【7.23】「抑鬱」
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【7.23】:1
 抑うつと悲しみとを混同してはいけない。悲しみは、終末期に至ったと知ることに対して起こる通常の反応であるが、抑うつは特定の病的状態であって、異常である。
 抑うつは終末期患者の5〜10%に起こるが、治癒可能である。がん、エイズ、その他の疾患の終末期の患者における抑うつを対応不能な症状とみなすべきではない。患者が悲しくなり、悲嘆に苦しむことがあってもよいが、生涯の最期の日々に起こる抑うつを治療せず、患者が抑うつに耐えている状態に陥らせたままにしておいてはならない。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,50

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【7.23】:2
 終末期に至っていない患者では、睡眠パターン、疲労、便秘、食欲不振などの身体的変化が抑鬱の診断に結びつくが、終末期患者では、これらの症状が普通にみられるため、抑鬱の有無の判断の指標にはならない。したがって、抑鬱は次のような心理学的特徴を根拠に診断するとよい。
・少なくとも1日の半分の時間は抑鬱的な気分となり、それが2週間以上続いている。
・普段なら喜ぶべきことが起こったときや喜ぶべき人々に出会ったとかに関心を示さない。
・社会面の活動から遠ざかっている。
・自分の身だしなみに関心がない。
・顔に表情がない。
・集中力が低下している。
・泣くことが多い。
・絶望感に陥っている(残りの人生の中でやるべきことが何もなくなったと感じている)。
・死んでしまったほうがよかったとの気持ちになっている。
・罪悪感を持っている。
・自分には価値がないと思い、自尊心が低下している。
・自殺念慮がある(これが自殺を試みたり、安楽死を求めることにつながることがある)。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,50

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【7.23】:3
 たとえば、自分の病状を知っている患者が「死にたい。早く逝きたい」と訴えることはよくある。これはspiritual painが原因になっている場合もあるが、抑鬱が引き金となっていることもある。抑鬱が現れたら、抗鬱薬で積極的に治療をしたほうがよい場合がある。
,ホスピスケアの実際(2000),,,41

 
【7.23】:4
 ターミナルにおいて、持続する癌性疼痛により、疼痛そのものより治療困難な鬱状態を生じることが多い。このような疼痛の治療に抗鬱薬を使用し、疼痛を軽減し鎮痛薬を全く中止し得る場合がある。投与方法は内服ではトフラニールを50〜75mgで開始し効果により150〜255mgまで増量し維持量とする。筋注では1回25mgを1日2〜3回投与する。効果発現まで3日あるいは4週間以上を要する。治療がうまくいった場合、患者は「疼痛はあるが余り気にならない」状態になる。これはトフラニールに特徴的な鎮痛効果である。
,臨床薬学マニュアル(1990),,242

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【7.23】:5
 抑鬱の薬物療法
(1)軽症の抑鬱であれば、抗不安薬のアルプラゾラム(0.4〜1.2mg/日)が第一選択薬となる。選択的ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)であるミルナシプラン(50〜150mg/日)も薬剤相互作用が少ないので使用しやすい。
(2)中等症の抑鬱に対しては、比較的副作用の少ない選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)であるフルボキサミン(50〜200mg/日)やパロキセチン(10〜40mg/日)を用いる。
(3)重症の場合(とくに自殺念慮を有する場合)には、鎮静作用の比較的強い抗鬱薬であるトラゾドン(75〜200 mg/日)、あるいは三環系抗鬱薬のノルトリプチリン、アミトリプチリン、クロミプラミンなど(75〜200mg/日)が頻用される。
(4)経口摂取ができない場合には、三環系抗鬱薬のクロミプラミンあるいはアミトリプチリン(12.5〜50mg/日)を7〜10日間程度、緩徐に点滴静注する。
,TECHNICAL TERM 緩和医療(2002),,,144

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【7.23】:6
 抑鬱の支持的精神療法
 抑鬱を呈した患者への精神療法的アプローチの基本は、まず安易な励ましや早すぎるアドバイスは避け、患者の気持ちを素直に言葉に表わすようにうながし、その言葉に真剣に耳を傾け、批判や解釈を加えることなく患者の言葉に対して肯定的に接し、それまでの患者の言動を強力に支持することである。
 また、抑鬱患者に最低限話しておくべき治療的説明としては、(1)抑鬱は待てば必ず回復することを保証し、(2)静養と服薬を心がけるように伝え、(3)重要な事柄(退院、治療放棄、退職、離婚など)の決定をひとまず保留・棚上げにし、(4)(とくに自殺念慮の強い場合、口頭でよいから)絶対に自殺にしないと約束させること、の4点が肝要である。
,TECHNICAL TERM 緩和医療(2002),,,145

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【7.23】:7
 イミプラミン(トフラニール)
 錠剤:1回10〜25mg1日3回。
 クロミプラミン(アナフラニール)
 錠剤:1回1O〜25mg 1日3回。
 注射剤:1回12.5〜25mg 点滴静注(2〜4時間)。

 抑うつに対してアナフラニール注射液は1回12.5〜25mg、ブドウ糖液500mLに溶解し、2〜4時間かけて点滴静注。即効性があり点滴静注が可能なので、経口投与が困難な場合に有効である。抑鬱気分、悲哀感、絶望感の強い場合は、気分高揚化作用のあるイミプラミンやクロミプラミンを使用する。イミプラミンは最も早く発売された標準的抗鬱薬であり気分高揚作用が強いが、効果発現は遅い。これに対してクロミプラミンは気分高揚作用が強く、速効性があり、点滴静注が可能である。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,54
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,190

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【7.23】:8
 アミ卜リプチリン(トリプタノール)
 錠剤:1回 10〜25mg、就寝前。
不安、焦燥、内的不穏を主とした抑鬱に有効である。アミトリプチリンは抗コリン作用が最も強い。鎮静作用が強いので、就寝前に服用させることが有効である。強い不穏や激越状態にある比較的若い患者が適応となる。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,191

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【7.23】:9
 マプロチリン(ルジオミール)
 錠剤:1回10〜25mg、 1日3回。
 ミアンセリン(テトラミド)
 錠剤:1回10〜30mg 就寝前。
四環系抗鬱薬は副作用としての眠気が少なく、抗コリン作用も少ない。高齢者や体力低下の著しい患者に使用しやすい。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,191

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【7.23】:10
 トラゾドン(デジレル)
 錠剤:1回25mg1日3回。
セロトニンの再取込みの抑制があり、抗コリン作用は弱い。副作用が少なく、高齢者や身体疾患のある患者にも投与可能である。不安、焦燥、睡眠障害の強い鬱病に有効である。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,191

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【7.23】:11
 フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
 錠剤:1回25〜75mg 1日2回。
選択的セロトニン再取り込み拮抗薬(SSRI)であるフルボキサミンは、三環系抗鬱薬と同等の効果があり、かつ副作用が極めて少なく、全身状態の悪い末期癌患者においては使用しやすい。シサプリド(アセナリン)とチオリダジン(メレリル)との間に併用禁忌があり、同時には使用しないよう注意する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,191

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【7.23】:12
 メチルフェニデート(リタリン)
 錠剤:1回1O〜20mg、1日1回朝または2回(朝、昼)。
生命予後が数週の末期状態の場合、三環系抗鬱薬などは効果発現までに充分に時間がなく、また副作用を考えると適応となりにくい。このような場合には、鬱病やナルコレプシーの治療薬であり、中枢神経刺激薬であるメチルフェニデートが有用である。この薬剤は、精神賦活作用があり集中力や注意力、食欲、全身倦怠感、疲労感、オピオイド投与に伴う眠気などを改善する。また、三環系抗鬱薬と比較して数時間から数日内に効果がみられるという速効性が特徴的である。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,192

 
【7.23】:13
 抑鬱気分が強いと判断したら、速効性で副作用の少ないドグマチールから開始する。効果が不十分ならレキソタンを加えるのがよいと思われる。次いで、本格的な抗鬱薬の投与を行う。
,がん患者の痛みの治療(1994),,,128

 
【7.23】:14
 癌末期患者におけるステロイド大量間欠投与の効果。ステロイドには投与中に多幸感などの精神的高揚が見られることがある。落ち込み、沈痛状態にある患者に、この作用を利用した治療を行った報告がある。使用薬剤はソルコーテフ2000mg/日、5日間連続。
,終末期医療(1991),,0,81

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【7.23】:15
 抑鬱状態にリタリンは三環系抗鬱薬より速効性がある。これまではオピオイドの鎮静作用に拮抗させる目的で使われてきた。本剤が奏効すれば、三環系抗鬱薬も奏効することが多い。副作用には悪夢、不眠症、不安がある。投与量は5〜10mg 1〜2回/日。
,ターミナル・ケアの症状緩和マニュアル(1998),,,72

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【7.23】:16
 薬物療法としては、抗鬱効果も期待できるコンスタンから投与するのが実際的である。たとえば、0.4〜1.2mg/日(分1〜3食後)程度の少量から開始し、適宜増減する。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,143

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【7.23】:17
 ベンゾジアゼピン系の薬は抑鬱を悪化させることが多いが、コンスタンは、不安と抑鬱とが混在している患者が夜間の鎮静を必要とし、抗鬱薬による抗コリン作用に耐えられないときに有用な薬である。しかし、高度な抑鬱に単独で投与してはならない。本剤を長期投与したときには突然に中止してはならず、また他のベンゾジアゼピン系の薬に安易に切り替えてもいけない。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,54

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【7.23】:18
 癌患者に多く認められる軽症の抑鬱に対しては、抗不安薬から投与する。
,Evidence-Based Medicineに則ったがん疼痛治療ガイドライン(2000),,,144

【7.23】:19
「ここもあそこも、そこもどこも痛む」とベラベラと訴える患者には抗鬱薬が効く。鬱状態かどうかを確認した後に投薬すると、多くは劇的に効く。このような状態の患者さんは嘘かと思えるほどいろいろと訴える。癌の全身転移かと思ったとき、抗鬱薬の使用を検討したい。
,JIM(1992),2,6,497
   
 

 

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