【7.10】「消化管通過障害・腸閉塞」
  #1
【7.10】:1
 イレウスは、その発生原因により、(1)機械的イレウスと(2)機能的イレウスに大別される。(1)機械的イレウスとは、腸管がなんらかの原因で器質的に内腔が狭窄、閉塞されることによって起こるものをいい、単純性(閉塞性)イレウスと複雑性(絞扼性)イレウスに分類されている。これに対し、(2)機能的イレウスとは、腸管に器質的な閉塞の原因が見当たらないにもかかわらず、通過障害を生じたものをいう。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,224

#1
【7.10】:2
 腸閉塞では、狭窄をきたした部位により症状に大まかな違いがみられるので、症状を観察することで、狭窄部位を大体想定することができる。すなわち、上部消化管が狭窄した場合は、腹部膨満ははっきりせず、腹痛はあっても多くは軽度だが、食物摂取後間もなく未消化な食物塊や胃十二指腸液を激しく嘔吐する。
 一方、下部消化管の狭窄の場合、無理に経口摂取を続けると、日を追って腹部膨満は著明となり腹痛や疝痛も強いことが多いが、嘔吐は当初は比較的軽症であり、食後かなり時間を経てから、通常、夕方から夜間にかけて生ずる。しかし、狭窄が強まり閉塞状態となると、糞臭のある吐物を昼夜の別なく頻回に吐出するようになる。
 狭窄が強まるにつれ、狭窄の部位にかかわりなく、患者はたえず吐き気に悩まされるようになる。嘔吐そのものより、吐き気の方が苦痛であるという患者が多い。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,135

#1
【7.10】:3
 イレウスの治療のポイント
 予後が2カ月以上見込めて全身状態がよい場合は、まず手術の適応を考える。3大症状である腹痛、嘔吐・腹満の改善に努める。予後が短いと考えられる場合、ステロイド、サンドスタチンの投与を考える。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,54

 
【7.10】:4
 イレウス状態でのモルヒネの使用は悩むところである。イレウスが可逆的であれば、腸管蠕動促進剤を点滴で使用しながら、モルヒネの持続注射を行う。しかし、イレウスが癌性腹膜炎などで不可逆的であれば、腸管が動かなくなることを覚悟した上でモルヒネを使用してもよいと考える。ただし、制吐剤を多めに使用することによって嘔吐の回数を減らしたり、1日持続している嘔吐を軽快させる努力は必要である。サンドスタチンがイレウスの嘔気・嘔吐に有効との報告がある。
,ターミナルケア(1995),7,1,7

 
【7.10】:5
 腸閉塞・イレウス患者へのモルヒネの投与については判断の分かれるところである。モルヒネの鎮痛効果と腸管の蠕動運動抑制を勘案して、投与の是非を決定することが必要であると思われる。なお、疼痛の激しいときのみ、速やかに吸収される剤形にてモルヒネを頓用で使用する方法や、オピスタン(ペチジン)の使用も考慮に入れることが出来る。オピスタンの鎮痛作用はモルヒネより弱いが、平滑筋に対する鎮痙作用も有することから内臓痛にも有効であるとされる。
,モルヒネによるがん疼痛緩和(1997),,,215
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,225

 
【7.10】:6
 消化管閉塞患者の症状コントロール
 保存的治療に反応しない場合、胃管によって一時的症状緩和が得られることがある。しかし、長期になると苦痛が増加するので患者のQOLは低下する。したがって胃管挿入はあくまで一時的な処置と考えるべきである。
 胃管の挿入が長期化する可能性がある場合は、経内視鏡的胃瘻造設を考慮する。内視鏡の挿入が可能な患者であれば、手技は比較的容易であり、患者の苦痛も軽度である。また、合併症はほとんどないと考えられる。
,緩和医療学(1997),,,115

#1
【7.10】:7
 経鼻胃管による吸引では、86%の患者で消化管閉塞に伴うさまざまな症状のコントロールはできない。したがって、緩和ケアにおいては限られた用途しかない。
,フローチャートで学ぶ緩和ケアの実際(1999),,,35

#1
【7.10】:8
 イレウス管は非常に苦痛を伴う方法であり、末期癌患者には行うべきでないというのが著者の個人的意見である。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,59

#1
【7.10】:9
 胃管の挿入が長期化する可能性がある場合は、経内視鏡的胃痩造設を考慮する。内規鏡の挿入が可能で、胃を切除していない患者であれば、適応がある。手技は比較的容易であり、患者の苦痛も軽度である。また、合併症は少ない。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,183

#1
【7.10】:10
 PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の適応
 最も多いPEGの適応は長期間の経腸栄養路としての胃痩造設である。その対象例の多くは、脳血管障害や痴呆のため十分に摂食できない高齢者である。また、癌などによる幽門狭窄例で、減圧目的に造設されることも少なくない。
 このような症例に対して、従来わが国では経鼻胃管が留置されることが常であったが、数々の理由から胃痩の優位性は明らかである。したがって、一定期間(30日)以上経鼻胃管留置が必要と思われるすべての症例はPEGの適応とされている。
 また現在では、 PEGを応用したさまざまな消化器治療手技もおこなわれている。
,TECHNICAL TERM 緩和医療(2002),,,186

#1
【7.10】:11
 PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の現況
 医療技術の適正な評価と監視の目の厳しい米国では、開発後数年で一般診療にとりいれられ、毎年40万件以上のPEGが施行されている。わが国ではようやくここ数年PEG有用性が認識され、また在宅医療へのシフトが重要視されるなか、現在では年間10万件近いPEGがおこなわれるようになった。
,TECHNICAL TERM 緩和医療(2002),,,186

#1
【7.10】:12
 緩和手術の適応がないときは、以下の手順で対応を進める。
 経口摂取(あるいは経管栄養)を中止し、点滴静注により水電解質と栄養を補給する。この際、癌終末期では、全身衰弱により健康時に比して水の必要量が低下しているので、健康人の基準で水を補給すると通常水過剰状態となる。水の過剰は、病変部の浮腫を強め、唾液その他の消化液の産生を高め、心肺機能に負担をかけるなど、癌終末期の患者にとっては一般にマイナスに働く。水補給は絞りぎみにして患者をドライにすると、自覚症状の緩和にも役立つことが多い。同時に、制吐薬により吐き気のコントロールを行う。腸閉塞では、一般にプリンペランやナウゼリンの適応がなく、むしろ禁忌であることは上述した。制吐薬としては、ノバミン、ウィンタミン、セレネースを使用するが、効果はあまり期待できない。
 癌による腸管内腔狭窄は、必ず炎症性浮腫を伴いこれが狭窄を強めている。炎症性浮腫にはステロイドが奏効することがあり、ときに狭窄の程度を軽減し、自覚症状を大幅に改善することがある。ステロイドとしては、長時間作用性で電解質作用のないデカドロン(テキサメタゾン)あるいはリンデロン(ベタメタゾン)16〜24 mg/day を連日1週間に点滴静注し、以後漸減、2〜4 mg/day で維持する。H2ブロッカー(あるいはM1ブロッカーとH2ブロッカーの両方)を必ず併用する。これはステロイドによる胃障害を予防するとともに、胃液の産生を抑制するためである。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,135

#1
【7.10】:13
 モルヒネの投与により手術適応のない腸閉塞がある場合には、抗ヒスタミン性制吐薬(シクリジン、ジメンヒドリナートなど)を用い、消化管分泌を抑制するためには抗コリン薬(臭化ブチルスコポラミンなど)を用いる。
,疼痛治療の現状と展望(2000),,,126

#1
【7.10】:14
 消化管閉塞は内臓痛、鼓腸、嘔気、嘔吐など閉塞症状を伴う。手術が不可能で放射線治療の選択も困難なとき薬物療法を考慮する。消化管閉塞の症状にはオピオイドは効きづらい。抗コリン薬、オクトレオチド(ソマトスタチンアナログ)、副腎皮質ホルモン製剤(デキサメサゾン8〜60mg/日、メチルプレドニゾロン30〜50mg/日等)を使用し、疼痛の緩和および患者の苦痛を伴うドレナージや経鼻胃管、経皮カテーテルの必要性を低くする。
,緩和ケアテキスト(2002),,,54

#1
【7.10】:15
 腸閉塞への対応
 米国のマニュアルでは、腸閉塞患者に対する典型的な持続皮下注入として、モルヒネ60mg、ハロペリドール1.5mg、オクトレオチド0.3mg、ヒドロキシジン(アタラツクスP)25mgの混合液の24時間投与が紹介されている。
,ターミナルケア(2002),12,6,459

#1
【7.10】:16
 内科的治療法によって腸閉塞が改善することが、ときにはある。下部大腸内を食塩水浣腸などで空虚にしたときなどである。ピーナツ油などの停留浣腸が宿便または大腸の狭窄あるいは双方による閉塞を解除することがある。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,75

#1
【7.10】:17
 完全閉塞でなければ、糖類下剤であるラクツロース、流動パラフィンや酸化マグネシウムなど投与してみる。ただし効果がなく腹満が増悪する場合は中止する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,96
     
  【7.10.1】「腸閉塞による疼痛(疝痛と内臓痛)」
   

【7.10.1】:1
 消化管閉塞特有の疝痛発作と腫瘍による持続的な内臓痛とは区別して考える。
持続的な腹痛の場合は、モルヒネやレペタンなどの持続注入を行う。
疝痛発作の場合は以下のように考える。
 1.プルセニドやラキソベロンなどの蠕動を促進するような下剤は中止する。
 2.プリンペランなどの制吐剤は上部消化管の蠕動を亢進するので中止する。
 3.モルヒネなどは持続皮下注で投与する。
 4.鎮痙剤であるブスコパン(60〜120mg/日)あるいはハイスコ(1〜3mg/日)の持続皮下注入を行う。後者は鎮静効果がある。
,緩和医療学(1997),,,116

*5
【7.10.1】:2
 腸閉塞の患者には、持続的な痛みと周期的・発作的に痛む疝痛の2種類がある。疝痛は腸閉塞患者の75%にみられ、閉塞部位から近位側の腸蠕動亢進により出現する。上部消化管閉塞の場合に、より強い痛みが出現しやすい。疝痛に伴いグル音亢進が聴取される。鎮痙薬であるブスコパンが疝痛の治療に有効である。
,最新緩和医療学(1999),,,98

 
 

【7.10.1.a】「腸閉塞の疝痛」


#1
【7.10.1.a】:1
 腹痛は、その機序から(1)体性痛(腸壁や腹膜などに分布する知覚神経の伝達による痛み)、(2)内臓痛、および(3)関連痛の3種類に分けて考えられる。このうち、鎮痛薬は、主として(1)体性痛に用いられるが、体性痛の場合は一般的に外科的治療の適応である場合が多いとされる。腸閉塞の場合にも、腹痛の増強は手術適応となるので、鎮痛薬を投与せずに経過観察するのが普通であり、鎖静薬程度にとどめるべきであるとの意見もある。
 腸閉塞時の腹痛に対する救急処置として、麻薬の使用を含めて鎮痛薬の投与は成書に記載されている。しかし、添付文書中にも慎重投与の対象に、麻痺性イレウスを有する患者が含まれており、モルヒネの薬理作用である腸管の蠕動運動抑制が当該患者において不利益に作用することも危惧される。以上より、モルヒネの鎮痛効果と腸管の蠕動運動抑制を勘案して、投与の是非を決定することが必要であると思われる。
 なお、疼痛の激しいときのみ、速やかに吸収される剤形にてモルヒネを頓用で使用する方法や、塩酸ペチジン(オピスタン)の使用も考慮に入れることができる。合成麻薬である塩酸ペチジンの鎮痛作用はモルヒネより弱いが、平滑筋に対する鎮痙作用も有することから内臓痛にも有効であるとされる。
,「モルヒネによるがん疼痛緩和」改訂版(2001),,,224

*5
【7.10.1.a】:2
 腸閉塞による疝痛性疼痛は閉塞患者の75%に生じる。発作性の疼痛が生じ、その間には比較的痛みがない。閉塞が高度なほど、疼痛がより強い。疝痛発作は、聴取可能な腹鳴を伴う。麻痺性イレウスでは、疝痛を認めない。疝痛はオピオイドにより緩和されにくいが鎮痙薬は緩和を生じうる。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,148

*5
【7.10.1.a】:3
 腸閉塞による疝痛の管理には刺激性緩下剤の中止。胃運動性を高める薬物の中止。鎮痙剤を投与する。経口摂取できる場合ロペミン2mg内服1日4回。経口摂取できない場合、スコポラミン経皮パッチ1.5mgを耳介後部に3日毎に適応。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,151

 
【7.10.1.a】:4
 腸閉塞による疝痛の内科的治療にはブスコパンの持続皮下注入(60〜120mg/日)やハイスコの持続皮下注入(0.5〜2mg/日)が有効。完全閉塞でなければ、ラクツロース、流動パラフィンや酸化マグネシウムなど投与してみる。ただし、効果が無く腹満が増悪する場合は中止する。大腸刺激性下剤は腸蠕動を亢進させて、疝痛を誘発させることがあるので使用を控える。持続的な痛みがあればレペタンやモルヒネの持続皮下注入を施行する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,96

#1
【7.10.1.a】:5
 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン)は腸管攣縮の腹痛がある場合に用いる。疝痛発作の回数が少ないうちは頓用方式(10〜20mg/回、皮下注)でもよい。痛みが持続する場合は持続投与(静注・皮下注、10〜60mg/日)にする。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,121

 
 

【7.10.1.b】「腸閉塞の内臓痛」


*5
 腸閉塞による持続性疼痛は閉塞患者の90%に生じうる。腫瘍による圧迫や肝皮膜の進展、腹部緊満による定常的な疼痛。通常モルヒネに反応する。重度の持続痛は、腸管の絞扼を示す場合がある。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,148
     
  【7.10.2】「腸閉塞による嘔気・嘔吐」
    #1
【7.10.2】:1
 イレウスによる嘔気・嘔吐の薬物療法は次のようなガイドラインによって行う。
(1)嘔気・嘔吐の原因を同定する。
(2)腸閉塞以外の原因を除外する。
(3)神経伝達経路を確認し、神経伝達物質を推定する(消化管閉塞の場合は、迷走神経を介することが多く、神経伝達物質としてはアセチルコリン、ヒスタミンが主体)。
(4)嘔吐中枢におけるレセプターに対する親和性の高い薬剤を選択する。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,61

#1
【7.10.2】:2
 嘔気・嘔吐に対する薬物的治療
(1)抗コリン作用薬
・臭化水素酸スコポラミン(ハイスコ)【適応外】の持続皮下注入(0.5〜2mg/日)あるいは0.125〜0.25mgを1日3〜4回舌下投与。抗コリン作用により、直接嘔吐中枢に作用する。消化管閉塞の嘔気・嘔吐に対しては第一選択。高齢者や衰弱の強い患者ではせん妄に注意する。
(2)抗ヒスタミン薬
・プロメタジン(ピレチア)【適応外】の筋注(5〜25 mg/回)。
・塩酸ヒドロキシジン(アタラックス)【適応外】の筋注または静注(25〜50mg/回)。
 抗ヒスタミン効果(H1受容体拮抗剤)。
(3)ドパミン(D2)受容体拮抗薬
・メトクロプラミド(プリンペラン)の持続皮下注あるいは持続静注(30〜60mg/日)
 上部消化管の停滞に適応。末梢性および中枢性(抗ドーパミン作用)に作用する。完全閉塞の場合には疝痛や穿孔を起こす可能性があるので注意する。錐体外路症状の出現する可能性あり。
・ドンペリドン(ナウゼリン)の坐薬による投与(1回30〜60mg、1日3〜4回)。
 メトクロプラミドと同様の作用であるが、錐体外路作用は少ない。
・ハロペリドール(セレネース)【適応外】の持続皮下注入(5〜15mg/日)。
 ブチロフェノン系薬剤で、CTZ(D2レセプター)に作用する。
(4)5-HT3拮抗薬
・グラニセトロン(カイトリル)【適応外】3mgを点滴静注。
・オンダンセトロン(ゾフラン)【適応外】4mgを点滴静注。
 嘔吐中枢、CTZにおいて5HT-3レセプターを拮抗する。薬価が高いのが難点。
(5)その他の薬剤
・ベタメタゾン(リンデロン)2〜4mgを静注、またはヒドロコルチゾン(ソルコーテフ)100〜200mgを点滴静注する。
 ステロイドの制吐作用ははっきりしていないが上記にて効果が不十分なときに用いる。
・オクトレオチド(サンドスタチン)【適応外】の皮下注射または持続皮下注または持続静注(0.2〜0.6mg/日)。
 オクトレオチドは腸液の分泌を抑制し、腸管の減圧を行うことにより、嘔気・嘔吐を抑制する。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,60

*5
【7.10.2】:3
 末期腸閉塞患者における悪心嘔吐管理の目標は、悪心を全く生じさせず、嘔吐をせいぜい1日1〜2回に減少させることである。
・「高位閉塞」:セレネース1.5mg±アタラックスP25mg±サンドスタチン0.3mgを24時間皮下注入(シリンジポンプ)。
・「低位閉塞」:セレネース1.5mgまたはプリンペラン60mg±アタラックスP25mg±サンドスタチン0.3mgを24時間持続皮下注(シリンジポンプ)。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,151

*5
【7.10.2】:4
 末期腸閉塞患者の管理に経鼻胃吸引は通常推奨されない。経鼻胃吸引は咳嗽を妨げ、誤嚥、食道炎を生じうる。患者にとって不快であり、患者と家族間に障壁を生む。このため、2週間以上にわたって経鼻胃管が必要な場合、経皮的胃瘻術を考慮する。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,150

 
【7.10.2】:5
 腸閉塞による悪心の内科的治療にはセレネース【適応外】の持続皮下注入法が第一選択になる。少量から開始して効果をみながら増量する。ブスコパンの持続皮下注入により嘔気や疝痛が緩和される。これだけで効果が不十分であればハイスコの持続皮下注入法を少量から開始する。プリンペランは、疝痛や嘔吐を誘発することがあり、完全閉塞の場合では避けるようにする。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,95

#1
【7.10.2】:6
 著しい膨満を伴う腸閉塞患者の嘔気・嘔吐には、ゾフランやカイトリルがことに有用なことが多い。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,73

 

【7.10.2.a】「腸閉塞による嘔気・嘔吐に対する抗コリン薬の使用」


*5
【7.10.2.a】:1
 腸閉塞に対して、まずブスコパンで悪心、嘔吐、疝痛を改善。これで効果不十分な場合はハイスコ【適応外】に変更。ハイスコは鎮静作用もあるので少量から。副作用として錯乱やせん妄を起こしやすい。
,最新緩和医療学(1999),,,101

 
【7.10.2.a】:2
 癌終末期において消化管の通過障害で嘔吐がある場合は抗コリン薬として、ハイスコ【適応外】0.25mg筋注か静注3〜4回/日。
,がん終末期の症状コントロール(1995),,,110

*5
【7.10.2.a】:3
 ハイスコは抗コリン作用により、直接嘔吐中枢に作用する。消化管閉塞の嘔気・嘔吐に対しては第一選択である。高齢者や衰弱の強い患者ではせん妄に注意する。持続皮下注入(0.5〜2mg/日)、あるいは0.125〜0.25mgを1日3〜4回舌下投与。
,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,65

 
【7.10.2.a】:4
 ハイスコには副作用として抗コリン作用の口渇、鎮静、目のかすみ、排尿遅延などのほかに呼吸や循環抑制もみられることがあるため、全身衰弱の著明な患者では少量から開始して慎重に投与する。また、持続投与した場合、せん妄を誘発しやすいので注意する。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,86
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,91

#1
【7.10.2.a】:5
 ハイスコの有効限界は1日あたり5Aとされ、それ以上投与しても効果の増強はみられない。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,193

 
 

【7.10.2.b】「腸閉塞による嘔気・嘔吐に対するサンドスタチンの使用」


 
【7.10.2.b】:1
 サンドスタチン【適応外】は近年、進行末期癌患者の消化管閉塞における難治性の嘔気・嘔吐、下痢を緩和する作用があることが知られてきた。
 サンドスタチンはソマトスタチンの合成類似物質で、投与2時間後に作用は最大となり、約12時間持続する。投与方法は持続皮下注か持続静注あるいは12時間おきの皮下注でもよい。サンドスタチンはモルヒネ、レペタン、セレネース、プリンペランなどと同一のシリンジに混注しても効果は変わらないとされる。
 投与は200μg/日から開始する事が可能と思われる。維持量は600μg/日以上に増量してもそれ以上の効果は得られないとされる。副作用はほとんど問題とならない。口渇が起こりえるが、24時間以内に消失するといわれる。また、インスリン分泌が抑制されるために食後高血糖が起こることがあるが、一般に消化管閉塞がある患者は経口摂取量が少ないのでほとんど問題とならない。しかし、耐糖能異常のある患者への投与は慎重にすべきである。むしろ、本剤を急激に中止した場合の低血糖が問題になることがあるので注意を要する。すなわち、本剤を中止する場合は投与量を漸減する必要がある。
,緩和医療学(1997),,,116

#1
【7.10.2.b】:2
 イレウスに対してサンドスタチン【適応外】は最初に100μgを皮下注射し、効果を判定する。はっきりしない場合は、12時間ごとに1〜2回追加する。効果が認められたら、12時間ごとに皮下注射するか持続皮下注を行う。維持投与量は1日600μg以上に増量してもそれ以上の効果得られないという報告が多い。現在のところ、筆者は維持投与量300μg/日以下としている。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,62

#1
【7.10.2.b】:3
 イレウスに対するサンドスタチンの与薬(200μg/day点滴静注で開始して効果をみながら600μg/day点滴静注まで漸増。多くは200〜300μg/dayの連用で十分な効果をみる)により、与薬翌日には吐き気と嘔吐の明瞭な改善が自覚されることが多い。わずかながら腸管が開存しているときは(サブイレウス)、サンドスタチンの与薬をすると、ほとんど残滓の出ないエレメンタルダイエットは摂取可能になり、患者の「何か食べたい」「食べることは生の証」という要求にも応えることができることがある。サンドスタチンは、モルヒネやステロイドとともに持続皮下注入が可能である点も利点といえる。
,がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール(2000),,,136

*5
【7.10.2.b】:4
 腸閉塞に対するサンドスタチンの効果
 腸閉塞が起こると腸内容が停滞し、腸管が拡張する。この結果、腸管内腔の表面積が増大して、電解質や水をより多く分泌しさらに腸管が拡張するという”悪循環”が起こる。本剤は腸上皮細胞レベルに作用し、電解質や水の分泌を抑制し、それらの吸収を促進するので、この”悪循環”を断ち切れると考えられている。また、本剤は腸管蠕動を抑制して、腸管の緊張を緩和し痛みを軽減する。
,最新緩和医療学(1999),,,100

 
【7.10.2.b】:5
 近年、サンドスタチンが消化液分泌の抑制作用、消化管運動の抑制や水分および電解質吸収などの消化管機能に作用することが報告されている。そして、消化管閉塞に伴う消化器症状に対して症状緩和の効果が予想されている。報告によると、既存治療に不応の消化管閉塞に伴う嘔気・嘔吐を訴える患者にサンドスタチンの持続皮下注入を行ったところ改善率は75%であった。
,がんの症状マネジメント(1997),,,181

*5
【7.10.2.b】:6
 消化管閉塞による嘔気・嘔吐の治療において、サンドスタチンの副作用はほとんど問題とならない。唾液の分泌が抑制されるため、口渇が起こり得るが、24時間以内に消失するといわれる。また、インスリンの分泌が抑制されるために食後高血糖が起こることがあるが、一般に消化管閉塞がある患者は経口摂取量が少ないので、高血糖が問題になることは希である。しかし、耐糖能異常のある患者では、注意すべきである。むしろ、本剤を急に中止した場合の低血糖が問題となる場合があるので注意を要する。
,ターミナルケア6月増刊号(1999),9,,67

#1
【7.10.2.b】:7
 イレウスの場合、腹痛、嘔気・嘔吐、腹満といった症状一つ一つに対応していく必要がある。サンドスタチンは鎮痛薬、制吐薬、ステロイドといった薬剤と併用してはじめて効果を発揮する。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,63

#1
【7.10.2.b】:8
 米国のマニュアルでは、腸閉塞患者に対する典型的な持続皮下注入として、モルヒネ60mg、ハロペリドール1.5mg、オクトレオチド(サンドスタチン)0.3mg、ヒドロキシジン(アタラックスP) 25mgの混合液の24時間投与が紹介されている。
,ターミナルケア(2002),12,6,459

*5
【7.10.2.b】:9
 サンドスタチンは上部消化管閉塞には十分な効果はない。
,ホスピス・緩和ケア白書(1998),,,27
   
 

 

Copyright 1997-2003 Akira Dobashi, Department of Pharmaceutical Information Science (formerly, Department of Structural Organic Chemistry).All rights reserved.
HTML code by Hiroyoshi Horinaga of keypuncher.com.
Please send comments or questions about this site to dobashi@ps.toyaku.ac.jp.