情報リテラシー講義
    1年次に開講される情報リテラシーI(前期必修科目)と情報リテラシーII(後期選択科目)に関するシラバスと授業マテリアルを公開する。遠隔教育の試験的な試みとして展開中。
    前期必修科目、情報リテラシーI
    後期選択科目、情報リテラシーII
     
化学構造のモデリング学習と3次元医薬品構造データベースの活用
   添付文書の「有効成分に関する理化学的知見」の項に見る医薬品の構造は平面構造式である。この構造式はナノスケールの分子の世界を可視化する絵文字であり、しばしばこの絵文字から三次元構造を読み解くことが必要になる。
     
平面構造の生い立ち
   平面構造はもともと有機化合物の反応性を表現するために生まれたもので、3次元構造が紙の上に書けないために止むを得ず、2次元的に表したものではない。炭素の正四面体構造が1874年にファント・ホフとル・ベルによって提唱される前に既に構造式があったことからもそれは明らかである。ここに示すギ酸の構造は1866年にクラム・ブラウンによって書かれ、既に我々の良く見知った構造表現になっている。人間が作り出した数々の絵文字の中でも、平面構造式の表現は第一級の出来である。
     
ダイアグラムによる不可視の可視化
   譜面は音楽という目に見えないものを絵文字として表したものである。その概念が読み解ければ、音楽が聞こえてくる。正に譜面は不可視の音を可視化するものと言える。構造式もまたナノスケールの分子の世界を可視化したものであり、目には見えない概念を含めて絵にしたものである。こうした絵文字のことをダイアグラムと呼ぶ。
     
構造式は不可視を可視化する
   ナノスケールの分子の世界を可視化するダイアグラムの見方とは何であろうか。それは平面構造式から各種の有機化学的な概念を用いて3次元構造を作り出すこと、その空間的な広がりや電荷の偏りを思い描くこと、また分子の運動性を理解すること、つまり結合が伸びたり縮んだり、結合の織り成す角度が開いたり閉じたりするさまを思い描くことである。

 こうした医薬品の三次元構造を平面構造式から正確にイメージすることは難しい。3DPSDはこうした最安定構造や分子の運動構造を計算化学によって求め、全ての構造情報をコンピュータグラフィクスを駆使してインターネットへ公開したものである。コンピュータとインターネットの世界に広がるマルチメディア表現を分子の世界へ展開し、多用な分子の姿を見せるものと言ってもよい。

 既存の医薬品は新薬を開発するための基本的なリード化合物であり、こうした構造データは医薬品開発にとって必須である。また、医薬品の3次元構造を知ることは医薬品の薬理作用の本質である受容体と医薬品の結合を理解することに繋がる。この意味で本データベースは薬学において医薬品構造の見方を教えるための教育的な資源でもある。

 化学構造式はダイアグラムであり、包含する化学的な概念の読み方を理解することは化学教育の基礎である。本学における1年次の情報教育科目である「情報リテラシーI」では化学教育の基礎学習として、平面化学構造の描画と、3次元構造のモデリングを指導した。さらに医薬品の3次元の最適化構造や、分子運動アニメーション、静電ポテンシャルマップなどをデータベースとしてインターネットに公開し、これを用いて分子構造のマルチメディア表現を学習させた。

 

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