伴うので、効果がみられない場合はデパケンに切り替えることもある。
,ホスピスケアの実際(2000),,,116

 
【6.2.9.a】:3
 ランドセンは刺すような痛みを伴うニューロパシックペインにも効果的であることが報告されている。また、モルヒネによるミオクローヌスに有効である。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,143
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,154

*5
【6.2.9.a】:4
 疼痛に対しランドセンは0.5mg就寝前1回投与で、4〜6日ごとに副作用に注意しながら0.5mgずつ増量する。増量後は投与回数を2〜3回にする。副作用としては鎮静作用、疲労感が投与初期に半数程度でみられるが反復投与では改善することが多い。唾液や気道分泌の亢進が問題となることがある。
,緩和医療(1999),1,2,61

#1
【6.2.9.a】:5
 ランドセンは0.5mgを就寝前に使っている限りは大きな副作用はまず起きない。夜間に使えば夜眠れるようになる。だんだんにいろいろな病棟で示しながら普及させていくことが重要と思われる。
,今月の治療(2000),8,3,20

 
 

【6.2.9.b】「テグレトール」


 
【6.2.9.b】:1
 神経因性疼痛に対して抗痙攣薬を使用する場合、1つが無効でも、種類を変更すると効果がある場合がある。有効な場合は増量に伴って痛みの発作が減り、痛みの強さも軽減する。増量によって一気に症状が軽減するような効果の現れ方が多い。体動によって生じる電撃痛には無効な場合が多く、安静時に発作的に繰り返される痛みには極めて有効である。テグレトール【適応外】を用いた場合、これらの痛みには70%以上で有効であり、効果発現は200mgで最大効果は平均400mgである。投与開始後1〜2日で効果発現することが多い。
,がんの症状マネジメント(1997),,,121

 
【6.2.9.b】:2
 テグレトール、アレビアチン、デパケンは、神経の異常発射を抑制する作用がある。Deafferentation painにみられるような刺すような痛みや電撃痛にテグレトールが有効といわれる。テグレトールの開始量は1日100〜200mgで様子を見ながら3〜4日ごとに100mgずつ増量する(最高600mg/日)。具体的には、睡眠補助をかねて、就寝前1錠(200mg)を内服させ、日中の眠気がなくなるか軽減したら、朝100mg、昼100mg、就寝前200mgに増量し、さらに600mg分3へと増量する。副作用としては、悪心、嘔吐、運動失調不安定感、眠気、混乱があり、もし出現すれば減量または中止する。また、骨髄抑制があるので、放射線、化学療法の患者には慎重に投与する。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,213
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,34
,癌の痛みハンドブック(1992),,115

 
【6.2.9.b】:3
 テグレトールの神経因性疼痛に対する投与量に関してWHOでは、開始量を100mg1日2回として2〜3日ごとに200mgずつ増量する方法を示している。このように低用量から投与し、問題となる副作用が出現せず、また、血漿中濃度がてんかん発作の有効治療域の上限を超えない限りは、良好な効果が現れるまで増量し、最高1200mg/日まで増量可能とされている。ただし、十分に増量しても効果がない場合、長期的に維持しても症状が軽減することは少ない。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,139
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,150

 
【6.2.9.b】:4
 テグレトールは投与初期や増量直後にはふらつきで転倒などが生じやすいのであらかじめ指導する。直腸内投与(細粒)は経験上、経口投与と同レベルの血中濃度であった。三環系抗鬱薬を併用する場合には、投与量を減量(300〜400mg以下)する必要がある。
,がんの症状マネジメント(1997),,,121

 
【6.2.9.b】:5
 テグレトールは三環系抗鬱薬との併用で代謝が遅延することが報告されているので、併用する場合には双方の投与量を減量するか投与間隔をあけることが勧められている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,139
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,151

#1
【6.2.9.b】:6
 テグレトールは、他剤との相互作用も多い薬剤であり、例えば、メトクロプラミドとの併用で、カルバマゼピンの血漿中濃度が急激に上昇し、中毒症状(眠気、嘔吐、めまい等)が現れることがある。また、フェニトインとの併用により、各々の薬物血漿中濃度は影響を受けるといわれており、注意が必要である。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,151

#1
【6.2.9.b】:7
 テグレトールの問題となる副作用は、白血球減少症と血小板減少症で、約2%の患者に発症しており、再生不良性貧血も報告されているため、重篤な血液障害のある患者には投与しない。治療を開始する前にあらかじめ血球数を測定し、治療開始2週間後と4週間後に再度測定し、その後は3〜4ヵ月ごとに観察を行うことが勧められる。白血球数が4、000/mm3以下では、通常、本剤の投与は禁忌と考えられており、投与中に3000/mm3を下回った場合は本剤の投与を中止する必要がある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,151

 
【6.2.9.b】:8
 鎮痛補助剤としてのテグレトールは眠気や運動失調などの副作用が多く、モルヒネと併用するとさらに副作用がまして使いにくい。最近は抗不整脈薬(メキシチール、タンボコール、キシロカイン)をよく使う。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,94

 
 

【6.2.9.c】「デパケン」


 
【6.2.9.c】:1
 デパケン【適応外】は血中半減期が長く鎮静作用がある。神経因性疼痛に対して夜1回の投与とし通常は500mg、高齢の場合200mgで開始し3〜4日ごとに増量し1000mg〜1500mgとする。蓄積が起こりうるのでそのときは減量する。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,213
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,34
,癌の痛みハンドブック(1992),,115

 
【6.2.9.c】:2
 電撃様疼痛などの発作痛が主の場合、デパケン(200mg)2〜6錠、分2〜3がある。
,今月の治療(1996),4,4,36

 
【6.2.9.c】:3
 デパケンは疼痛に対し通常、250mgの投与から始め、1日に1回あるいは2回投与する。増量して500mgを1日3回まで増やす。効果が頂点に達するまで1〜4時間かかり、傷みが緩和されるまで1〜3週間かかる。
,がんの痛み治療のすべて(1996),,,172

 
【6.2.9.c】:4
 デパケンは刺すような痛みを伴うニューロパシックペインにも有効であることが報告されている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,143
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,154

 
 

【6.2.9.d】「アレビアチン」


 
【6.2.9.d】:1
 アレビアチン【適応外】は神経因性疼痛に対して1日100mgで開始し、25〜50mgずつ徐々に増量し1日250〜300mg以下とする。副作用はテグレトールと同様であるが投与中止を要するような副作用が出ることはまれである。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,213
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,34
,癌の痛みハンドブック(1992),,115

 
【6.2.9.d】:2
 アレビアチンは電撃痛で刺すような症状を特徴とするニューロパシックペインに対しても効果的であることが報告されている。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,142
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,151
     
  【6.2.10】「抗不整脈薬」
    【6.2.10】:1
 鎮痛補助剤として抗不整脈薬が非常に有効である。メキシチール、フレカイニド、キシロカインの持続点滴、持続皮下注を第一選択にして、それが不十分なときに抗鬱薬、抗てんかん剤、また予後との関係を見て慎重にステロイドを使用していきオピオイドと併用することでオピオイドの効きにくい痛みもかなりコントロールされるようになってきた。
,がん疼痛緩和とモルヒネの適正使用(1995),,,77

#1
【6.2.10】:2
 抗不整脈薬はオピオイド抵抗性の持続性神経障害性疼痛に対し、三環系抗鬱薬に次ぐ第二選択薬であり、電撃様神経障害性疼痛に対しては抗痙攣薬、バクロフェンに次ぐ選択薬であるが、癌疼痛への効果には一定の見解がない。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,80

#1
【6.2.10】:3
 抗不整脈薬の疼痛に対する投与量は不整脈治療に用いる量以下で十分と考えられる。投与速度が早かったり、1日投与量が多くなりすぎると、難治性の嘔吐や不穏状態などの症状が出現しやすくなる。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,106

 
【6.2.10】:4
 抗不整脈が不整脈を誘発することがあり得るので、フレカイニドないし、メキシチールを三環系抗鬱薬と併用することは推奨されていない。
,がんの痛みからの解放 第2版(1996),,,35

*5
【6.2.10】:5
 抗不整脈薬は、必ずしも神経因性疼痛でない場合でも、大量のモルヒネ投与によっても鎮痛効果が不十分な場合などにも、併用によって優れた鎮痛効果を期待できることがある。投与量は不整脈治療に用いる量以下で十分と考えられる。投与速度が速まったり、1日投与量が多くなりすぎると、難治性の嘔吐や不穏状態などの局麻薬中毒の症状が出現しやすくなる。
,緩和医療(1999),1,2,61

 
 

【6.2.10.a】「キシロカイン」


#1
【6.2.10.a】:1
 リドカイン【適応外】は神経因性疼痛の治療薬として、持続静注、持続皮下注による全身投与が試みられており、鎮痛に必要な血漿濃度は1.0〜3.0μg/mLといわれている。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,44

#1
【6.2.10.a】:2
 リドカイン(キシロカイン)神経因性疼痛に対して
注射剤(10%):30〜50mg/時、持続皮下注または持続点滴
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,61

#1
【6.2.10.a】:3
 リドカイン持続皮下注入法
 神経因性疼痛に対する持続注入量としては30〜80mg/時間で有効となることが多いと報告されている。橋本らは鎮痛効果と血中濃度との有意な相関はなかったものの、平均投与量47mg/時間(中央値40mg/時間、血中濃度は約4μg/mL)で有効率67%であったと報告している。
,緩和ケアテキスト(2002),,,62

#1
【6.2.10.a】:4
 神経因性疼痛へのリドカイン投与に関するガイドラインは確立されていないが、リドカインの治療域は1.5〜5μg/mLであり、5μg/mL以上では副作用発現率が高く、9〜10μg/mL以上は中毒域と考えられる。したがって、リドカイン持続皮下注療法は、神経因性疼痛に対して有用であるが、治療域は狭く、適量投与を避けるために、血漿中濃度をモニタリングし、血圧や心電図を連続的にモニターする必要がある。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,157

#1
【6.2.10.a】:5
 神経因性疼痛に対してリドカイン・テストを行うことによって、効果をある程度予測できる。リドカイン・テストとは、リドカイン2mg/kgを生理食塩液50mLに溶解し、ゆっくりと15分間かけて静注して効果を確認する方法である。しかしリドカイン・テストが無効であってもリドカインの持続皮下注入法が有効なことがある。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,61

*5
【6.2.10.a】:6
 リドカインの疼痛に対する臨床使用に際しては、投与前の心電図と肝機能検査を行う。静脈内リドカインテスト投与は、経口リドカイン製剤の有効性を評価するために行われる。静脈内カテーテルを留置し、患者を十分観察しながら1〜2mg/kgのリドカインを10〜15分で注入する。VASをテスト前、中、後に調べる。多くの場合、患者は耳鳴りや口囲のしびれ、口内の金属味、めまいをテスト中に経験する。疼痛が50%以上軽減する場合、経口リドインを試みる価値がある。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,96

#1
【6.2.10.a】:7
 リドカインは神経因性疼痛に対してメキシレチンやフレカイニドの経口投与が無効、あるいは困難な場合に適応となる。副作用の出現が疑われるときには、血中濃度の測定が必要である。リドカインの有効血中濃度は1.5〜5μg/mlであり、6μg/ml以上では副作用の発生頻度が次第に増加し、9μg/ml以上では明らかな中毒量と考えられる。
 リドカイン・テストを行うことによって、効果をある程度予測できる。リドカイン・テストとは、2 mg/kg の静注用2%リドカインを非常に緩徐に静注して痛みが軽減するかどうか確認する方法である。しかし、リドカイン・テストが無効であっても、10%リドカインの持続皮下注入や持続点滴が有効なことがある。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,123

#1
【6.2.10.a】:8
 神経因性疼痛の患者40名にキシロカイン持続皮下注入法を使用したところ有効率は50%であった。維持投与量は41.4±7.6mg/時間であった。副作用として重篤なものは認めなかった。キシロカインで副作用の出現が疑われるときには血中濃度の測定が不可欠となる。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,61

#1
【6.2.10.a】:9
 最近のTeam KANWAでの自験例では、モルヒネ抵抗性の癌性腹膜炎の疼痛に、リドカインの持続静注が有効である症例を多く経験している。投与量は不整脈治療に用いる量以下で十分と考えられる。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,106

 
 

【6.2.10.b】「メキシチール」


#1
【6.2.10.b】:1
 メキシレチン【適応外】は抗不整脈薬の他の2剤に比較すると安全性の高い薬剤であり、副作用として吐き気や嘔吐はあるが、食後に服用することにより軽減することができる。また、一般的な副作用として、振戦、痙攣、不安定感、感覚異常などがあり、 40%以上の患者は、これらの副作用が原因で治療を中止するとの報告もある。まれに、肝障害や血液疾患、皮膚粘膜眼症候群などの重篤な副作用を生じる。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,156

#1
【6.2.10.b】:2
 メキシチールは心臓の刺激伝達系に作用する薬品であり、事前に心電図検査を行う。連用中も定期的に心電図をチェックする、またキシロカインと近似した構造をもち強力な局所麻酔作用ももっているので、局麻薬に対する過敏症の既往を聴取することは必須である。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,77

#1
【6.2.10.b】:3
 神経因性疼痛に対するメキシチール療法は、劇的といってよい効果を示すこともある半面、まったく効果のないこともある。まず、メキシチール注(1A125 mg)の2 mg/kg(成人で1A)を生理食塩水100mLピギーバッグに混入して30分以上かけて点滴静注して反応をみる(チャレンジテスト)。これで痛みの緩和が得られたらメキシチールカプセル(1C100mg)2〜4C分2〜4内服を処方する。内服困難な場合は、メキシチール注2〜4 A/day を持続静注する。しだいに効果が減弱することが多いが、上記の最大量(1日4カプセル、あるいは4A)以上は用いないこと。その際は、他の治療法に変更することを考える。筆者らの経験では、パンコースト症候群の肩・上肢痛、骨盤腔内再発癌の腰下肢痛、化学療法中の末梢神経炎によると思われる腹痛、癌終末期に持病の糖尿病性末梢神経炎が急性増悪した四肢の痛みなどに、メキシチール療法が奏効している。いずれも、神経因性疼痛に分類できる痛みである。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,78

 
【6.2.10.b】:4
 メキシチールはTb群に属し、心抑制作用および刺激伝導抑制作用は弱く、心電図波形への影響はほとんど示さず、安全性の面で優れている。神経因性疼痛に対する投与量は低用量から開始し、通常は150mg/日とするが、良好な効果が現れるまで、また、問題となる副作用が起きるまで数日ごとに同量を増量し、最大投与量は900mg/日と報告されている。WHOは1回150mgを1日2〜4回投与することを示している。増量中は心電図をモニターする必要があり、増量時にはメキシチールの血漿中濃度の測定も考慮するべきである。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,144
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,155

*5
【6.2.10.b】:5
 メキシチールは最も副作用が少なく、最も使用されている経口麻酔薬である。神経因性疼痛に対して本剤は就寝時150mg経口投与から開始し、約一週間投与する。耐えられれば150mgを1日3回に増量する。疼痛緩和が不十分な場合は、最大投与量の1200mg/日まで緩徐に(5〜7日ごと)増加させる。この方法により、著しい疼痛緩和が得られる場合がある。副作用には不整脈や失神、低血圧、運動失調、振戦などが含まれる。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,96

 
 

【6.2.10.c】「タンボコール」


 
【6.2.10.c】:1
 タンボコール【適応外】(1回50〜100mg、1日2回)はメキシチールより強力で持続性が高い。しかし、陰性変力作用が強く、高齢者や心疾患のある患者、肝・腎機能が低下している患者に投与する場合には注意を要する。心筋梗塞の既往がある場合は禁忌。また、投与開始後は心電図で徐脈やQT延長などがないか確認する必要がある。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,51
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,60

*5
【6.2.10.c】:2
 タンボコールは作用がメキシチールと比較して、より強力であり持続性がある。神経因性疼痛に対してメキシチールで効果が不十分なときに適応とするのがよいと考えられる。投与量は、1回50〜100mgを1日2回投与とする。
,最新緩和医療学(1999),,,66
     
  【6.2.11】「ケタミン」
    #1
【6.2.11】:1
 ケタミン(ケタラール)【適応外】神経因性疼痛に対して
 注射剤(5%):100〜500mg/日、持続皮下注入または持続点滴で。
 経口投与:1回12.5〜50mg(注射剤を使用)、1日4回。
 ケタミンの経口投与も報告されており、淀川キリスト教病院ホスピスにおいても有効性を検討中である。筋注用5%ケタミン注射剤(50mg/mL)の必要量を、常水に加えて1回量5〜10mLになるように作成している。特有の苦味があるので、適宜、甘味のある飲み物とともに内服することを指導している。少量から開始する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,64

#1
【6.2.11】:2
 {ケタラールに対応する痛みの性質}
(1)アロディニアと異常感覚を伴う痛み:火傷様の灼熱痛(電撃様疼痛や重苦痛には無効例か多い) 
(2)耐性形成によりオピオイド効果が減少したとき、耐性や身体依存を抑制する。
(3)鎮痛薬としても術後痛や腹部膨満痛、体表のみの体性痛などに有効。

 {鎮痛補助剤としてのケタラールの投与法}
注射薬の経口での効果は静注の1/5以下。皮下注ではやや刺激性。
0.1〜0.15mg/kg/hrで持続投与する。いったん中枢の脱感作、オピオイド耐性の減弱がなされれば投与中止が可能。

 {ケタラールの副作用}
少量でも精神作用(傾眠、不快感、身体異和感、夢・幻覚)が出現することがあり、症状の強い場合は先にミダブラムやドロペリドールを少量併用する。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,56

 
【6.2.11】:3
 モルヒネを増量しても眠気や吐き気が強くなるだけで鎮痛効果が変わらない場合に、ケタミン2〜5mg/kg/日(意識レベルが下がらない量)を併用するとよい。本剤は体性痛に有効な麻酔薬なので、ニューロパシックペインよりは体動時痛など体性痛に有効と考えられる。しかし、NMDAレセプター拮抗薬であるケタミンはモルヒネへの耐性を回復させ、ケタミンの投与中止後もその効果を持続させる作用も示唆されているので、これにこだわることなくモルヒネを増量しても鎮痛効果が少ないときには、まず1mg/kg/日で開始して効果があるようならば増量し、眠気の増強などの副作用が強くなるようならば中止するのがよい。
,痛みの臨床(1996),,,112

#1
【6.2.11】:4
 ケタミン以外のNMDA受容体拮抗薬は癌性疼痛への有用性は確認されていない。ケタミンはオピオイドの鎮痛作用との相乗効果、および、脊髄レベルでのオピオイド耐性予防と形成された耐性への拮抗の目的で、はとんどの癌性疼痛に対して使用可能である。オピオイドの副作用への耐性は上脊髄レベルで形成され、ケタミンでは拮抗されない。また、ケタミン自体、鎮痛薬として腹部膨満痛や体表痛などに有効である。
,ペインクリニック(2002),23,12,1648

#1
【6.2.11】:5
 本剤は神経因性疼痛に対して、眠る量の1/5程度で効果が見られる。0.1〜0.2mg/kg/時で持続静注。200mg/分4で経口。
,今月の治療(2000),8,3,60

 
【6.2.11】:6
 神経因性疼痛に対するケタミンの使用
 {ケタミン持続皮下注入法}
 例えばケタミン100mg/日より開始するとき、充電式小型シリンジポンプを使用する場合は、筋注用ケタミン(50mg/ml)を2ml+生食8mlで全量10mlとし、0.4ml/時で持続皮下注する。ディスポーザブル・インフューザーポンプを使用する場合は、筋注用ケタミンを2ml+生食10mlで全量12mlとし、0.5ml/時で一日分となる。インフューザーには5日分の60mlが入る。
ケタミン50〜100mg/日より開始し、24時間後の効果を判定しながら、25〜50mg/日ずつ増量し、最大300mg/日までであれば、ケタミンの副作用がほとんど現れずに鎮痛効果が得られる。モルヒネを内服しているときは、そのまま継続しながらケタミン併用を開始し、効果が不十分なときには、モルヒネ2〜3割増量とケタミンの25〜50mg/日ずつの増量を、効果を判定しながら交互に行うのがよい。

 {ケタミン持続静注法}
 24時間持続の静脈ラインがある患者では、その側管より持続皮下注と同様のケタミンを持続注入すればよい。たとえば、モルヒネ60mg/日の静注で除痛不十分でケタミンを併用するとき、0.5ml/時、5日間タイプのインフューザーに、モルヒネ6ml+筋注用ケタミン2ml+ドロレプタン1ml+生食3mlで合計12ml/日とし、この5倍量、5日分を充填し側管に接続する。ドロレプタンは制吐薬として著効を示すが、ケタミンによる不穏、せん妄などの精神症状の副作用予防としても有用である。

 {ケタミン使用にあたっての注意点}
(1)モルヒネと併用し鎮痛補助薬として使うこと
(2)除痛が不十分のまま長い時間経過するとニューロパシックペインの病態が悪化(固定化)するためケタミンの開始時期は早い方がよい。
(3)ケタミンでチャレンジテストを行うときは極めて少量の2.5mg程度の静注で行うのがよい。これ以上では不快な精神症状や心悸亢進などの副作用が生じて患者に嫌がられることがある。また、テストで有効性が不明でも、モルヒネと併用の24時間持続投与で有効な場合が多く、癌疼痛治療におけるケタミンの使用開始にあたっては必ずしもテストを行う必要はないように思える。
(4)持続皮下注ではほとんどの症例で皮膚の発赤や硬結が出る。生食やモルヒネを混入してケタミン濃度を希釈することと、刺入部位を1日おきくらいに替えることが必要である。
(5)ケタミンを併用しても効果がない症例は躊躇せずキシロカインを試みる。
,がんの症状マネジメント(1997),,,133

#1
【6.2.11】:7
 鎮痛補助薬としてのケタミンは短期間の投与で無効であっても、中枢神経の過緊張を抑制することが知られており、1〜2週間の投与後に効果が見られる可能性もある。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,107

#1
【6.2.11】:8
 ケタミンにより意識を保ったまま鎮痛を図る場合(長期間の注入療法時)
 輸液剤500mLにケタミン250mgもしくは500mgを混じ、ケタミン0.05〜0.1%溶液としたものを微量点滴セット(60滴=1mL)により輸液コントローラを通して点滴注入する。ケタミンによる精神症状を軽減させるため、この輸液剤内にメジャートランキライザーのドロペリドールをlOmg〜20mg混じることがある。本法開始時にはケタミン20mg/hrの速度で投与し、その後は鎮痛の程度を観察しながら調節する。(疼痛ある場合は30mg/hr、ない場合は10mg/hr)
 合田らは、66名のニューロパシックペインを合併する癌疼痛患者に50〜600mg/日(中央値150mg/日)のケタミンとモルヒネの併用を3〜240日(中央値27日)続け、約90%の有効率を示したと報告している。
,緩和ケアテキスト(2002),,,63

#1
【6.2.11】:9
 ケタミンによるパルス療法(ニューロパシックペイン自体への治療を目的とする場合)
 癌疼痛に合併するニューロパシックペイン自体の治療に用いる場合にはケタミンの麻酔量を用い、2時間の持続睡眠を起こすパルス療法を行う。
 手術室にてケタミン点滴法開始前のVASを記録後、通常の全身麻酔に準じたモニター(血圧計、心電図、パルスオキシメータなど)を装着する。マスクにて30%程度の酸素吸入下でドロペリドールO.1mg/kg、ミダゾラム0.15mg/kg、ケタミン1mg/kgを順次静脈内に単回注入し、以後ケタミンを1mg/kg/hrの速さで2時間持続注入する。
,緩和ケアテキスト(2002),,,63

*5
【6.2.11】:10
 慢性疼痛に対してケタミンは、5〜10mgの静脈内テスト投与を行い、効果がある患者に使う。投与方法は本剤1mg/kg、ドロレプタン0.1mg/kg、ドルミカム0.1mg/kgを末梢静脈路より投与し、その後ケタミンを1mg/kg/時の速度で持続投与を行う。この方法を週に1〜2回程度行う。本剤の経口投与も試みられており、90〜240mg・分3で服用させる。
,臨床と薬物治療(1997),16,10,9

 
【6.2.11】:11
 ケタミンは静注をすると幻覚が出てくるため、テスト投与がしにくい。
,今月の治療(1996),4,4,71

#1
【6.2.11】:12
 慢性疼痛に対してケタミンテストが著効あるいは有効でも、実際に使用すると無効であったり、副作用に耐え難いこともあり、また逆にやや有効であっても良い効果を得ることもある。しかしケタミンテストと実際に投与した場合の有効性は、ほぼ一致する。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,140

#1
【6.2.11】:13
 最近の研究により、強力な鎮痛効果をもつ静脈麻酔薬(筋注や短期間ならば持続皮下注入もできる)としてすでに長い臨床経験をもつケタラ−ル(ケタミン)と、中枢性非麻薬性鎮咳薬として日常頻用されているメジコン(デキストロメトルファン)に、NMDA受容体の拮抗作用があることが判明している。
 ケタラールの比較的少量与薬が癌疼痛を緩和することは以前より注目され、筆者もモルヒネがあまり効かない痛みに対し、モルヒネとしばしば併用してきたが、従来はその鎮痛効果はケタラ−ルの鎮痛効果そのものであり、モルヒネの鎮痛効果と相加的に働いていると解釈していた。しかし、近年の疼痛学の知見によると、ケタラールは中枢の痛みの閾値低下を回復することでモルヒネの鎮痛効果を回復させているようである。この目的でのケタラールの使用量は、麻酔量よりはるかに少なく、ほとんど精神作用も生じない程度の量(subanesthetic dose)ですむ。
 [処方例]ケタラ−ル5mgを静注して、鎮痛効果を認めた場合、筋注用ケタラール(50mg/cc10mLvial)を1回量10mLの甘味をつけた水薬として1日3回8時間毎に内服させる(院内製剤)。初回量90 mg分3から開始し、300 mg分3まで増量する。
 この量では、軽いもうろうとした感じや胃部不快感が出る以外、大きな副作用はない。効果は1週間以内で発現するから、2週間連用して効果のないときは中止する。効果があったときは、1か月間連用して、しばらく休薬し、痛みの増強があれば、再び1か月間の連用を行う、効果はときに劇的である。しかし、まったく効かないことも多い。
 内服ができないときは、 0.1〜0.2 mg/kg/hrの注入速度で、持続皮下注入か持続静注を行う。持続皮下注入では、ケタラール単剤では発赤や硬結が生じやすいために、これを防止するため、デカドロンを1〜2 mg/day 混入して用いるが、実際には、大量のモルヒネ・デ力ドロンに微量のケタラールを加えてカクテルとして持続皮下注入することが多いので、皮膚症状が問題になることはほとんどない。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,79

#1
【6.2.11】:14
 神経因性疼痛に対するケタミン投与方法としては、皮下注が17例(71%)、点滴静注が7例(29%)で、平均投与量は133.7mg/日。ケタミンの麻酔の作用が出るのは500mg/日とされてるので、少量でもケタミンの鎮痛効果がある。投与期間は30日以内が大半。末梢神経損傷では、83%の患者に有効性がみられ、痛みがほとんどなくなるか、かなり軽減した。中枢神経損傷には62%、体性痛(大半は骨転移)に対しては75%の患者に有効で、全症例の改善率は75%という成績だった。ただ、体性痛に対しては評価がなかなか難しいと思われる。
,ホスピスケアの実際(2000),,,119

#1
【6.2.11】:15
 近年、鎮痛補助薬として注射用ケタミンを内服することにより持続皮下注入を行わずに、同様の効果があるとの報告もある。この場合、bioavailabilityの問題から、注射投与量の5〜10倍の投与量が必要であるといわれている。
,オピオイドのすべて(1999),,,117

#1
【6.2.11】:16
 東大病院で慢性疼痛に対し、ケタミン静注療法を施行した症例で、1週間前後の疼痛緩解を得た症例は数例あるが、疼痛が完治あるいは長期緩解した症例はない。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,141

#1
【6.2.11】:17
 ケタミンカプセルは、購入した塩酸ケタミン粉末を市販のカプセルに封入すればよく、ケタミンとして25mgと50mgのものがある。舌下錠は薬剤部で溶解性や味覚を考慮して調剤した後、ケタミン25mgを含有した錠剤としている。矢島らによる、ある患者のケタミン血中濃度のシミュレーション、およびわれわれの臨床経験からもケタミン舌下錠25mgと、ケタミンカプセル50mgがほぼ等価で, bioavailability (生体利用率)は、舌下錠22%、カプセル13%である。そうであれば、舌下錠に統一した方がよいように思えるが、実際には舌下錠により、より急激な血中濃度の上昇があり、副作用を訴える患者がいるので、カプセルも欠かせない。
 投与法としては、まずケタミンカプセル(25mg)を、1週間程の間に、1回1カプセル、1〜3カプセル試させる。副作用が強いとその時点で脱落する。患者が受容できれば、ケタミンカプセル(25mg)を1日1〜3カプセル投与する.効果が認められない場合、50mgカプセルに変更する。それでも効果がない時には、 25mgケタミン舌下錠に変更する。最も投与量の多い患者では25mgケタミン舌下錠を1日20錠、最も少ない患者では1日に、25mgケタミンカプセルを1カプセルと、25mgケタミン舌下錠を1/2錠使用している。通常の使用法であればケタミン中止による問題はないので、中止する必要があれば、いつでも中止できる。
 ケタミンカプセルやケタミン舌下錠を作製できない施設では、筋肉内あるいは静脈内投与用塩酸ケタミンを利用してケタミン水、ケタミンジュース、あるいはケタミンチョコレートなどを作製し、患特に投与している。効果としては、ケタミンカプセルと同等と考えてよい。また、米国などにおいては、ケタミン点鼻が費用もかからず、有効であるということで使用されている。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,143

#1
【6.2.11】:18
 ケタミンの副作用としては、眠気、ふらつき、めまい、悪夢、せん妄、刺入部の発赤(持続皮下注入)などがあるが、比較的投与量が少ない場合は問題となることは少ない。ケタミンの経口投与も報告されており、淀川キリスト教病院ホスピスにおいても経口投与を行い、有効性を検討中である。筋注用5%ケタミン注射剤(50 mg/ml)の必要量を、常水に加えて1回量5〜10 ml になるように作製している。特有の苦味があるので、適宜、甘味のある飲み物とともに内服することを指導している。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,125

#1
【6.2.11】:19
 ケタミン内服による副作用
 嘔気を感じる症例がかなりの割合で存在するが、使用を重ねるうちに慣れが生じる症例も多い。その他、陶酔感、すなわち浮遊感、非現実感、時間感覚の欠如、周囲の環境に対する違和感、思考不能などの精神症状が出現する。健康成人において、ケタミン血中濃度50〜200ng/mlでは、血中濃度と精神症状の程度に正の相関がみられるので、必要最少量を投与する。
 副作用の出現には個体差が大きい。25mgケタミンカプセル1個を服用しただけで気分が悪くなる症例もあれば、25mgケタミン舌下錠4〜5個を使用しても副作用がみられない症例もある。われわれの経験では、ケタミン経口投与による副作用は、適切に使用すれば、それほど問題とならない。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,146

#1
【6.2.11】:20
 ケタミンでは投与量が増えると幻覚なども生じることがある。一般的には持続静注で使用される。しかし、ケタミンの経口投与は代謝産物であるノルケタミンを介して質の高い鎮痛効果を発揮するという報告もあり、経ロモルヒネと経口ケタミンを組み合わせた鎮痛法は最善の組み合わせとなるかもしれない。
,オピオイド治療(2000),,,52

#1
【6.2.11】:21
 ケタミン乱用の報告がある。患者は不安、胸痛、動悸を訴え重度かく乱、横紋筋融解を合併する。ケタミンを定期的に投与する場合には、医師と患者の信頼関係が必要であり、使用状況を掌握しておくことが重要である。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,146

#1
【6.2.11】:22
 ケタミンの副作用予防のためにセレネースの2〜4mg/日の投与が勧められる。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,86

*5
【6.2.11】:23
 モルヒネが効きにくいといわれる骨転移の痛みに対して、ケタミンの併用により、速やかに除痛されることがある。近年、ケタミンの薬理作用が明らかとなり、脊髄後角の中枢性感作を抑制することや、モルヒネの耐性や依存性の形成を抑制するという研究報告がなされている。ケタミンでひとたび痛みが緩和されるとケタミンは離脱することができ、その後鎮痛効果が持続する。
,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,22

*5
【6.2.11】:24
 ケタミンはモルヒネ耐性を予防したり、できてしまったモルヒネ耐性を回復させる作用がある。このため、モルヒネの効果が良好になり、ケタミンを中止できる場合もある。
,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,39

*5
【6.2.11】:25
 ケタミンは体性痛や神経因性疼痛に有効性が高いが、内臓痛にも有効とする報告もある。本剤は短期間の投与で無効であっても、中枢神経の過緊張を抑制することが知られており、1〜2週間の投与後に効果がみられる可能性もある。
,緩和医療(1999),1,2,61

*5
【6.2.11】:26
 疼痛に対するケタミン投与法は、1日量50〜100mg程度から開始し、必要に応じて加減する。開始量が200mg以上の症例では、めまいや眠気などの訴えが出現しやすい。ケタミンの持続静注や持続皮下注では、悪夢などの覚醒反応が問題になることはない。持続皮下注では、刺入部周辺の皮膚の発赤がみられ、2〜3日ごとに刺しかえが必要なことが多い。
,緩和医療(1999),1,2,61

 
【6.2.11】:27
 ケタミンは、神経因性や骨転移の強い痛みに1〜2mg/kg/日を持続皮下注や持続静注で投与し、眠気もほとんどなく良好なコントロールが得られる。
,ターミナルケア(1995),7,1,29

 
【6.2.11】:28
 塩酸ケタミンの持続静注法はモルヒネによっても充分な鎮痛が得られない症例、特に夜間に不穏状態を呈する場合に有効である。注入開始からまもなく鎮痛と睡眠が同時に得られ、注入を中止すると覚醒する。同じ量で持続注入すると、量が少ない場合は寝付きが悪かったり、あるいは逆に量が多い場合は日中に残存する場合がある。そこで、就寝時の量を多くして、途中で半分に減量し、4時に注入を停止している。この方法では寝付きもよく、日中への残存効果もない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
薬液の組成:塩酸ケタミン    500mg
      ジアゼパム     50mg(orドロレプタン 20mg)
  + 生理食塩水(or5%糖液)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                50mL
   ジアゼパムは析出物が現れる場合があるため、ドロレプタンでもよい。
   また、ジアゼパムよりドルミカムの方が使用し易いように思われる。
   使用量はセルシン1A=ドルミカム1Aでよい。

投与方法:持続注入器にて側管から注入(20:00→4:00)
     (持続モルヒネ静注中は併用)
   1. 20:00〜 24:00・・・1.0mL(深い眠りに導入)
   2. 0:00〜 4:00・・・0.5mL(日中の残存効果減少)

試験的投与として上記の量で開始し、効果と副作用を見て、1/2量/晩の増減をする。静脈路が確保されていないときは、皮下注でもよい。
 副作用として不快な浮遊感を経験することがあり、このために本法を拒否する症例が1/3ほどある。そのほかには気管、口腔内分泌物の増加が見られることがあるので呼吸抑制に注意する必要がある。
,痛みの薬物療法(1990),,,209

 
【6.2.11】:29
 終末期にモルヒネによっても充分な鎮痛が得られない場合に対するケタミン・ドルミカム持続投与法の至適量は、鎮静・睡眠状態や副作用を参考にケタミン・ドルミカムの比率はそのままにして投与量の増減で調節する。不快な浮遊感が強いときはドルミカムを、疼痛が強いときはケタミンの増量が効果的なので、症状に応じてケタミン、ドルミカムの比率を変えても良い。
,がん患者の痛みの治療(1994),,,78

 
【6.2.11】:30
 塩酸ケタミン持続点滴法の利点は呼吸.循環が安定し、意識レベルは点滴速度により調節できる。副作用に過度の鎮静、分泌物増加に注意する。
,癌の疼痛治療(1989),,,8

*5
【6.2.11】:31
 メサドンは日本では使用できないが、作用時間が非常に長く、安価で、投与経路も多彩であり、恍惚感がないため、社会的には問題を起こすことが少ないとされている。NMDA受容体拮抗薬のみとして働くことがわかっており、ケタミン、メジコンよりも強力な薬剤として期待されている。
,ターミナルケア(1998),8,5,409
     
  【6.2.12】「ステロイド」
   

【6.2.12.a】「疼痛に対するステロイドの使用」


#1
【6.2.12.a】:1
 ステロイドは、オピオイドや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用に抵抗する腫瘍の神経への圧迫による疼痛に対して有効である。難治性の骨転移痛にも著効することがある。ベタメタゾンとデキサメタゾンは、ナトリウム貯留作用がほとんどなく、抗炎症効果も高いため、癌疼痛治療に選択されることが多い。両薬剤とも抗炎症効果はヒドロコルチゾンの40倍で、食欲亢進効果も高い。脳圧亢進や脊髄圧迫に伴う麻痺の急性期を除いては、少量投与(O.5〜2mg/day)が原則。増量は数日ごとに行う。1回の増量は1 mg/day程度で、効果の見られたもっとも少ない量で維持する。鎮痛治療では10mg以下で効果が見られ、必ずしも大量投与の効果が高いわけではない。経口、注射のいずれもほぼ同じ投与量で効果が得られる。
,がん疼痛治療のレシピ(2002),,,109

#1
【6.2.12.a】:2
 ステロイドに対応する痛みの性質
(1)頭蓋内圧亢進による頭部全体の重苦しくしめつけられるような痛み。
(2)骨転移、神経・脊髄圧迫などによる重苦しい痛みや鈍くうずく痛み(体動で増強し、放散痛や痺れを伴うこともある)。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,56

 
【6.2.12.a】:3
 脳腫瘍ないし癌の脳転移による頭痛にたいしては、モルヒネ単独よりも大量のステロイド剤を併用することが効果的である。
 癌による随伴性炎症が疼痛の原因になっている場合にも、モルヒネとステロイド剤の併用は非常に有効である。
,臨床と薬物治療(1990),,58,76

#1
【6.2.12.a】:4
 ステロイドのよい適応は、オピオイドに反応しにくい痛み全般、脊椎転移や硬膜浸潤による脊髄圧迫の痛み、気道が腫瘍により閉塞しかかっているときの呼吸困難感などであり、また、癌終末期のステロイド療法には、気分の改善、食欲不振の改善、全身倦怠感の改善などの非特異的な効果も経験的に認められているので、このような効果を期待して用いることもある。ステロイドの使用量については定説はない。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,81

#1
【6.2.12.a】:5
 ステロイドの投与法
 神経圧迫の痛みに対してはプレドニゾロン15〜30mg、デキサメタゾンないしベタメタゾン2 〜 4 mgで開始し、1週ごとに漸減して最小限の維持量とする。少量の場合は朝1回投与とする。効果がなければ1週間で中止する。疼痛軽滅後に中止しても症状緩和が維持されることもある。脊髄圧迫や頭蓋内圧亢進に対してはデキサメタゾンないしベタメタゾン8〜20mgを短期間投与する。
,麻酔科診療プラクティス 4癌性疼痛管理(2001),,,56

 
【6.2.12.a】:6
 急激な神経圧迫のような痛みにはソルメドロールを1日500mgか1000mgで、3日から5日使って、漸減していく形を取る。予後が1、2ヶ月ならそのまま続けるが、半年から1年と考えられる場合は漸減して切る。
,今月の治療(1996),4,4,72

 
【6.2.12.a】:7
 ターミナル前期の後半からターミナル中期では、ステロイドは腫瘍周囲の浮腫や炎症の減少、周辺組織の圧迫軽減など鎮痛補助薬としても有効で、その適応範囲は非常に広い。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,6
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,23

 
【6.2.12.a】:8
頭蓋内圧亢進、神経圧迫、脊髄圧迫の場合の初回投与量及び維持量。

  初回投与量          維持量
神経圧迫    4mg1日2回    2〜4mg/日、または減量
頭蓋内圧亢進 4mg1日2〜4回       多様
脊髄圧迫    6〜8mg1日4回  多くの場合放射線治療後に減量
(ときに100mg/日もある)
必ず成功するとは限らないが、まず処方を試みる。5〜10日後に見るべき改善がなければ3〜4日かけて減量し、中止する。
(注)フェニトインと併用するときはデキサメタゾンの代謝を亢進させるためデキサメタゾンの増量が必要。プレドニゾロンは影響を受けない。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,32
,癌の疼痛治療(1989),,52

 
【6.2.12.a】:9
 肝腫瘍や骨盤内腫瘍、頭頸部腫瘍などのように限られた空間内で腫瘍が増大するときに、なんともいえないような圧迫感や緊満感が出現することがある。このような痛みには、ステロイドの投与が必要になってくる。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,21

 
【6.2.12.a】:10
 神経圧迫による痛みにはプレドニン20〜40mgかデカドロン4〜6mgを1日量として用い、1週間後までに漸減して維持量とする。維持量とは痛みが緩和するのに必要な量である。プレドニンの維持量は15mgほど、デカドロンは2mgほどとなることが多いが、時には十分な効果を維持するのにもっと多い維持量が必要となることがある。
,がんの痛みからの解放 第2版(1996),,,38

 
【6.2.12.a】:11
 頭蓋内圧迫による痛みの場合には、最初の1日量をデカドロンの8〜16mgとするとよい。1週間たったら漸減して維持量に至る。脊髄圧迫による痛みでは、施設によりもっと多量、例えば初回1日量100mgを用いている。これを減量して放射線照射中には1日量16mgを維持量としている。
,がんの痛みからの解放 第2版(1996),,,38

*5
【6.2.12.a】:12
 骨転移による病的骨折を起こした場合、メドロール80mg+0.5%ブピバカイン10mLの骨折部注入は、数日間の疼痛コントロールをもたらす場合がある。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,256

 
 

【6.2.12.b】「疼痛以外の症状に対するステロイドの使用」


 
【6.2.12.b】:1
 コルチコステロイドはモルヒネ等の鎮痛薬と共に用いることによって単独使用時よりも優れた除痛が得られ、また副作用を軽減させる鎮痛補助剤としての役割と非特異的ないわゆる全身症状の改善を目的とする役割を持っている。
末期癌患者に以下の適応でコルチコステロイドが使われる。

(適応)

1.非特異的な使用
食欲増進、自覚的な元気さの増進、体力の改善

2.鎮痛目的の使用
頭蓋内圧亢進、神経圧迫、脊髄圧迫、転移性関節痛(骨転移痛)

3.鎮痛以外の特異的な使用
高Ca血症、対麻痺の初期、癌性ニューロパチー、上大静脈閉塞、癌性リンパ管炎、喀血、閉塞(気管支、尿管、小腸)、癌性心膜炎、直腸からの分泌物(坐剤)、発汗、内分泌療法、放射線照射による炎症の緩和、巨赤芽球性貧血
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,32
,癌の疼痛治療(1989),,52

 
【6.2.12.b】:2
 (初回投与量及び維持量)
 多くの適応例ではデキサメタゾンを1日1回4mg投与し10〜14日後に維持量2mgに減量する。
必ず成功するとは限らないが、まず処方を試みる。5〜10日後に見るべき改善がなければ3〜4日かけて減量し、中止する。
(注)フェニトインと併用するときはデキサメタゾンの代謝を亢進させるためデキサメタゾンの増量が必要。プレドニゾロンは影響を受けない。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,32
,癌の疼痛治療(1989),,52

 
【6.2.12.b】:3
 ステロイドは、その適応となる症状が出現し、かつ予後が数ヶ月と思われる場合に、投与を開始する。
 淀川キリスト教病院ホスピスでは以下の理由からリンデロンを使用している。

1.作用が強力(プレドニゾロンの7倍)
2.生物活性の半減期が長い(36〜54時間)
3.塩類代謝の副作用がない。
4.錠剤が非常に小さく飲みやすく、投与量を調節しやすい。

 リンデロンの投与量は1日1〜2mgの少量から開始し、効果を見ながら必要に応じて徐々に増量していく。

 ただし、頭蓋内圧亢進症、脊髄圧迫、上大静脈症候群、消化管閉塞などの病態やターミナル中期(予後が数週間)の場合は、症状の程度に合わせて始めから大量(1日4〜16mg)に投与する(漸減法)。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,164
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,215

      参照−【7.31】「脊髄圧迫」

#1
【6.2.12.b】:4
 疼痛が緩和され、その他の症状もある程度コントロールされている患者でも確実に衰弱は進行する。ステロイドがこのような患者の強い倦怠感に有効であることがある。すべての患者に有効であるとはいえないが、残された時間が少なくとも1ヵ月以上あり、血液検査にてCRPの上昇をきたしている症例で効果があることが多い。効果があると比較的短期間で食欲の増加、「元気のよさ」がみられるようになる。しばらくの間効果は持続するが(多くは1ヵ月から3ヵ月)、効果が切れ強い全身倦怠を訴えるようになると比較的短期間で臨死期を迎える。当院では「ステロイドハネムーン」とよんでいる。また、成書やマニュアルの多くではステロイドはリンデロンやデカドロンがより効果的とあるが、経験上プレドニンでも充分効果はある。
,がんの在宅医療(2002),,,32

#1
【6.2.12.b】:5
 ベタメタゾン(リンデロン)は、癌末期に出現する全身倦怠感や食欲不振に対して、一時的に効果があったのを含めて、全体としては高い有効率がみられる。しかし症状が進行し生存期間が短くなると投与量を増加しても、その有効率は低下する。特に予後が1週間未満になるとコルチコステロイドの効果はほとんど認められない。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,218

 
【6.2.12.b】:6
(癌患者におけるデカドロンの投与法。)

 化学療法や放射線療法後の食欲不振や衰弱のある患者で、まだ長期の予後(1年を超える)を期待できる場合は0.5〜1mg/日を1〜2週間使用する。全身状態が改善されれば早期に漸減、離脱する。

 有症状で予後が6ヶ月前後と見込まれる場合は、躊躇することなく症状に併せて思い切って使用する。単なる食欲不振だけでは0.5〜1mg/日、転移による痛みや消化管の通過障害、呼吸不全や頑固な咳の場合4〜10mg/日を初期投与とする。数日以内で改善がみられれば漸減し維持量とする。
,臨床と薬物治療(1992),73,188

*5
【6.2.12.b】:7
 生命予後が1ヶ月以内でステロイドを投与した方がいいような症状、具体的には全身倦怠感がある場合には躊躇しないで使っていい。しかし、生命予後が2ヶ月以上ある場合にはステロイドを使わないで症状緩和することが望ましいと思われる。
,ホスピス・緩和ケア白書(1998),,,28

*5
【6.2.12.b】:8
 癌悪液質に対するステロイド投与は、全身倦怠感や食欲不振に効果がある。しかし、病状が進行し生存期間が短くなると、投与量を増加してもその有効率は低下する。特に予後が1週間未満になるとステロイドの効果はほとんどなく、鎮静などの他の方法を考慮する必要があると考えられた。
,最新緩和医療学(1999),,,88

 
【6.2.12.b】:9
 欧米の報告ではステロイドとしてはデカドロンの使用が多い。理由は、高力価であること、ミネラルコルチコイド活性がほとんどないこと、作用時間が長く1日の投与回数が少なくてよいこと、食欲亢進作用が他のステロイド剤に比べて強いこと、などがあげられる。
,ターミナルケア(1995),5,4,264

 
【6.2.12.b】:10
 ステロイドは、末期状態による食欲低下に対し非常に有効な食欲増進剤となる。ターミナル中期であれば躊躇せず使用する。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,76
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,83

 
【6.2.12.b】:11
 癌による腸管内腔狭窄は必ず炎症性浮腫を伴い、これが狭窄を強める。癌終末期では癌自体にはもはや治療に反応しないことが多いが、炎症性浮腫には副腎皮質ホルモンが奏効することがあり、時に狭窄の程度を軽減し、自覚症状を緩和する。デカドロンかリンデロン8〜12mg/日を連日1週間使用し、以後漸減する。H2ブロッカーを必ず使用する。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,114

 
【6.2.12.b】:12
 ステロイドは各種炎症を抑え気管・気管支の狭窄、腫瘍周囲の浮腫を軽減させて呼吸困難を改善させる。リンデロン、1回1〜4mg、1日1回朝または2回朝昼。
,ターミナルケアマニュアル第2版(1992),,,101
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,115
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,120

      参照−【6.2.12】「ステロイド」
      参照−【7.33】「鎮静」

 
 

【6.2.12.c】「ステロイドの問題点」


 
【6.2.12.c】:1
 ターミナル患者におけるステロイドの副作用を以下に示す。

(1)口腔カンジダ症
 コルチコステロイド使用患者の約30%にみられる。ミコナゾール(フロリードゲル)やアムホテリシンB(ファンギゾンシロップ)の口腔内塗布が有効である。難治性の場合や口腔ケアが困難な場合、フルコナゾール(ジフルカン)を1回50〜100mg、1日1回の静注投与が有効である。
(2)皮下出血斑
 出現頻度は比較的高い。特に治療法はなく、患者に「心配するものではない」と説明することが重要である。
(3)満月様顔貌
 美容上問題となる場合があり、事前に説明しておく必要がある。長期になる場合は、コルチコステロイドを減量せざるをえない場合がある。
(4)気分高揚
 数パーセントの患者にみられる。症状としては気分高揚の他に、不眠、不安、焦燥、抑うつ、離人症(自己の身体や精神が自分でないように感じたり、現実感がピンと感じられないという現象)などの感情や行動の変化がみられる。
 可能であれば、コルチコステロイドを減量もしくは中止する。また、コルチコステロイドの種類を変更すれば(ベタメタゾン→プレドニゾロン)、改善することもある。必要に応じてハロペリドール(セレネース)などを投与する。
(5)高血糖
 糖尿病の既往のある患者に出現しやすい。コルチコステロイドを減量するか、血糖降下薬や少量のインスリンを併用する。
(6)ミオパチー
 コルチコステロイドにより、体幹部を中心に筋力の低下と筋萎縮を認める病態である。頻度は低いが、投与早期から出現することもあり、患者のの日常生活動作(activities of daily living : ADL)をきわめて低下させることがある。
 コルチコステロイドの減量以外に有効な治療法はないが、フッ素基を持つコルチコステロイド(ベタメタゾン、デキサメタゾン)からフッ素基を持たないもの(ブレドニゾロン、メチルプレドニゾロン)に変更すれば有効との報告がある。
(7)感染
 感染の徴候がみられれば、抗生剤を使用する(予防的投与は不要)。
結核の既往がある場合は再燃に気をつけ、必要であれば抗結核薬であるイソニアジド(イスコチン400〜600mg/日)を併用する。
(8)消化管出血
 数パーセントの患者にみられる。H2ブロッカーの使用によって予防できる場合がある。非ステロイド系抗炎症薬の併用が原因であることが多く、コルチコステロイドの投与のみで出現することは比較的稀である。
 したがって、併用する場合にはH2ブロッカーなどを予防投与することが勧められる(ただし、保険適応はない)。
(9)骨粗鬆症
 高齢者や長期投与の患者に出現しやすい。ビタミンD製剤の投与が予防に有効であるとの報告がある。高齢者の場合、特に長期投与にならないように予防することが第一である。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,167
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,219

 
【6.2.12.c】:2
 在宅癌治療の場合では、モルヒネとステロイドの使い方が地域にまだ広まっていない。ステロイドで食欲不振がせっかくよくなってもホスピスから帰ると、地域の医師がステロイドを危険視して服用を止めさせてしまうことがある。
,癌患者と対症療法(1995),6,1,14
   
 

 

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