【7.35】「死亡直前期」
  #1
【7.35】:1
 死が近づいていることのおよその予測
・死亡前1週間以内
 1)トイレに行けなくなる
 2)水分が飲めなくなる
 3)発語が減ってくる
 4)見かけ(general appearance)が急激に弱ってくる
 5)眼の勢いがなくなってくる(注視能力の低下)
 6)原因の特定しにくい意識障害・傾眠傾向が出現してくる

・死亡前48時間以内
 1)一日中、反応が少なくなってくる
 2)脈拍の緊張が弱くなり、確認が難しくなってくる
 3)血圧が低下してくる
 4)手足が冷たくなってくる
 5)手足にチアノーゼが認められる
 6)冷汗が出現する
 7)顔の相が変わる(顔色が変わる)
 8)唾液や分泌物が咽頭や喉頭に貯留し、呼気時にゴロゴロと不快な音が出現する  (死前喘鳴)
 9)身の置きどころがないかのように、手足や顔などをバタバタさせるようになる
,死をみとる1週間(2002),,,25

#1
【7.35】:2
 死亡前48時間の患者マネジメントの原則
 1)苦痛緩和が最も重要であることに十分配慮する 
 2)不必要な医学的介入を避ける 
 3)定期的に全ての投与薬剤と症状を評価する 
 4)患者・家族との効果的なコミュニケーションを保つ 
 5)家族・介護者の援助も確実に行う
,死をみとる1週間(2002),,,26

*5
【7.35】:3
 最期の数日間、食物や水分摂取の減少はおそらく死にたいする正常な生理的メカニズムである。空腹や口渇はこの期間ではまれである。患者がもはや確実に嚥下できない場合、腸管栄養を中止すべきである。理想的には輸液を投与してはならない。患者を軽度の脱水に導くことは、最期の数時間に苦痛をもたらす多くの問題を軽減する。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,286

#1
【7.35】:4
 予後の短い患者で日単位で病状の悪化が見られる場合、経口摂取は必ずしも必要ではない。生命の最終段階での脱水は苦痛ではなく、尿量の減少、気道分泌物や嘔吐の軽減や消失などの利点がある。死を前にした脱水は自然な経過である。
,フローチャートで学ぶ緩和ケアの実際(1999),,,30

*5
【7.35】:5
 末期における脱水の管理には、まず患者の家族に輸液の害の説明を行う。説明にもかかわらず、家族が輸液の実施を望む場合は、静脈内または皮下に1〜1.5リットル/日を超えない速度で輸液を行う。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,286

 
【7.35】:6
 死亡直前の患者を目の前にして、家族は何をしてよいかわからなくなる。患者の手足を撫でることや、呼びかけ(聴覚は最後まで残るため)を勧めるとよい。
,ターミナルケアマニュアル第2版(1992),,,13
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,13
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,30

 
【7.35】:7
 患者が死亡する前に家族にとって気になる症状として、呼吸の変化と呻吟がある。患者自身は苦しみから解放されているので、家族には「衰弱が進むと、このような症状が出ますが、患者さんはもう苦しみから解放され、苦しくはありませんので安心してください」というような説明をするとよい。
,ターミナルケアマニュアル第2版(1992),,,13
,ターミナルケアマニュアル第3版(1997),,,13
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,29

#1
【7.35】:8
 死直前の大きな雑音を伴う頻呼吸は患者には感知されていないのであるが、患者の家族や他の患者にとって非常につらい体験となる。治療目標は、雑音を減らして、他の人々にとっての辛さを緩和することにある。そのために、モルヒネを10mgないしそれ以下の静脈内投与を行って呼吸数を1分間12〜20回に減らし呼吸の深さも減らす。すでに強オピオイドが投与されている患者の場合は投与量を2〜3倍に増量をする。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,63
     
  【7.35.1】「死前喘鳴」
   

【7.35.1】:1
 患者が死に直面している場合や非常に衰弱した状態で喀痰を自力で出せない場合に、分泌物が下咽頭に溜まり、呼吸によって振動して雑音を発するようになる。これを死前喘鳴という。
 治療は体位の変換や分泌物の吸引の他に、薬物治療として、スコポラミン【適応外】0.3〜0.8mg(皮下注)数時間ごとや、アトロピン0.3〜0.8mg(皮下注)がある。
,癌の痛みハンドブック(1992),,,143

#1
【7.35.1】:2
 死前喘鳴が出現する頃になると、通常患者の意識は低下しているので、死前喘鳴は患者にとっては苦痛でないことが多い。しかし、患者の家族にとっては非常に苦痛であり耐え難い場合があり、治療の対象となる。このような場合、ハイスコが有効である。単独投与の場合は舌下(0.15〜0.25mg、1日1〜4回)を行うが、頻回の投与が必要な場合は持続皮下注入(0.5〜1.5mg/日)を行うとよい。ブスコパン注の場合は20〜60mg/日、持続皮下注入。
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,131

#1
【7.35.1】:3
 臭化水素酸スコポラミン(ハイスコ)【適応外】
 制吐作用、分泌抑制作用があるので、ターミナル時に嚥下困難があって唾液分泌亢進により口からよだれがあふれ出してくるような場合や、咳、死前喘鳴の対策としても用いられる。
 投与方法は頓用方式(0.25mg〜0.5mg/回、4〜6時間毎、皮下注)または持続投与(静注・皮下注、0.5〜3.0mg/日)とするが、蓄積による効果増強に注意する。
,ペインクリニックで用いる薬100+α(2002),,,121

#1
【7.35.1】:4
 死前喘鳴に対するハイスコの投与量
 臭化水素酸スコポラミン(ハイスコ)【適応外】
 舌下:1回注射剤0.15〜0.25mg (0.3〜0.5mL)、1日1〜4回。
 注射剤:O.5〜1.5mg/日、持続皮下注入
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,131

#1
【7.35.1】:5
 ハイスコの有効限界は1日あたり5Aとされ、それ以上投与しても効果の増強はみられない。
,誰でもできる緩和医療(1999),,,193

#1
【7.35.1】:6
 死前喘鳴に対するブスコパンの投与量
 臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン)【適応外】
 注射剤:20〜60mg/日、持続皮下
,緩和ケアマニュアル(ターミナルケアマニュアル第4版)(2001),,,131

*5
【7.35.1】:7
 死前喘鳴の薬物療法
 ラシックス20〜40mg静注。アトロピン1〜2mg筋注。またはスコポラミン0.3〜0.6mg筋注/皮下注4時間毎。アトロピン2mg+モルヒネ2.5mg+デキサメタゾン2mgのネブライザーによる吸入。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,289

#1
【7.35.1】:8
 死前喘鳴の治療対応の主目標は、患者が楽になることで、患者に痰が出やすい半臥位をとらせる。中咽頭の痰の吸引は患者にとり不快なことなので、意識のない患者の場合にのみを行うのが一般的である。抗コリン作動薬は痰の分泌抑制作用があるので、早めに投与し始めると有用である。
,終末期の諸症状からの解放(2000),,,63

*5
【7.35.1】:9
 死前喘鳴が生じ分泌物が多量である場合、吸引をやさしく使用するが、患者の苦痛を妨げるためにわずかにすべきである。
,緩和ケアハンドブック(1999),,,289

 
【7.35.1】:10
 喘鳴に対し吸引による痰の除去は出来ないことが多く、患者に苦痛を与えることになるため最小限にする。
,がんの症状マネジメント(1997),,,235

   
 

 

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