【7.3】「高カロリー輸液の問題点」
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【7.3】:1
 多くの施設では、末期癌患者の食事摂取量が低下すると高カロリー輸液を始める。ターミナル前期のある時期までは体力維持につながり有効であるが、ターミナル中期以降の患者では代謝低下や悪液質の状態となっており、高カロリー輪液は無効である。また、高カロリー輸液を行っても、血清アルブミン値などの栄養状態の改善につながることはほとんどない。また、高カロリー輸液自体が食欲不振、口渇、嘔気・嘔吐、高血糖、電解質異常、感染、循環動態異常、胸水や腹水の増加、全身浮腫の原因となって、患者を逆に苦しめる結果となっている。
 この場合、高カロリー輸液を中止して維持輸液に変更するだけで、食欲が改善したり他の症状が緩和されたりすることがある。現在「高カロリー輸液が末期癌患者の栄養状態や悪液質を改善して延命効果になる」という明らかな臨床データはない(逆に命を短くすることになっている場合がある)。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,83

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【7.3】:2
 「食事がとれないから点滴する」前に、なぜ、その患者が食事をとれないのかを評価することが不可欠である。患者は、輸液を受けることよりも、自分の口でものを食べることを望んでいる。いたずらに輸液を開始する前に、適切な評価、および、緩和治療を行うことが重要である。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,106

 
【7.3】:3
 高カロリー輸液は予後が数ヶ月期待できるときは継続するが、以下のような場合には、普通の輸液に変更する。
(1)ターミナル中期以降(予後が数週間)
(2)高血糖(耐糖能の低下)
(3)胸水・腹水の貯留
(4)肝・腎機能低下
(5)末期癌特有の全身倦怠感が著明なとき
(6)高カロリー輸液を2週間続けて施行しても、全身状態や栄養状態の改善が見られない場合。
 患者の状態によって輸液量を調節し、場合によっては中止する。輸液を施行する場合も、ヘパリンロックを行いできるだけ輸液チューブ類から解放される時間を設定する。高カロリー輸液を施行する場合、ヘパリンロックを行いできるだけ輸液チューブ類から解放される時間をつくる。
,ターミナルケアマニュアル第2版(1992),,,164
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,189
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,228

 
【7.3】:4
 癌末期患者に高カロリー輸液を施行するのは疑問である。実際には経口摂取不能患者に輸液を施行すると浮腫が起こり、むくんだ状態のまま死亡することが多い。QOLの観点から輸液療法が末期癌患者にとって有効な治療であるという報告はみられない。たとえ輸液療法が患者に幾ばくかの延命をもたらすにしても、しばしば延びた寿命はそのまま癌による苦痛の延長になる可能性が高い。
 末期癌患者の多くは経口摂取できなくなると一週間以内に死亡する。脱水の進行とともに血圧は徐々に下がり、患者はだんだんと眠っている時間が長くなる。骨転移や神経浸潤などのコントロールが困難な癌性疼痛もあまり訴えなくなる。やがて1日のほとんどをうつらうつらと過ごし、最後には眠った状態でこの世を去る。このときに患者の表情に苦痛の色を見ることはまれである。
,退院後のがん患者支援ガイド(1995),,,68

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【7.3】:5
 筆者は原則として、ターミナル中期(生命予後が1ヵ月以内と考えられる時期)以降の高カロリー輸液は行わないことにしている。この時期の消化管閉塞患者の場合、輸液は通常の維持輸液がよく、輸液量は経験的に1000 ml/日以上にすべきではないと考えられる。症状によっては500ml/日以下にしたほうが患者の安楽が得られる。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,183

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【7.3】:6
 癌患者に対する高カロリー輸液とACS(食欲不振-悪液質症候群)の関係を調査した研究が、とくに周術期において複数なされている。これらの研究において、高カロリー輸液を受けた患者群は多くのカロリーを摂取することは可能であるが、対照群とくらべて栄養学的な指標や機能に有意差はみられなかった。そればかりか合併症が増加し生存期間の減少がみられたと結諭づけられている。つまり、現在のところ高カロリー輸液によって明らかにACSが改善するというエビデンスは存在しない。むしろ合併症によって生存期間が減少してしまう可能性がある。
,TECHNICAL TERM 緩和医療(2002),,,163

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【7.3】:7
 末期患者に高カロリー輸液が好ましくないことは多くの医師に認識されてきたが、急性期医療に慣れた医師にとって高カロリー輸液を中止することには抵抗感がある。輸液の減量で腸管分泌も減り、腹部症状も全身浮腫なども軽減し、症状緩和されることが期待できるので常に輸液の減量・中止を考えておくことが重要である。輸液の目的、意味や欠点を患者家族に説明して、残された時間のなかで何を優先するか、共に考えることが重要である。仮に輸液の意義が不明確なときは、数日間輸液を半減あるいは中止して、患者の安楽が増すか試すことを提案すると良いと思われる。こうして、患者の希望で輸液を中止し、レペタンの舌下のみで最期の数日を看取った経験がある。
 輸液を減量しても、口渇を訴えることは意外に少ない。訴える場合は、少量の水分の経口摂取を許可する。患者によっては、時々自分で吐くことを前提に水を飲むことを選択する人や、自分で1日数回胃管を挿入して吸引後抜去することができる人、経鼻胃管の持続留置が苦痛でないとする患者もある。
 水分補給の方法として、過去に行われていた大量皮下注入が、持続点滴のラインが不要で管理しやすく、在宅患者のQOLが高いとする報告があり、また、死亡前3日間に輸液しない方針でもQOLの低下がみられなかったという報告もある。末期状態での輸液のあり方は、再検討する必要がある。
,ターミナルケア(2002),12,6,459
   
 

 

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