| 【7.22】「適応障害」 | |
| #1 適応障害とは、強い心理的ストレスのために、日常生活に支障をきたす(仕事や家事が手につかない、眠れないなど)程度の不安、抑鬱などを呈するもので、いわゆる反応性の疾患である。通常は、鬱病や全般性不安障害(いわゆる不安神経症)などの他の精神疾患を除外することによって診断されるが、癌患者においては、特に先行する精神疾患の既往がない場合、鬱病、せん妄を除外すればほぼ十分であることが多い。なお、癌患者においては、不安、抑鬱両者が混在するものが多い。 適応障害の治療は概ね精神療法と薬物療法に大別されるが、とりわけ精神療法は不可欠である。また、背景に適切にコントロールされていない身体症状(特に痛み)や家族の問題などが存在することも少なくないため、常に包括的なケアを念頭におく必要がある。 (1)支持的精神療法 最も一般的で、そして有用なのは支持的精神療法である。支持的精神療法は、癌に伴って生じた役割変化、喪失感や不安感、抑鬱感をはじめとした情緒的苦痛を支持的な医療者との関係、コミュニケーションを通して軽減することを目標とする。その基本は、患者の言葉を非審判的な態度で支持し続けることにある。最も重要なことは、患者をよく理解することであり、この理解することこそが、患者のために医療者がなしうる最も支持的なことである。したがって、患者に対する理解を深めるために、現在の問題、過去の問題、そしてこれまでの患者が歩んできた人生の歴史を十分に聴くことが重要である。持に癌患者とのコミュニケーションにあたっては、個々の患者における病気の意味に視点を置くことが重要であり、これらを通して、病気が患者の生活史に与える衝撃の意味を理解し、患者の感情と苦しみは今まさに正しく理解されつつあると患者に言語的あるいは非言語的に伝えることが治療的に働く。 実際的には、「病気を受容すること]を目標にするのではなく、その人なりの方法で病を理解し適応していくことを援助することが有用であることが多い。このために医療者はまず、病気とその影響について患者が抱いている感情の表出を促し、それらを支持・共感しながら現実的な範囲で保証を与えていく。自分の感じるままを言葉にしても常に支持しようとする医療者に接することは、癌患者にとって非日常的な体験であり、患者の自己評価を高め、対処能力を強化する。“病気に負けないで頑張りなさい”と安易に励ますことは、患者の精神的負担や自責感をかえって増幅してしまうため好ましくない。 また、癌患者は比較的高齢であることが多く、癌に罹患することはそれ以前に経験された喪失に喪失を重ねることでもあるため、自己評価を高めるために、面接により人生を振り返ることを通して、これまでの人生で達成してきたこと、誇りに感じていることなどを再確認する手助けをすることが有効であることも多い。 (2)薬物療法 薬物療法は、精神療法のみでは効果が不十分である時や患者の苦痛が著しく強い時に考慮する。抑鬱、不安など顕在化している精神症状や患者の身体状態によって選択薬剤が異なるが、抗鬱効果も期待でき、また半減期の短い抗不安薬アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)から投与することが実際的である。例えば、アルプラゾラムを0.4〜1.2mg/日程度の少量から開始し、適宜増減する。アルプラゾラムで効果が十分得られない場合、抑鬱気分を主体とした適応障害であれば、鬱病治療に準じて抗鬱薬への変更または併用を行い、不安が優位な適応障害であれば他剤への変更を考慮する。いずれの場合も、少量から開始し、眠気やふらつきといった副作用の出現などの状態をきめ細かく観察しながら、状態に応じて適宜漸増していくことが原則である。抗不安薬による副作用の代表的なものは眠気とふらつきであるが、時としてせん妄を惹起することもあるので、特に高齢者や衰弱した患者においては注意が必要である。抗不安薬に関しては、症状が改善すれば、漫然と継続使用することなく、徐々に減量していくことが望まれる。 ,がんの在宅医療(2002),,,189 |
|
![]()
Copyright 1997-2003 Akira Dobashi, Department of Pharmaceutical Information
Science (formerly, Department of Structural Organic Chemistry).All rights
reserved. |