【7.33】「鎮静」
  【7.33】:1
 ターミナル後期になると意識を保ったまま苦痛を緩和することが困難になることがある。こんなときは家族とよく話し合って、鎮静が唯一かつ最善の方法であること、そして鎮静によって生命が短くなることはないことをよく説明してから鎮静の手段を実行する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,27

#1
【7.33】:2
 セデーション(鎮静)開始時のチェック項目
 (1)標準的な症状緩和を試みても緩和不可能な症状か
 (2)死期が迫った病状か
 (3)患者または家族の同意があるか
 (4)スタッフ間での合意がなされたか
,死をみとる1週間(2002),,,45

*5
【7.33】:3
 臨終間際の倦怠感、呼吸困難で患者がなんとかして欲しいと訴えたとき、まず、通常の睡眠時間を除いた時間帯における間欠的な鎮静法を提案してみる。ドルミカムの点滴などを用い数時間の鎮静を行うと、覚醒後安定した時間が過ごせる場合が少なくない。だが、やがて覚醒している限り耐え難い苦痛を感じ続けるような状態になる患者も多い。その時点から、持続的な鎮静が有効な治療法となる。
,ターミナルケア(1998),8,1,7

 
【7.33】:4
 末期における鎮静で使用する薬剤について以下に示す。

・(ドルミカム)【適応外】
持続皮下注や持続点滴で使用できる。持続皮下注入の場合、モルヒネやレペタンと混合しての使用が可能である。
作用発現が速やかで半減期は約3時間と短い。
投与量は20mg/日程度より開始する。
持続皮下注入で100mg/日以上投与しても十分な鎮静が得られない場合、可能であれば持続点滴に変更する。持続点滴が不可能であれば、持続皮下注入でさらに増量する。

・(セレネース)【適応外】
持続皮下注や持続点滴で使用できる。
呼吸抑制が生じにくい。
投与量は10〜15mg/日程度より開始する。
50mg/日まで増量しても十分な鎮静が得られない場合、他剤への変更あるいは併用を考慮する。

・(ハイスコ)【適応外】
持続皮下注法で使用する。
死前喘鳴のある場合、分泌抑制作用もあり、特に有効である。
血圧低下や呼吸抑制があるため、少量より注意しながら投与する。
投与量は1.0mg/日程度より開始する。
3.0mg/日まで増量しても十分な効果が得られない場合、他剤への変更あるいは併用を考慮する。

・(ジアゼパム)
持続点滴で使用できるが、皮膚への刺激が強すぎるため持続皮下注では使用しない。
抗痙攣作用がある。

・(モルヒネ、レペタン)
痛みで既に使用している場合、投与量を増加することで鎮静効果が得られる。
投与量が多くなりすぎると著明な呼吸抑制が出現するので、その時は減量する。

#1
【7.33】:5
(1)浅いセデーションを行う場合
ハロペリドールの持続皮下注入法:セレネース(1アンプル:5mg 1mL)を0.75〜1.25mg/時より開始し、症状を観察しながら2.5 mg/時まで増量する(セデーションの効果は十分でないことが多い)。

(2)中等度のセデーションを行う場合
ミダゾラムの持続皮下注入法:ドルミカム(1アンプル:10 mg 2mL)を2〜2.5mg/時より開始し、症状を観察しながら4mg/時まで増量する。

(3)深いセデーションを行う場合
フェノバルビタールの持続注入法:フェノバール(1アンプル:100 mg 1mL)【適応外】を25〜50mg/時より開始し、症状を観察しながら80mg/時まで増量する(十分な効果発現までには6〜12時間かかり遅いが確実性は高い)。(最近、フェノバールの溶媒が気化して注入ポンプのプラスチックを脆くする可能性を報告されている。したがって、使用する場合には溶液が漏れないよう注意する必要がある。)

(4)急速にまたは間欠的セデーション
ミダゾラムの持続点滴法:ドルミカム 10mg を生理食塩水液100mL に希釈する。これを15〜25mL/時(ミダゾラムとして1.5〜2.5mg/時)より開始し、症状を観察しながら30〜50mg/100mL(ミダゾラムとして7.5〜12.5mg/時)に増量する。

(5)直腸投与によってセデーションを行う場合
ブロマゼパム、ジアゼパム、フェノバルビタールの坐剤の使用:まず1個を挿肛し効果を観察する。その後、患者の状態に注意し苦痛が再出現しそうな時間に挿肛するように指導する。1日2〜6個定期的な挿肛で十分なセデーションが得られることが多い。しかし、頻回の挿肛が患者に苦痛を与える場合には、持続皮下注入法への変更を考慮する。
,ホスピスケアの実際(2000),,,125

#1
【7.33】:6
(1)浅い鎮静を行う場合
セレネース0.25〜0.5mg/時の持続皮下注入より開始。症状を観察しながら2.5mg/時まで増量。鎮静の効果は十分でないことがある。
フェノバール5〜15mg/時の持続皮下注入より開始。患者の苦痛が高度でなければ少量投与が有効である。呼名で覚醒し応答が出来るレベルが得られる。
(2)中等度の鎮静を行う場合
ドルミカム2〜3mg/時の持続皮下注入より開始。症状を観察しながら4mg/時まで増量。
(3)深い鎮静を行う場合
フェノバール10〜20mg/時の持続皮下注入より開始。症状を観察しながら、50mg/時まで増量。十分な効果が発現するまで12〜24時間を要する。確実性は高い。
(4)急速又は間欠的な鎮静を行う場合
ドルミカムの点滴静注。1〜2mg/時より開始する。症状を観察しながら増量し10mg/時まで増量する。
(5)坐剤による鎮静を行う場合
ブロマゼパム(セニラン)、ジアゼパム(ダイアップ)、フェノバルビタール(ワコビタール)などの坐剤:1/2〜1個を直腸内投与。症状を観察しながら必要時に追加。1日必要量がわかれば定期的使用。在宅ターミナルなどで使用。頻回に使用することが患者・家族にとって苦痛であれば、持続皮下注入法に変更。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,236

#1
【7.33】:7
 不眠や不穏でセデーションが必要な場合にはブロマゼパム(セニラン)の坐剤1.5〜6mg/日、またはフェノバルビタール(ワコビタール)の坐剤100〜400mg/日を必要に応じて使用する。全身倦怠感が強い場合には、ベタメタゾン(リンデロン)坐剤を必要に応じて使用する。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,230

 
【7.33】:8
 ターミナル後期における、鎮静には様々な手段があるが、淀川キリスト教病院ホスピスではドルミカムの持続皮下注入法や持続点滴法またはフェノバールの持続皮下注入法を行っており有効である。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,27

#1
【7.33】:9
 ミダゾラムはくり返し投与しても血漿濃度は安定しており、蓄積傾向もみられない。一方、ジアゼパムはくり返し投与により蓄積傾向が認められる。心血管系および呼吸器系に対する副作用はチオペンタールにくらべ非常に少なく安全であり臨床的に問題となることは少ない。しかしながら、高齢者、心不全、肝・腎機能障害患者ではt1/2は健常者の2倍以上になることや、持続的に静脈内投与した場合の血中濃度は非常に個人差が大きいことなどより、終末期癌患者において、その投与初期には持続的な観察が必要であると思われる。
,緩和医療(2001),3,3,41

#1
【7.33】:10
 フェノバルビタールによる鎮静
 ミダブラムで耐性ができ、より深い鎮静が必要なときは、フェノバルビタール(フェノバール)を使用する。持続皮下注入法で10〜20mg/時より開始し、症状を観察しながら50mg/時まで増量する。持続注入器でO.lmL〜0.2mL/時で注入開始とする。十分な効果発現まで12〜24時間を要するが、確実性は高い。深いセデーションが目的ではあるが、茅根らは少量のフェノバルビタールの持続皮下注入法(240〜360 mg/日)は、末期癌患者の耐え難い苦痛を軽減し、かつ患者と会話可能なレベルにセデーションが得られる可能性があると報告しており、「意識のあるセデーション」は今後の検討課題の一つである。
,死をみとる1週間(2002),,,47

#1
【7.33】:11
 conscious sedation(会話が出来る程度の鎮静)を目標とした使用法においては、フェノバルビタールは持続皮下注入で投与する。投与量としては5〜10mg/時で開始し、1〜2日程度意識レベルを評価しながら5〜15mg/時で維持する。効果発現までには、0.5〜2日程度要するため、必要な場合にはドルミカムの点滴静注による間欠的な鎮静(セデ−ション)やブロマゼパムの経直腸投与などを併用する。
 フェノバルビタールの半減期は50〜15O時間であり、蓄積性も高いのて、いちど深い鎮静の状態になると減量しても短時間には回復しない。したがって、開始量は少量が望ましい。注射剤は有機溶媒に溶解されているので、他の薬剤との混注は不可能である。この有機溶媒は揮発性があり、プラスチックの腐食作用をもっているので、注入ポンプを使用する場合には注意し、投与ルートも一般の薬剤に比べて頻回に交換する必要がある。
 フェノバルビタールの坐剤も発売されており、1日10O〜200mgの投与で持続皮下注入と回様の効果が得られると考えられ、持続注入ポンプがない場合や在宅においては有用である。
,わかるできるがんの症状マネジメントU(2001),,,319

 
【7.33】:12
 死亡直前に出現する緩和困難な疼痛(消化管穿孔や肝腫瘍などの腹腔内出血、絞扼性イレウスなど)も鎮静の適応となる。鎮静施行下でも、それまで行われていた鎮痛治療は継続すべきである。一時的な入眠で症状が緩和されると考えられるときには、主に点滴静注によって間欠的な鎮静を行えばよい。
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,193
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,233

#1
【7.33】:13
 浅いセデーションとしてミダゾラムを使っても、患者の苦痛が軽減せず、「眠りたい」と訴えることもある。そのような場合には、やはり深いセデーションを選ぶべきである。深いセデーションの方法としては、ミダゾラムとハロペリドールの併用、あるいはフェノバルビタールの皮下注などがあります。英国の文献では、ミダゾラムを使っても呼吸・循環器系に対して大きな影響を及ぼすことはないといわれている。しかし量的な問題については明らかになっていない。ミダゾラム投与が大量になれば影響を及ぼす可能性もあるが、この点については今後の検討課題である。
,ホスピスケアの実際(2000),,,12

#1
【7.33】:14
 サイレースの副作用はベンゾジアゼピン系薬剤の副作用に準ずるが、とくに本剤にはヒスタミン遊離作用があり、静注後に急激な血庄低下を認めることがあるため、高齢者、脱水状態、終末期癌患者のように身体状態が極度に衰弱している症例などに使用する際には注意を要する。
,緩和医療(2001),3,3,42

#1
【7.33】:15
 大量喀血の死亡率は75%であるが、進行癌患者では蘇生術の実施は不適切である。ドルミカム5〜10mgあるいはセルシン10〜20mgを患者の意識がなくなるまで静脈内に投与すべきで、静脈路が確保できていないときには、セルシン10〜20mgを直腸内に注入する。看護師か医師が患者に付き添い続ける必要がある。他の部位からの大量出血が起こったときも、急性気管支圧迫が起こったときもこれと同じ方法をとる。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,62

#1
【7.33】:16
 生命を短縮しようという明確な意図がなかったとしても、鎮静の結果、生命予後が短縮するかは医療者にとって主要な倫理的ジレンマの一つになりうる。この点についてはいくつかの報告があり、Moritaらの観察的研究では、鎮静の対象症状それ自体、予後不良な臓器不全を反映していることが血液検査や画像診断の結果から支持された。また、鎮静を受けた患者と受けなかった患者において緩和ケアの開始から死亡までの予後を比較した予備的研究では、いずれも、生命予後に有意な差は認められなかった。オピオイドや鎮静薬の投与量によって生存期間に差があるかを検討した二つの研究においても、鎮静作用のある薬物と患者の生存期間には明確な関連はなかった。さらに、多様な予後の規定因子を統計学的に調節して比較した研究においても、鎮静薬の使用の有無は患者の予後に有意な影響を与えていないことが示されている。
 鎮静が生命予後を短縮するか否かは、厳密には、鎮静によってしか緩和されない苦痛をもった患者で鎮静を受けたものと受けないものとの予後を無作為化試験で比較検討しなければ結論することはできない。しかし、このような研究は明らかに非倫理的であり、現実に実施されることはないと考えられる。したがって、現在得られている知見を慎重に解釈することが次善の手段である。全体としてみると、鎮静が、臓器不全に伴うほかの手段によって緩和できない苦痛を対象としておこなわれているかぎりにおいて、患者の生命予後を意昧のある幅をもって短縮するとは考えにくい。適切な方法で鎮静薬を投与したにもかかわらず呼吸・循環抑制が生じ死亡につながる場合は存在すると思われるが、それはもし起こったとしても、「尊厳のある、容認できる生活状況を維持するのに必要な治療手段にさえ耐えられないほどに患者の状態が悪化していたこと」を意昧すると考えられる。
,緩和医療(2001),3,3,32

#1
【7.33】:17
 鎮静後のステロイド
 ステロイドは、末期において倦怠感の軽減、食欲増進、気分の高揚、疼痛緩和など効果は多岐にわたり汎用する薬剤であるが、セデーション後は中止したほうがよいと考える。
,死をみとる1週間(2002),,,48

 
      参照−【7.4】「緩和医療における向精神薬の使用上の注意」
      参照−【7.32】「持続性の不穏、せん妄、混乱」
   
 

 

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