| 【7.36】「緩和医療とコミュニケーション」 | |
| #1 【7.36】:1 看護師は痛みと痛みによって被っている不利益について患者がありのまま表現できるような環境を整えるという大切な役割がある。このことに気付き、患者の痛みをあるがままに受け入れようと行動している看護師は、残念ながら今でもそれほど多くない。看護師だけではなく、医療チームのメンバーの多くは、痛みという症状を客観的に把握でき、測定できるかのような行動を無意識のうちにとっている。そのため患者の痛みをあるがままに受け入れる配慮に欠け、患者の本当の痛みを知るに至らないことが多い。 たとえば、患者が痛みを訴えたときに痛みを訴えない他の患者と比較され、看護師から大げさな患者あるいはわがままな患者であると受け取られることを恐れ、患者が体験している痛みを正直に伝えないことがある。また、多忙なゆえに看護師は往々にして訴えの少ない患者を好む傾向にある。このことに患者が気づくと、患者は医師や看護師に「良い患者」と思われたいがために痛みを過小に表現していることも日常みられることである。 ,オピオイドのすべて(1999),,,150 【7.36】:2 疼痛のコントロールは重要であるが単独では成功せず、患者に対する心理的援助としてのコミュニケーションが必須である。 末期の疼痛を持つ患者とのコミニュケーションの実際。 (1)定期的な訪問をする。患者は主治医を待っている。「先生がきてくれない」と訴える患者は多い (2)座って話す。末期の症状について立ったまま話す事は困難である。座ることによってその患者のために十分な時間がとってあることを示す。 (3)患者の話を傾聴する。疲れきっている患者にとっては、一言一言が重要な発言である。言葉だけでなく、体全体から出るサインにも気を配る。 a,患者から発言があるときは、患者の話の流れに従って会話を進め、その流れを変えたり、中断すべきでない。それは、患者自身が拒否されたと感じるからである。 b,患者から発言がないときは、患者が抱いている最も重大な問題点を中心に話を切り出す。しかし、触れてはならない箇所に触れないように注意する。 c,一般的には次の質問をしながら会話を進める。 1.睡眠、2.気分、3.疼痛、4.食事、5.排便、排尿、など (4)説明をする。疼痛やその他の症状がなぜ起こっているかを患者に理解しやすい言葉で説明する必要がある。あるときには生理学的、病理学的説明も効果があるものである。理由のわからない疼痛や不快な症状は現実以上に激しく感じるものである。しかし、説明をする際に希望を失わせるような言葉は避けなければならない。希望はいつでも患者のエネルギーの源だからである。 だからといって偽りを言うべきではない。偽りを避け真実を伝える必要がある。患者と医療者との関係は信頼の上に成り立っている。この信頼関係は誠実さによって強められ、偽りによって破壊される。そして患者は心理的負担を和らげる必要があるので、真実を受け入れるのに長い時間を要する。知りたくない患者は質問しない。患者が致命的と考えたくないといったり、態度で示しているときには真実を告げるのを患者の心理状態が整うまで先に延ばすべきである。目標は真実を告げることではなく、苦痛を少なくすることであるから、苦痛を増すようなら真実を告げない方がよいのである。 (5)診察。できるだけ身体に触れて全身を診察する必要がある。そのことにより、主治医は私をすべて理解してくれている、と患者は安心し主治医に対する信頼を増す。 (6)スキンシップ。分かれの際の握手は患者がたいへん喜び患者と医療者との感情が通い合う良い機会となる。 ,がんの「いたみ」克服の知恵(1998),,29 *5 【7.36】:3 不確実な情報によって、患者の苦悩は増し、事態に対処できるという意識が損なわれる。なにが起こっているかを患者に教えることで、患者は事態を違った考え方で捉えることができ、無力感を感じることが少なくなる。薬剤に関する教育を受けた患者は、受けていない患者に比べて薬剤の服用に関してコンプライアンスがよく、麻薬性鎮痛薬の使用についての不安が少なく、痛みのレベルが低いという研究がある。起こる可能性のある副作用について患者に教えても、副作用の発生は増加しないし、それ以外の悪影響も起こらないという研究もある。 ,癌性疼痛治療のガイドライン(米公式)(1998),,,77 #1 【7.36】:4 予後の予想 予後は現代の医学で確実に知る手立てはない。経験と推測でしかない。後1年と伝えたとしよう。実際には2ヵ月で亡くなった時、患者はやるべきことを先送りしていたかもしれない。何か決定しようとする時の判断を誤らせてしまう恐れがある。だから、予後は何カ月という表現は避けるべきで、幅を持たせた月単位の病状変化(多くは1ヵ月から1年の予後)、短めの月単位(1ヵ月から2、3ヵ月)、週単位(1週間から1ヵ月)、日単位(数日から1週間前後)という表現を用いることを勧める。 ,死をみとる1週間(2002),,,40 【7.36】:5 医療者は末期癌患者に「がんばりましょうね」などの安易な励ましをしがちであるが、患者は弱音や訴えを聴いてほしいという気持ちがあるものである。「がんばりましょうね」と言われた患者は「はい、がんばります」としか言えない。会話がここで途切れてしまう。この言葉は医療者の自己満足でしかない。さらに言えば一番がんばっている患者にさらにこれ以上がんばるように強制していることにもなる。 このようなときは患者の言葉を自分の言葉に変え、それを返してあげることすると良い。いわゆる理解的な態度で接するべきである。実際には「今あなたの言われたことはこういうことだと思いますが、これでいいでしょうか?」と問い返せば良い。 以下に具体的な例を示す。医=医療者 患=患者 医「いかがですか?」 患「私はもう駄目なんじゃないでしょうか?」 医「なんか、こう、ひょっとしたら治らないんじゃないかな、そんな気がするんですね?」 患「そうなんです。段々この頃弱るような気がします」 医「そうですか、次第次第に衰弱していく、そんな感じですね」 患「そうなんです。もう入院して半年でしょう」 医「早いものですね。もう6ヶ月になりますね」 このような会話を続けていくと、何処へ連れて行かれるかわからないと言う不安がこちらに起こってくる。医療者はここで安易な励ましをして会話を中止してしまいたいという気持ちになる。 しかし、患者はある程度弱音を吐けば、もうこれでいいという気持ちに大体なってくるものである。自然に自ら会話を納めることの出来る力を持っているので医療者は不安を乗り越え理解的な態度を取り続けることをして行かなければならない。 ,ターミナルケアとコミュニケーション(1992),,35 【7.36】:6 コントロールの難しい癌性疼痛を持つ患者に「もうこれ以上することがない」「できることはすべてやった」などとは決して言ってはいけない。他の方法がきっとある。出来ることをすべてするつもりであることを伝えると患者は安心する。また多くの症状を一度に消失させようと試みないで、その時点での問題点を少しずつ解決して行くように計画する。 ,末期癌患者の診療マニュアル第2版(1991),,4 |
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