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#1
【6.4.1】:1
神経ブロックの評価
まず、相反する評価を明らかにして、神経ブロックの役割や適応を統一する必要がある。
神経ブロックの適応を制限する代表的な意見の根拠は、 (1)神経ブロックの効果に関して信用に足る報告が少ない、 (2)神経ブロックを行える熟練した術者や医療機関が少ない、(3)薬物療法のみでも、ほとんどの癌疼痛に対応できる、の3点と考えられる。一方、長年にわたって神経ブロックによる癌性疼痛の治療を行ってきた本邦のペインクリニック医の中には、神経ブロックを先行させ、神経ブロックの適応とならない痛みにWHO方式を用いるのがよいとの意見もある。
さらに上記の学問的な評価とは別に、とりあえず硬膜外ブロックを行うだけで、その後の継続的な治療を怠るペインクリニック医や、神経ブロックに対する充分な知識や経験もないまま、徒に神経ブロックの侵襲性と副作用のみを強調する医師の存在など社会的な要因も神経ブロックの評価を二分する大きな要因の1つである。 WHOの3段階に加えて、4段階目としてspinal
analgesiaなどの神経ブロックの手技を用いる4段階方式も提唱されてしているが、薬物療法を第1選択とし、充分な鎖痛が得られない場合に神経ブロックを考慮するWHO方式に組み込まれた神経ブロック療法の役割を確立するのが望ましい。
,緩和ケアテキスト(2002),,,65
#1
【6.4.1】:2
神経ブロックの適応となる痛みの基準
モルヒネの増量よりも神経ブロックを優先すべき痛みの1つは温暖や入浴により軽減し、寒さやクーラーなどの寒冷刺激により悪化する痛みで、交感神経(節)ブロックの適応が考えられる。2つ目が安静時には痛みがないが体を動かすと痛みが起こる体動時痛で、知覚神経ブロックの適応が考えられる。
寺内は、神経ブロックの適応を痛みの強さの変動因子、特に入浴による変化を指標としている。そこで入浴により軽減する痛みを交感神経ブロックの適応とした。
体動時痛は、WHOの癌疼痛治療指針でもモルヒネが効きにくい痛みとして位置付けられているが、鎮痛と麻酔の相違を考えれば、侵害刺激によって起こる体動時痛には局所麻酔法と同じ神経ブロックの方がモルヒネより有効なのは当然である。いかに強力とはいえ鎮痛薬であるモルヒネは体動時痛を軽減させることはあっても完全に抑えることは不可能である。
,緩和ケアテキスト(2002),,,66
#1
【6.4.1】:3
神経ブロックの適応と条件
(1)局所性の痛み:
限られた部位の痛みである。
(ただし、散在性でも1ヵ所の痛みが、他の部位の痛みを大きく上回っている場合は適応)
(2)モルヒネの投与結果からの判定:
モルヒネ120mg/日以上でも痛みのコントロール不良。
(または呼吸数6回/分でも鎮痛不充分例はモルヒネ120mg/日以下でも適応)
(3)痛みの特徴からの判定:
入浴で痛みが軽減する場合は交感神経ブロック
体動で痛みが起こる場合は知覚神経ブロック
(交感神経ブロック、特に腹腔神経叢ブロックはモルヒネ120/mg以下でも適応があれば行うべきである)
(呼吸や排便・排尿に伴う痛み、あるいは治療や処置に伴う痛みなど、新しく加えられる刺激によって起こる痛みを総括して体動時痛とする)
(4)神経ブロックの条件
1.患者の同意と協力が得られること
2.出血傾向がなく、ブロック針刺入経路に感染巣や腫瘍・転移巣がないこと
3.全身状態と予後から神経ブロックの有効性が見込めること
4.局麻薬による神経ブロックが有効(末梢性の痛み)であること
,緩和ケアテキスト(2002),,,66
#1
【6.4.1】:4
WHO方式では、モルヒネの効果が期待できない癌性疼痛が神経ブロックの適応とされている。モルヒネの増量より神経ブロックを先行させるべき痛みとして、2つの痛みをあげたい。1つは温暖、入浴によって軽減・消失し、寒冷やクーラーによって悪化する痛みである。もう1つは、じっとしているときには痛みはないが、動くと痛みが襲う体動時痛である。このなかには排便、排尿、深呼吸時の痛み、あるいは治療や処置時の痛みなど、新たに加わる痛み刺激によって起こる痛みはすべて含まれる。このような痛みに難渋する場合、特に入浴により軽誠、消失する腹部痛では、たとえ120mg/
日以下でも、速やかにペインクリニックに紹介した方がよい。
,疼痛コントロールのABC(1998),,,319
#1
【6.4.1】:5
モルヒネの増量よりも神経ブロックを優先させるべき痛みとして、多少乱暴な感もあるが、入浴やhot-packなどの温暖刺激により軽減・消失する痛みと、安静時には痛みがないが体を動かすかと痛みが出現する体動時痛の2つをあげたい。体動時痛とは、動作時や体位交換のときの痛みのほか、特定の体位や排便、肋骨骨折による深呼吸時の痛み、あるいは処置・治療時の痛みなども含まれる。
,がん看護(1998),3,4,306
#1
【6.4.1】:6
神経ブロックの適応
経ロモルヒネとして1日120 mgまでの投与で、約70%の患者が痛みから解放されるが、数100 mg以上投与されても痛みが消えないこともある。モルヒネが効きにくい痛み、あるいは十分な副作用対策にもかかわらずモルヒネの副作用が強く、経口投与に換算してモルヒネの1日投与量が120
mgを超えた場合で、その痛みの部位が局在性であり、(1)入浴(温暖)によって軽減し、寒冷によって増悪する痛み、(2)体動時痛(排便時痛も含む)がある場合には、(1)に対しては交感神経ブロック、(2)に対しては知覚神経ブロックの適応を考慮する。ただし、神経ブロックができる施設においては、膵臓癌など腹部臓器癌による上腹部痛・背部痛には薬物投与に先行して腹腔神経叢ブロックを施行する。腹腔神経叢ブロックはWHO方式癌疼痛治療指針でも、神経ブロックの中で最も有効な方法とされ、手技も確立されており、ペインクリニック医にとって難しいブロックではない。
,がん患者の訴える痛みの治療(2001),,,112
【6.4.1】:7
癌疼痛治療における神経ブロックの利点
(1)患者の全身状態や意識、精神活動に直接的な影響を与えない。
(2)適応を守って行えば完全な無痛が得られる。
(3)一度の処置で、週もしくは月単位の長く続く鎮痛が得られる。
(4)神経そのものの遮断なので鎮痛の程度が高い。
(5)鎮痛薬の定期的使用から解放されることが少なくない。
,終末期医療(1991),,0,32
【6.4.1】:8
癌疼痛治療において神経ブロックを行うに当たり、基本的な適応条件は以下の4点である。
(1)患者の訴える痛みが癌自体による物理的、器質的な痛みであること。
(2)試験的ブロックが有効であること。
(3)消炎鎮痛薬の常用量で制御できなくなった時期に行うこと。
(4)全身状態がブロックに耐えられること。
,終末期医療(1991),,0,31
【6.4.1】:9
緩和的神経ブロックの適応
(1)モルヒネ、鎮痛消炎剤無効の疼痛:(骨転移痛、神経原性疼痛、帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛、肩関節周囲炎、筋・筋膜性疼痛、骨粗鬆症による圧迫骨折など)
(2)モルヒネ大量投与しても満足すべき疼痛管理が行えない場合(モルヒネ経口投与量に換算して100mg/日以上)
(3)WHO方式癌疼痛治療による疼痛管理中に疼痛が増強し、睡眠障害や日常生活に支障をきたした場合
(4)モルヒネなどの副作用により疼痛管理の質的低下が問題になったとき
,緩和医療学(1997),,,82
*5
【6.4.1】:10
癌疼痛治療は薬物療法から開始するのを原則とすべきであるが、腹部内臓癌、とくに膵臓癌に起因する上腹部・背部の痛みには、早期に腹腔神経叢ブロックを行うことを考慮すべきである。
,緩和医療(1999),1,2,65
*5
【6.4.1】:11
局在した部位の痛みで、しかも、(1)入浴(温暖)によって軽減、寒冷によって増悪する痛み、(2)体動時(排便時痛など新たに加わる刺激によって起こる痛みを含む)が主たる場合には、(1)に対しては交感神経ブロック、(2)に対しては知覚神経ブロックの適応を考慮する。ただし知覚神経ブロックは知覚障害のみならず運動神経の障害を伴う場合もあるので、その利点と弊害について十分に検討する。
,緩和医療(1999),1,2,65
#1
【6.4.1】:12
入浴などの温暖効果で軽減・消失する痛みは交感神経ブロックの適応である。交感神経ブロックは知覚・運動神経にはなんの障害もない。
,がん看護(1998),3,4,306
【6.4.1】:13
従来、癌性疼痛に対する神経ブロックは知覚神経ブロックが主流だったが、モルヒネを使用している場合には、交感神経ブロックの鎮痛効果が著しい。それは必要モルヒネ投与量の減少、あるいはブロック後のモルヒネの過量投与によると思われる副作用がみられるので、今後は交感神経ブロックが主流となると考えられる。
,痛みの臨床(1996),,,115
*5
【6.4.1】:14
消化器癌の増大・腹腔内転移痛への対処として、ある程度強い痛みがあり、あるいはさらに増大する恐れがある場合、腹腔神経節ブロックが第一選択である。このブロックが奏功すると、多くの患者が死亡まで痛みから解放され、在宅移行も容易になる。
,臨床と薬物治療(1999),18,3,14
*5
【6.4.1】:15
脳循環改善剤や、血栓溶解剤など抗凝固作用のある薬物治療中には、ブロックによる血腫形成の危険がある。出血・凝固時間が延長している場合には神経ブロックは禁忌となる。
,臨床と薬物治療(1997),16,10,14
*5
【6.4.1】:16
神経ブロックによっては血圧低下(硬膜外ブロック、腹腔神経叢ブロック)、心拍数変動、筋力低下(硬膜外ブロック、腰神経根ブロック)を来すものがある。高齢者や合併症(とくに虚血性心疾患)のある患者では注意が必要。
,臨床と薬物治療(1997),16,10,14 |
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【6.4.2】:1
骨転移を直接または間接の原因とする痛み、または神経圧迫による痛みには放射線治療を考慮するとよい。放射線治療による骨転移痛の軽減や消失は90%以上の患者で、再石灰化は80%で認められる。ただし、一般に予測生存期間が短い場合(2週間以内)には、放射線治療の実施が適切でないことが多い。
,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,30
*5
【6.4.2】:2
骨転移の疼痛の特徴である体動などによって急激な一過性の増悪を示す突発痛の抑制を鎮痛薬で行うのは大変困難である。放射線治療はこの突発痛の軽減にも有用である。一般的に放射線治療による除痛効果は、照射開始4〜8週後に最大になると報告されている。脊椎の骨転移に対しては除痛効果が四肢骨に比べて得られにくいという報告がある。これは脊椎が荷重部位であると同時に神経症状を伴うことが多いためと考えられる。
,ターミナルケア(1999),9,2,149
*5
【6.4.2】:3
骨転移痛に対する放射線療法は90%の患者に痛みの軽減、消失がみられる。奏功率は線量によってあまり変わらない。20Gy/1W、30Gy/2W、50Gy/5Wなど、いずれも有効である。余命が長そうなときはゆっくり、状態の悪いときには早くすむ方法で治療するとよい。病的骨折が起こりそうなときは、固定をしてから照射する。広範囲な転移に、半身照射を勧める人もいる。乳癌、前立腺癌などではホルモン療法が有効なことがあるので、広範な転移ではその使用をまず検討する。脊髄損傷の危険がある部位では、1回2Gyなら50Gyを越さないこと。1回3Gyなら40Gy程度にとどめること。
,ターミナルケア医学(1989),,,104
*5
【6.4.2】:4
骨転移痛に対し放射線療法は非常に効果的な治療手段で、全体では、反応率が70〜80%におよぶ。骨転移は、その疼痛症状よりゆっくり縮小する傾向があり、疼痛は1回照射後24時間以内に消失しうる。すなわち、骨転移痛の緩和と骨の腫瘍縮小には相関が見られない。一方、神経や軟部組織の腫瘍浸潤による疼痛も放射線療法により治療されるが、高い線量を必要とする場合が多く、疼痛緩和と腫瘍縮小が相関する傾向がある。
,MGHペインマネジメントの手引き(1997),,,354
#1
【6.4.2】:5
骨転移痛に対する放射線治療成績
なんらかの疼痛寛解は80〜90%に、また疼痛の完全消失も30〜70%に得られている。疼痛の寛解期間は12〜25ヵ月であり、照射部位の骨転移の増悪は約30%前後にみられる。疼痛寛解率は原発巣や組織型および骨転移の部位に関係しないと考えられている。
骨転移の予後は原発巣や他部位転移の有無等により異なるが、生存期間の中央値で3〜12カ月である。乳癌の骨転移は5年生存率17%との報告もあり、症例によっては対症的治療には終わらず、骨転移といえども根治的治療の1つとして放射線治療が有用である可能性がある。
,緩和ケアテキスト(2002),,,74
【6.4.2】:6
骨転移に対する放射線治療
一般に疼痛寛解は通常分割法で30Gy/3週の放射線治療で得られる。米国のRTOGの報告によると、照射法による疼痛寛解率に差はなかったが、15〜20Gy/1週の照射法が疼痛寛解までの期間が短く、少量短期照射法がより効果的であると述べている。
一方、疼痛寛解率は総線量によって異なるという報告も認められ、Arcangeliらは40Gy以上の照射例に完全寛解率が高く寛解期間も長かったと報告し、他臓器転移がなく骨転移も軽度な症例にはより根治的な照射が望ましいと述べている。さらにRTOGの報告でも多分割大量照射法の方が寛解期間の分析からは有用であると分析している。したがって予後が短く早期の疼痛寛解を目的とした場合は、1回線量を増やした短期照射法が有用であり、予後が1年以上であり疼痛寛解期間が長期にわたることが期待される場合は40〜50Gyの多分割照射が望ましい。
,緩和医療学(1997),,,155
#1
【6.4.2】:7
癌骨転移痛に対する放射線照射療法
(1)1回分割線量2Gy、週5回照射の標準的照射法では、除痛効果の現れる最小線量は20Gyである。すなわち、この線量に達するには10回の照射、週5回照射法では2週を必要とすることになる。
(2)これに対し、1回分割線量を2Gyより大きくした(3〜5Gy)非標準的照射法では、10Gyで半数以上の症例に除痛効果がみられ、前記標準的照射法と比較したとき、総線量で10Gy、照射期間で1週間の差があることがわかった。
(3)痛みがほぼ完全に消失する線量をみると、標準的照射法で40〜50 Gy、非標準的照射法で30〜40Gyであり、治療期間は前者で4〜5週、後者で2〜3週となった。したがって総線量で10Gy、治療期間で1〜3週の差があることがわかった。
重篤な副作用が出ない1回大線量を、可能なかぎり短期間に照射することにより、すばやく除痛が得られる可能性が示唆された。
,がん看護(1998),3,4,303
*5
【6.4.2】:8
有痛性骨転移の放射線治療を行うと半数以上の患者が1〜2週以内に疼痛の軽減を認め、4〜8週後までは週を追うごとに緩和効果が進む。半身照射では24〜48時間で効果が出現し、早期に疼痛の軽減が得られる。鎮痛効果の持続期間は半年程度であるが、効果と予後は相関するというデータがある。1年以上生存した患者の半数以上が1年間は疼痛緩和が持続する。照射後に疼痛緩和された部位に再度疼痛が再燃した場合には、再照射に反応することが多い。
,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,16
【6.4.2】:9
放射線治療等により癌の痛みがなくなった場合、続けてモルヒネを服用するとそれまでなかった眠気が出現するので、減量の目安となる。
,癌疼痛治療におけるモルヒネの使い方(1991),,266
#1
【6.4.2】:10
脳転移に対する放射線治療は頭痛、嘔気、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状や神経症状の改善に有用である。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,118
#1
【6.4.2】:11
放射線治療の副作用、欠点
放射線治療による除痛効果は比較的良好であるが、照射によっては急性期障害や晩発障害などの有害事象も発生する場合がある。急性期障害は照射期間中が主であり、可逆性の障害である。しかし、患者にとってはこの障害が身体的苦痛になってしまうことも多い。放射線宿酔に対しては、メトクロプラミド、ドンペリドン、ステロイドなどが有効である。
5-HT3受容体拮抗型制吐剤も有効である。通常、急性期障害は照射終了後2〜4週で回復することが多いので、この旨を患者によく理解してもらう必要がある。晩発障害は照射後数カ月以降に出現してくるもので不可逆的障害が多い。一度出現すると、難治性であり、障害で生命を奪われることも稀にある。したがって、長期間の予後が期待できる場合は、線量分割には注意が必要である。
,がん患者の訴える痛みの治療(2001),,,110
#1
【6.4.2】:12
ゾフランとカイトリルは腹部への放射線照射に続く嘔吐には効果があることが証明されているが、セレネースやナウゼリンなどの治療で効果を上げられなかった嘔気、嘔吐に対しては、さほどの効果がないことは分かっている。
,フローチャートで学ぶ緩和ケアの実際(1999),,,20 |